prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「トラ・トラ・トラ!」

2006年08月26日 | 映画
黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべてを読んだ後で見ると、いろいろと複雑な気分になる。

完成作には黒澤明が撮ったカットは一つも採用されていないが、だからといって黒澤演出で完成できたとしてどれくらい違うものになったかというと、かなり疑問。
映画の脚本のクレジットからも黒澤の名前は削られているが、元シナリオと照らし合わせてみても、基本的な構成や進行はそれほど変わらない。

ただし、真珠湾攻撃、あるいは太平洋戦争をどう捕らえるか、といった史観はきれいさっぱりとなく、もっぱら戦争スペクタクルに徹している。
その分では、本物の飛行機を飛ばしたりしている分、CGの「パールハーバー」が出た後でも一向に古くなった感じはない。
黒澤が山本五十六のドラマをいくら力を入れて撮ったとして、編集でスペクタクルばかりを並べられたら、それまでだったし、編集権は完全にアメリカ側にあった。
だから、ここに黒澤の影を見ようとしても意味がない。

「黒澤明vs.ハリウッド」によるとアメリカ側プロデューサー(ダリル・F・ザナック エルモ・ウィリアムズ)が黒澤に敬意を持ち続けてはいたが、アメリカの会社では社長といえども株主には逆らえず、不本意ながら黒澤を解任せざるをえなくなるまでを描いているが、完成した映画よりもドラマチック。
日米ともに互いに不本意な方に、不本意な方に動かざるをえないよう追い込まれていく悲劇というのは、映画の外で成立してしまったよう。

公開当時、アメリカではコケたというが、そりゃ負け戦をわざわざ見に行く国民ではないよ。

ジェリー・ゴールドスミスの音楽が日本風の響きを残して、しかも得意のシャープなサウンドでまとめている。真珠湾攻撃シーンで基本的に音楽を使わないのも見識。


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