中田秀夫監督はもともとマックス・オフュルスの「忘れじの面影」みたいなメロドラマが撮りたかったのだが、どういう縁か「リング」などのホラー路線に行ってしまっていたらしい。
幽霊の類はまったく信じていないというから、なんか人を食っている。
だから今回の題材は恐怖に加えて、複雑に絡み合う筋立てと情念とが混ざったものだから、メロドラマ志向からしてかなり得心がいったのではないか。
ずらっと並んだ女優名が目立つキャスト陣で、ひとり看板を張る尾上菊之助の男っぷりが見もの。
会う女たちをみんな巻き込んでしまうくらい罪作りないい男、というのでないと話そのものが成り立たないのだから。
ラスト、黒木瞳が「独り占め」してしまうのは、他の死んだ女たちに不公平ではないかと思ったくらい。
黒木瞳の豊志賀は、はっきり歳がわかるメイクで出てくるのが挑戦的。
幽霊になって出てきても、貞子みたいに理不尽で非人間的な造形ではなく、感情的に理解できる範疇なのでそれほどまがまがしくはない。モダン・ホラーより時代劇仕立てで様式が勝った分、かえっておどろおどろしさは薄れたみたい。撮影・美術・衣装などのスタッフワークが光る。
表情をまったく変えない赤ん坊など、わからないようにCGを使っているのではないか。不気味。
(☆☆☆★★)