prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ユナイテッド93」

2006年08月23日 | 映画
この映画に神はいない。無残な出来事が描かれることを指しているだけでなく、全体像を俯瞰して眺める視点を完全に排除しているということだ。

各地の管制室のどこでも何が起きているのかなかなか把握できず、また互いの連携もとれていない。
今になって事件の全体像を完全にではないにせよ知っていて見る観客の方が、ばらばらの情報をつなげて事件を組み立てて見ていくことになる。

何かこれまでまったく思いもよらなかったことが起きている、足元が崩れて先がまったく見えなくなった不安感を改めて体感させる作り。
星新一が現代について、前方が見えない自動車をバックミラーを頼りに運転しているようなもの、と喩えたことがあったが、そういう感じ。

知っている俳優はまったく出ておらず、当人が演じている役も多い。それでいて、きちっと全員がリアリズム演技を見せているのに驚く。作り芝居の感じがまったくない。

乗客たちが反撃に出るのも、生きるか死ぬかという状況に置かれた生き物としての本能のようで、ヒロイックな感触は薄い。
柔道をやっていたという乗客が先頭に立つのだが、格闘技をやっている人はこういう時自分の肉体一つが武器にるのだから強いな、とちょっと思った。



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