仕事人間で家庭を省みなかった主人公が、若年性アルツハイマー病に冒され、徐々に記憶をなくしていく過程で、引き換えに、それまでの自分の人生を振り返り、妻との愛を深めていくという物語です。
アルツハイマー病だけでなく痴呆症も含めて、おなじような症状が出る病気が、いつ、わが身におきてもおかしくない・・・そう考えるのか、中年・熟年夫婦の観客で満席に近い映画館でした。
もちろん私も主人と二人で観ました(苦笑)。
以下、ネタバレあり・・・
広告代理店のエリート部長・佐伯雅行(渡辺謙)は50歳を目前にして、大きな仕事を成功させ張り切っていました。
が・・・時々、彼の行動にはおかしなことが・・・スポンサーとの大事な打合せを忘れるという失態や、妻との外出の際、高速道路の出口を見落としたり、部下の名前を忘れたりという異常なことが、次々と目立つようになりました。
心配した妻・枝実子(樋口加南子)のすすめで、病院へ。診断は「若年性アルツハイマー病」だった。
この病気を受け入れなけらばならなくなった現実にパニック状態になる彼。
「俺が俺でなくなっても平気なのか」と問う夫に「私がず~~とそばにいます」と励ます妻。
深い愛で夫tを包む妻の様子の、この場面は「涙」が出ました。
今はまだ、アルツハイマー病を治す薬も手段もないけれど、進行速度を遅くすることは出来る。佐伯は日記をつけたり、メモを持ち歩いたりと努力をしながら、病気のことを隠して仕事を続けるのですが・・・
上司に病気のことをしられ退職勧告をうける彼ですが、「一人娘の結婚式までは、勤めていたい」と、閑職に追いやられながらも頑張るのでした。
結婚式での挨拶も無事にすませ、ほっとして退職を決め、病気との戦いをスタートさせるのですが、退職の日、かつての部下達が「待っています。必ず戻って来てください」と励ます光景で、涙・・・。
彼に代わり、生活のために働きに出た妻が残していくメモ書きを見ながら時間を過ごすのですが、徐々に物忘れがひどくなる恐怖から、妻の行動を責めたりもします。
ある日・・・
妻が友人からもらった「施設のパンフレット」を見つけた彼は、その施設を見学するために外出するのですが、その帰りに道に迷い、森で一晩をすごすのでした。
そこは、かって若き頃、彼と妻が出会った「焼き物工房」の場所だった・・・
翌朝、心配して探しに来た妻と道ですれ違った彼ですが・・・「妻の顔」も忘れていました・・・。
この映画を観て・・・
少しづつ、少しづつ、大切な記憶が失われいく病気。そんな日々の中で、自分を失うことの恐さ、家族の愛、周囲の理解・・・いろいろなことを考えされられました。
もし、私たち夫婦のどちらかが、アルツハイマーや痴呆症になり、こんな風にお互いのことを忘れてしまったら・・・。
本人の闘病生活も大変ですが、長い期間の看病をする家族の大変さも、想像してしまいました・・・。
家で、いつも温かく見守るなんて、できるだろうか・・・
きっと施設にお世話になることになるんだろうなぁ・・・
この映画の主人公・佐伯も、美しい自然の残る施設で、静かな時間を過ごすことになったのです。
久し振りに観た邦画でした。