6年目の「3・11」。その前日は72年目の「東京大空襲」。3月になって、少し陽射しも暖かくなってきて、空も濁りが増してくる。それは「黄砂」なのか「花粉」なのか、冬には見えていた富士山が東京からほとんど見えなくなる。そういう季節に、津波や原発事故や空襲の記事が多くなる。
今年は特に「森友学園問題」や「築地市場の豊洲移転問題」など、筋道の立たない、3月の空のような問題が大きな話題となっている。気分的な濁りは例年以上に深い。そっちの問題も書きたいんだけど、ちょっと違った方向から、最近読んだ本について紹介しておきたい。
それは講談社BLUE BACKSから出た「日本列島100万年史」(山崎晴雄、久保純子著)である。千円するけど、是非買い求めておきたい本。最近の新書本はけっこう難しく、自分の専門の歴史系なら付いていけても、理系の本だと理解が難しいことが多い。最近は小説を読んでることが多いんだけど、評判だというし、やっぱりちゃんと読んでおこうかと思った。
かなり判りやすいけど、それでも説明しようとすると僕には難しい。だから、あまり詳しく書かないけど、「大地に刻まれた壮大な物語」に触れた知的な高揚感がある。日本で生きている以上、天候や地震に無知ではいられない。日本の大地の歴史を通して、地学的理解を深めることはとても大切だ。この本は最新の知見がいっぱい入っているし、写真や図表が多くて面白い。
第1章「日本列島はどのようにして形作られたか」で全体の総論が語られ、以下の2章から8章で日本各地の具体的な説明になる。日本各地の隅々まですべて出てくるわけではないけど、おおよそのことは判る。関東平野はなぜ広いか、富士山はどうして美しいか。もうそういうもんだと思って、あまり意識しないけど、なるほどそういうことだったのか。
富士山は「フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に、太平洋プレートが沈み込むことで作られた火山フロントが交差する、世界的に稀な場所に富士山はあります。」世界のどこにもないそういう地質的な特徴が背景にあるのだ。じゃあ、それは何故かということは本書で。そもそも「火山はどこにできるのか」という問題がある。それは「温泉はどこにあるか」ということでもある。火山は「プレートが沈み込んで深さ100キロメートルに達した地点の真上にできる」のである。
それは何故というのも本書で。僕には非常に意外な理由だった。これを読んで思ったのは、やはり西日本のことはあまり知らないなあということである。「近畿三角帯」なんて言葉も初めて聞いた。次に心配される南海トラフの地震のことも、この本で判ったことが多い。近畿は歴史時代の大部分で、日本の首都がおかれた地方である。(だから「近畿」という。「畿」は王城の地という意味。)
ところで、太平洋と日本海が一番近接している場所はどこだろうか。つまり、青森や山口は別にして、その他の地域で一番細くなってる場所。あまり意識したことがなかったけど、「若狭湾と伊勢湾を結ぶ線」である。福井県敦賀と名古屋を結ぶあたり。地図を見て、そうなんだとビックリ。伊勢湾がかなり北まで食い込んでいるのである。これは愛知県から戦国時代を統一した三英傑が現れた理由につながるのかもしれない。そんなことまで思ってしまう地形の面白さである。
九州のシラス台地のことも、以前から授業でもずいぶん触れたけど、そういうことかと納得できた。関東も火山性の台地が広がっているけど、その「武蔵野台地と東京低地」は自分が住んでいるところだから、なるほどと納得。いちいち挙げていると終わらないから最後に一つ。日本列島はフォッサマグナで折れ曲がっているわけだけど、その結果「弓型」になっている。ところで千島列島やアリューシャン列島も弓型の円弧になっている。奄美から沖縄についても少しそんな感じ。なんで曲がるのかという問題である。こういう普段は意識もしないことを教えてくれる本である。
大地の奥深くで何が起きているのか。地震とともに生きていくしかない日本人にとって、プレートテクトニクスなどの正確な理解は必須である。それに各地の地形の特質も知っておくと役立つ。僕なんか読んでもすぐ忘れてしまうんだけど、こういう本を近くにおいておけば役立つだろう。あまり理系の本を読まない人もチャレンジする価値がある。
今年は特に「森友学園問題」や「築地市場の豊洲移転問題」など、筋道の立たない、3月の空のような問題が大きな話題となっている。気分的な濁りは例年以上に深い。そっちの問題も書きたいんだけど、ちょっと違った方向から、最近読んだ本について紹介しておきたい。
それは講談社BLUE BACKSから出た「日本列島100万年史」(山崎晴雄、久保純子著)である。千円するけど、是非買い求めておきたい本。最近の新書本はけっこう難しく、自分の専門の歴史系なら付いていけても、理系の本だと理解が難しいことが多い。最近は小説を読んでることが多いんだけど、評判だというし、やっぱりちゃんと読んでおこうかと思った。
かなり判りやすいけど、それでも説明しようとすると僕には難しい。だから、あまり詳しく書かないけど、「大地に刻まれた壮大な物語」に触れた知的な高揚感がある。日本で生きている以上、天候や地震に無知ではいられない。日本の大地の歴史を通して、地学的理解を深めることはとても大切だ。この本は最新の知見がいっぱい入っているし、写真や図表が多くて面白い。
第1章「日本列島はどのようにして形作られたか」で全体の総論が語られ、以下の2章から8章で日本各地の具体的な説明になる。日本各地の隅々まですべて出てくるわけではないけど、おおよそのことは判る。関東平野はなぜ広いか、富士山はどうして美しいか。もうそういうもんだと思って、あまり意識しないけど、なるほどそういうことだったのか。
富士山は「フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に、太平洋プレートが沈み込むことで作られた火山フロントが交差する、世界的に稀な場所に富士山はあります。」世界のどこにもないそういう地質的な特徴が背景にあるのだ。じゃあ、それは何故かということは本書で。そもそも「火山はどこにできるのか」という問題がある。それは「温泉はどこにあるか」ということでもある。火山は「プレートが沈み込んで深さ100キロメートルに達した地点の真上にできる」のである。
それは何故というのも本書で。僕には非常に意外な理由だった。これを読んで思ったのは、やはり西日本のことはあまり知らないなあということである。「近畿三角帯」なんて言葉も初めて聞いた。次に心配される南海トラフの地震のことも、この本で判ったことが多い。近畿は歴史時代の大部分で、日本の首都がおかれた地方である。(だから「近畿」という。「畿」は王城の地という意味。)
ところで、太平洋と日本海が一番近接している場所はどこだろうか。つまり、青森や山口は別にして、その他の地域で一番細くなってる場所。あまり意識したことがなかったけど、「若狭湾と伊勢湾を結ぶ線」である。福井県敦賀と名古屋を結ぶあたり。地図を見て、そうなんだとビックリ。伊勢湾がかなり北まで食い込んでいるのである。これは愛知県から戦国時代を統一した三英傑が現れた理由につながるのかもしれない。そんなことまで思ってしまう地形の面白さである。
九州のシラス台地のことも、以前から授業でもずいぶん触れたけど、そういうことかと納得できた。関東も火山性の台地が広がっているけど、その「武蔵野台地と東京低地」は自分が住んでいるところだから、なるほどと納得。いちいち挙げていると終わらないから最後に一つ。日本列島はフォッサマグナで折れ曲がっているわけだけど、その結果「弓型」になっている。ところで千島列島やアリューシャン列島も弓型の円弧になっている。奄美から沖縄についても少しそんな感じ。なんで曲がるのかという問題である。こういう普段は意識もしないことを教えてくれる本である。
大地の奥深くで何が起きているのか。地震とともに生きていくしかない日本人にとって、プレートテクトニクスなどの正確な理解は必須である。それに各地の地形の特質も知っておくと役立つ。僕なんか読んでもすぐ忘れてしまうんだけど、こういう本を近くにおいておけば役立つだろう。あまり理系の本を読まない人もチャレンジする価値がある。