prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「河童のクゥと夏休み」

2007年08月11日 | 映画
期待が大きすぎたせいか、ちょっと物足りなかった。
たとえば、河童が入っていた石に少年が蹴つまずくのが「出会い」なのだが、そこでなぜその石を掘り出す必要があるのか、よくわからない。
河童を宅急便で出すというのには驚いたが、父親が偽の段ボール箱を持ってマスコミの目をそらすのだが、いまどきの報道陣があれくらいでごまかされるだろうか。もう一つ、家まで取りに来てもらう箱でも用意しないと足りないのではないか。

場面の積み重ねが丹念な割りに、竜が出てくるあたりで、死んだ犬がほったらかしになっていたり、ところどころ説得力が欠けているように思う。
携帯カメラを持った大衆に囲まれた河童が、前に写真週刊誌のカメラマンのカメラを壊した超能力を発揮して、まわりの携帯を全部まとめて壊すのかと思うと、なぜか急に襲ってきたカラスを破裂させる、というのも変。
いわゆる文字で書かれたシナリオを作らないでいきなりコンテを起こすやり方だと長くなりすぎるみたいで、あまりバランスよくない。

クゥという人間の呼び名以外に本当の名前がある、というのでどこかで出てくるかと思ったら尻切れトンボなのも、どんなものか。

街の中を流れている川も含めて川面の反映をCGで作っているみたいだけれど、見事な出来。
小さな河童が人間を投げ飛ばすのを説得力をもって描けているのもよく出来ている。
あと水を得た河童、の姿がなんといっても魅力的。ただ、どこに行っても完全に満足できる環境はどこにもない、というのが厳しい。

江戸時代、というと今から見るとエコに思える時代に始まって、すでにそこで河童が住める沼が壊されてきている、というあたりで宮崎駿が「もののけ姫」で示した、森を開いて一つの作物に特化してしまう農業というのはれっきとした自然破壊だ、という世界観と並べてみたくなった。悪い代官と商人の仕業、で済む問題ではない。

河童が人間に化けるようになるかも、というラストのくくり方は「平成狸合戦・ぽんぽこ」かとも思え、別にジブリを基準にする気はなくても、今のこの国の自然のぶっ壊れ方を見据えると自ずと似てくるみたい。
しかし沖縄が最後の自然が残っている場所、という描き方されると、有難迷惑みたいなところないだろうか。
(☆☆☆★)


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