アメリカ大統領選挙に関しては、いろいろな人がいろいろ言っている。トランプ勝利の理由はひとまず置いて、トランプ大統領はどういう大統領になるだろうかということを考えてみたい。
NHK会長の籾井勝人氏は、9日に(まだ選挙結果の確定前だったが)以下のような発言をしている。「レーガン元大統領が誕生したときに『役者じゃないか』と言った人がたくさんいたが、振り返ってみると、立派な大統領の一人になった。私の個人的な意見だが、彼(トランプ氏)は(大統領になった場合)変わると思う。」 「お前が言うか」という感じだな。
勝利宣言が案外常識的で、「私は全てのアメリカ人の大統領になります」「今こそ私たちは、一致団結した国民の姿を見せるべきです」「私を支持しなかった方にも、私は手を差し伸べます」と発言したことで、やっぱり「勝てば変わる」のだろうか。そうかもしれないが、僕にはそれは信じられない。共和党候補に正式に選出されたときも、しばらくは「ちょっと暴言を控えた」という感じだった。でも、テレビ討論会などでは、激しいやり取りのあげく「いやな女(Nasty Woman)」と言い放った。
政策的には予備選時のような「無謀」な発言はしていないが、それでも「うまくいかない」「攻撃される」と、つい暴言で言い返さないと済まないといった「本性」は変わっていないように思う。レーガンは「右派」であり「役者出身」だったが、カリフォルニア州知事を2期8年(1967~1975)勤めた実績が評価され大統領候補と言われるようになった。実際は「職業政治家」を十分経験してから大統領になったのである。(ジョージア州知事を1期務めただけのジミー・カーターよりずっと政治経験があった。)
アメリカ大統領という地位は、そう簡単に務まるものではないだろう。プーチンや習近平といった経験豊富、「海千山千」の政治家と国際舞台でうまく立ち向かえるのか。「スター気取り」のトランプは、おだてられて乗せられて操られるという可能性の方が高いと考えたほうがいい。「公職経験がない」ことを誇れるのは、選挙戦の間だけで、実際になってしまえば経験不足が不安になるはずである。
もっとも、「日本を取り戻す」(「アメリカを再び偉大な国にする」とそっくり同じ発想)という意味不明のスローガンで勝利した安倍晋三。あるいは、「暴言」「失言」だらけの石原慎太郎、橋下徹。そういった政治家たちを何度も当選させてきた日本国民がトランプ(及びトランプを選出したアメリカ国民)を批判できるのかとも思う。しかし、だからこそ、われわれだからこそ、今後のことが予想できるとも言える。
一つは「お友だち政権」になる可能性。ズタズタになった共和党を一つにまとめるような人事をできるだろうか。むしろ、ここぞとばかり近づいてくる野心家たちに囲まれて、「おいしい話」にしか耳を傾けなくなる可能性もある。そして、うまくいかない(トランプの政策がうまく行くはずがない)責任を、他国にばかり責任転嫁はできないから、内紛が相次ぐ可能性である。
もう一つは「暴言」のレベルが上がってしまうことである。石原や橋下などは、「ホンネを言う」「率直に言う」を売り物にして、「暴言」を繰り返すことにより、「あの人はああいう人」と見なされて放置されるようになる。トランプは「あの人は面白いことを言う」をウリにせざるを得ない。それを面白がる人が集まる。常に「きわどい発言」をし続けざるを得ない。
最後に「オバマ政権の遺産」がすべてひっくり返されるだろうということである。民主党政権時の政策が、安倍政権によってほとんど無にされたように。上下両院を握る共和党が、トランプの反民主党政策を認めないはずがない。オバマケア、キューバ政策、同性婚…すべてはひっくり返らないだろうが、これで最高裁は保守派優勢になることは避けられず、アメリカの人権状況は数十年停滞することが避けられない。(米国の連邦最高裁判事は終身である。保守、リベラルは今4対4で、一人欠員がある。)
外交政策はどうなるか、皆目見当がつかないが、「オバマの逆をやりたい」衝動にかられると、パリ協定離脱、ロシア制裁の取りやめなども考えられる。中東政策は「国益」から、よくもわるくも変更が難しいと思われるが、アジア政策は優先度が下がるだろうと思っておかないといけない。ともかく、内向きになるアメリカは、経済、外交ともに先行きが読めない。誰かそれなりの専門家に任せるというやり方もあるけど、それでは今までと同じと不満が高まる。僕にはどうなるということは判らない。
とにかく、今回は「クリントンもトランプも嫌い」と公然と言われる異様な大統領選だった。それでも、勝敗は決まった。当初は新鮮さ、期待感、注目度が高い。その「ハネムーン期間」はそんなに長くないだろう。その最初の数か月に「アッと驚く政策」をいくつか打ち出してくると思われる。TPP離脱、パリ協定離脱などでは当たり前すぎる。もっととんでもないことを言い出すと想定しておいた方がいい。
NHK会長の籾井勝人氏は、9日に(まだ選挙結果の確定前だったが)以下のような発言をしている。「レーガン元大統領が誕生したときに『役者じゃないか』と言った人がたくさんいたが、振り返ってみると、立派な大統領の一人になった。私の個人的な意見だが、彼(トランプ氏)は(大統領になった場合)変わると思う。」 「お前が言うか」という感じだな。
勝利宣言が案外常識的で、「私は全てのアメリカ人の大統領になります」「今こそ私たちは、一致団結した国民の姿を見せるべきです」「私を支持しなかった方にも、私は手を差し伸べます」と発言したことで、やっぱり「勝てば変わる」のだろうか。そうかもしれないが、僕にはそれは信じられない。共和党候補に正式に選出されたときも、しばらくは「ちょっと暴言を控えた」という感じだった。でも、テレビ討論会などでは、激しいやり取りのあげく「いやな女(Nasty Woman)」と言い放った。
政策的には予備選時のような「無謀」な発言はしていないが、それでも「うまくいかない」「攻撃される」と、つい暴言で言い返さないと済まないといった「本性」は変わっていないように思う。レーガンは「右派」であり「役者出身」だったが、カリフォルニア州知事を2期8年(1967~1975)勤めた実績が評価され大統領候補と言われるようになった。実際は「職業政治家」を十分経験してから大統領になったのである。(ジョージア州知事を1期務めただけのジミー・カーターよりずっと政治経験があった。)
アメリカ大統領という地位は、そう簡単に務まるものではないだろう。プーチンや習近平といった経験豊富、「海千山千」の政治家と国際舞台でうまく立ち向かえるのか。「スター気取り」のトランプは、おだてられて乗せられて操られるという可能性の方が高いと考えたほうがいい。「公職経験がない」ことを誇れるのは、選挙戦の間だけで、実際になってしまえば経験不足が不安になるはずである。
もっとも、「日本を取り戻す」(「アメリカを再び偉大な国にする」とそっくり同じ発想)という意味不明のスローガンで勝利した安倍晋三。あるいは、「暴言」「失言」だらけの石原慎太郎、橋下徹。そういった政治家たちを何度も当選させてきた日本国民がトランプ(及びトランプを選出したアメリカ国民)を批判できるのかとも思う。しかし、だからこそ、われわれだからこそ、今後のことが予想できるとも言える。
一つは「お友だち政権」になる可能性。ズタズタになった共和党を一つにまとめるような人事をできるだろうか。むしろ、ここぞとばかり近づいてくる野心家たちに囲まれて、「おいしい話」にしか耳を傾けなくなる可能性もある。そして、うまくいかない(トランプの政策がうまく行くはずがない)責任を、他国にばかり責任転嫁はできないから、内紛が相次ぐ可能性である。
もう一つは「暴言」のレベルが上がってしまうことである。石原や橋下などは、「ホンネを言う」「率直に言う」を売り物にして、「暴言」を繰り返すことにより、「あの人はああいう人」と見なされて放置されるようになる。トランプは「あの人は面白いことを言う」をウリにせざるを得ない。それを面白がる人が集まる。常に「きわどい発言」をし続けざるを得ない。
最後に「オバマ政権の遺産」がすべてひっくり返されるだろうということである。民主党政権時の政策が、安倍政権によってほとんど無にされたように。上下両院を握る共和党が、トランプの反民主党政策を認めないはずがない。オバマケア、キューバ政策、同性婚…すべてはひっくり返らないだろうが、これで最高裁は保守派優勢になることは避けられず、アメリカの人権状況は数十年停滞することが避けられない。(米国の連邦最高裁判事は終身である。保守、リベラルは今4対4で、一人欠員がある。)
外交政策はどうなるか、皆目見当がつかないが、「オバマの逆をやりたい」衝動にかられると、パリ協定離脱、ロシア制裁の取りやめなども考えられる。中東政策は「国益」から、よくもわるくも変更が難しいと思われるが、アジア政策は優先度が下がるだろうと思っておかないといけない。ともかく、内向きになるアメリカは、経済、外交ともに先行きが読めない。誰かそれなりの専門家に任せるというやり方もあるけど、それでは今までと同じと不満が高まる。僕にはどうなるということは判らない。
とにかく、今回は「クリントンもトランプも嫌い」と公然と言われる異様な大統領選だった。それでも、勝敗は決まった。当初は新鮮さ、期待感、注目度が高い。その「ハネムーン期間」はそんなに長くないだろう。その最初の数か月に「アッと驚く政策」をいくつか打ち出してくると思われる。TPP離脱、パリ協定離脱などでは当たり前すぎる。もっととんでもないことを言い出すと想定しておいた方がいい。