Netflix製作でアカデミー賞作品賞候補になったノア・バームバック監督「マリッジ・ストーリー」(Marriage Story)を見た。「アイリッシュマン」と同じく大々的な公開はされないが、一部映画館で上映されている。最近の映画は設定が日常とかけ離れた映画が多いが、この映画は現代のアメリカの日常を描いている。題名を「結婚物語」というけれど、実際は「離婚物語」である。何でも監督自身の体験が基になっているという話。夫のアダム・ドライヴァーと妻のスカーレット・ヨハンソンが壮絶な演技合戦を繰り広げて見逃せない。それにしてもアメリカの離婚裁判は苛酷である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/3c/84/8ee697ba8c0cedf27cd2a2795ed6379b_s.jpg)
ノア・バークバック(Noah Baumbach、1969~)は「イカとクジラ」、「フランシス・ハ」や「ヤング・アダルト・ニューヨーク」などの監督だが、今まではコメディ的な映画が多かった。「ヘイトフル・エイト」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたジェニファー・ジェイソン・リーと結婚していたが2013年に離婚。「フランシス・ハ」の主演女優だったグレタ・ガーウィグと交際して子どももいるという。(ガーウィグは今や「レディバード」や「ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語」で大注目監督になっている。)
(幸せな時期もあった)
ほぼチャーリーとニコールのふたり出ずっぱりで、子どものヘンリーと家族を別にすれば離婚弁護士ぐらしか出て来ない。しかし、ニコール側の弁護士役のローラ・ダーンは鮮烈な印象を与えてアカデミー賞助演女優賞を獲得した。主演の二人も共にアカデミー賞主演賞にノミネートされていたが、残念ながら受賞できなかった。アダム・ドライヴァーは前年の「ブラック・クランズマン」で助演賞にノミネートされているが、スカーレット・ヨハンソンは意外なことに初のノミネートだった。(「ロスト・イン・トラストレーション」や「真珠の首飾りの女」でゴールデングローブ賞にノミネートされたけど。今年は「ジョジョ・ラビット」で助演賞にもノミネートされていた。)
(左=ローラ・ダーン)
夫のチャーリーはニューヨークの前衛劇団の演出家で、専門家筋の評価は高い。妻のニコールはちょっと知られた映画女優だったが、ロスで夫と知り合い結婚。夫の劇で主演してきたが、ニューヨークでは知名度が低下してしまった。夫はブロードウェイを目指しているが、妻は実家のあるロスが恋しい。テレビドラマのオファーを受けて、子どもを連れてロスへ戻った。二人の間にはしばらく前から離婚話が出ている。それが冒頭の状況で、二人は穏やかに別れることを望んでいる。そんな二人が穏やかに別れられずに、弁護士を立てて争うようになる。カリフォルニアでは弁護士なしでは不利になってしまうのだ。前半の展開は「裁判依存症」的なアメリカ社会への批判色が強い。
しかし、段々と二人のすれ違いの様々が見えてくる。ロスに愛着のあるニコール。ロスの学校に慣れてゆくヘンリー。一方、ニューヨークにある劇団の責任者であるチャーリー。彼は「天才奨学金」を受けることにもなる。(すごい名前だけど。)弁護士はそれもニコールの貢献あってのことで分割を主張できるという。ロスの法廷では妻側の弁護士料も一部夫側が負担させられる場合があるらしい。すさまじい争いになってゆき、こんなことをしていてもしょうがないとニコールはチャーリーを訪ねる。ところがそこで二人のすれ違いが爆発して、壮絶な言い争いになってしまう。このシーンの演技合戦はすさまじい。
ニューヨークとロサンゼルスは遠い。ロスに戻った妻子に会いに、チャーリーはたびたびニューヨークから飛んでくる。東海岸と西海岸の遠さ、風土の違いなどの大きな見どころだが、結局離婚することになる。ラストでニューヨークのバーで劇団員の前で歌うチャーリー。苦さを込めて描く「離婚物語」だが、どうして二人はすれ違っていったのだろう。それは二人が才能があったからだ。ニコールも夫の書く芝居で演技するだけでは物足りない。才能豊かな二人だからこその問題ではあった。どの家庭でも起こりうる側面も持ちつつ、特殊なケースでもあったなあと思う。とにかく素晴らしい、というかすさまじい演技に目を奪われる作品だ。
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ノア・バークバック(Noah Baumbach、1969~)は「イカとクジラ」、「フランシス・ハ」や「ヤング・アダルト・ニューヨーク」などの監督だが、今まではコメディ的な映画が多かった。「ヘイトフル・エイト」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたジェニファー・ジェイソン・リーと結婚していたが2013年に離婚。「フランシス・ハ」の主演女優だったグレタ・ガーウィグと交際して子どももいるという。(ガーウィグは今や「レディバード」や「ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語」で大注目監督になっている。)
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ほぼチャーリーとニコールのふたり出ずっぱりで、子どものヘンリーと家族を別にすれば離婚弁護士ぐらしか出て来ない。しかし、ニコール側の弁護士役のローラ・ダーンは鮮烈な印象を与えてアカデミー賞助演女優賞を獲得した。主演の二人も共にアカデミー賞主演賞にノミネートされていたが、残念ながら受賞できなかった。アダム・ドライヴァーは前年の「ブラック・クランズマン」で助演賞にノミネートされているが、スカーレット・ヨハンソンは意外なことに初のノミネートだった。(「ロスト・イン・トラストレーション」や「真珠の首飾りの女」でゴールデングローブ賞にノミネートされたけど。今年は「ジョジョ・ラビット」で助演賞にもノミネートされていた。)
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夫のチャーリーはニューヨークの前衛劇団の演出家で、専門家筋の評価は高い。妻のニコールはちょっと知られた映画女優だったが、ロスで夫と知り合い結婚。夫の劇で主演してきたが、ニューヨークでは知名度が低下してしまった。夫はブロードウェイを目指しているが、妻は実家のあるロスが恋しい。テレビドラマのオファーを受けて、子どもを連れてロスへ戻った。二人の間にはしばらく前から離婚話が出ている。それが冒頭の状況で、二人は穏やかに別れることを望んでいる。そんな二人が穏やかに別れられずに、弁護士を立てて争うようになる。カリフォルニアでは弁護士なしでは不利になってしまうのだ。前半の展開は「裁判依存症」的なアメリカ社会への批判色が強い。
しかし、段々と二人のすれ違いの様々が見えてくる。ロスに愛着のあるニコール。ロスの学校に慣れてゆくヘンリー。一方、ニューヨークにある劇団の責任者であるチャーリー。彼は「天才奨学金」を受けることにもなる。(すごい名前だけど。)弁護士はそれもニコールの貢献あってのことで分割を主張できるという。ロスの法廷では妻側の弁護士料も一部夫側が負担させられる場合があるらしい。すさまじい争いになってゆき、こんなことをしていてもしょうがないとニコールはチャーリーを訪ねる。ところがそこで二人のすれ違いが爆発して、壮絶な言い争いになってしまう。このシーンの演技合戦はすさまじい。
ニューヨークとロサンゼルスは遠い。ロスに戻った妻子に会いに、チャーリーはたびたびニューヨークから飛んでくる。東海岸と西海岸の遠さ、風土の違いなどの大きな見どころだが、結局離婚することになる。ラストでニューヨークのバーで劇団員の前で歌うチャーリー。苦さを込めて描く「離婚物語」だが、どうして二人はすれ違っていったのだろう。それは二人が才能があったからだ。ニコールも夫の書く芝居で演技するだけでは物足りない。才能豊かな二人だからこその問題ではあった。どの家庭でも起こりうる側面も持ちつつ、特殊なケースでもあったなあと思う。とにかく素晴らしい、というかすさまじい演技に目を奪われる作品だ。