手嶋龍一氏のNHK在職時代のレポートなどで、グアンタナモ基地での著しい人権侵害については一応知ってはいたので、かなり覚悟して見た。
実際見ていて腹が立つことおびただしかったが、冒頭から解放されたとわかっている三人の証言と交錯させながら出来事を綴っていく構成と、芝居がからないでファクト、ファクトを積み重ねていくドキュメンタリー的手法で、見ている方の感情を安易に煽るのは避けているのは助かる。
世界はバカに支配されている、と見ていて何度か思った。
バカとはもちろんテロとの戦いをバカの一つ覚えで繰り返すブッシュだし、ちょっと囚人の身元を調べればいいものを思い込みに囚われてムダな尋問を何度も続ける尋問官だし、またベトナムであれだけ痛い目にあっていながら懲りもせず異国や異文化に対する傲慢で無神経で粗雑な正義感を振りかざす態度を変えないでイラクで泥沼に嵌まっているアメリカという国でもある。
「不都合な真実」で引用されたマーク・トウェインの、物を知らないことより知っているつもりでいる方がタチが悪い、という意味の箴言がここでもぴったり当てはまる。
グアンタナモはどこの国の国内法も、またどんな国際法も適用されない文字通りの無法地帯で、アメリカは建国以前の野蛮な力だけが正義の世界を、再現しているかのよう。ある意味、建国以来その無法を乗り越えるべく積み重ねてきた秩序を自分で裏切っている。
あれだけひどい目にあった青年たちの一人がかえって信仰に真剣になったというのが面白い。
(☆☆☆★★)