prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「イースタン・プロミス」

2008年07月14日 | 映画
クリスマスに生まれた「奴隷の子は奴隷」となるはずの赤ん坊が水に流されそうになるが、しかし、という大詰めのあたりは、キリストとともにモーセのイメージがちらっとだぶる。

全身にタトゥーを施したモーテンセンの生業とその周囲のロシア・マフィア連中の形容のしようもない中世的とも見える陰惨な世界で、不思議と彼だけヒロインに不思議と拒否感を覚えさせない、なぜなのか、という本質がわかってくるラストは、もともと天使であるサタン(脚本は「堕天使のパスポート」のスティーヴ・ライト)が神に逆らって地獄に突き落とされるのと違い、この神のいない世界で自ら地獄に赴くかのよう。

全裸のモーテンセンがナイフで武装した暗殺者に襲われる格闘シーンをはじめ、これほど痛めつけられる肉体を生々しく感じさせる映画もない。

もっぱらエイリアンであるロシア人社会ばかりが描かれ、いわゆるロンドンらしいロンドンがまったく現れない。アーノン・ミューラー・シュタールやヴァンサン・カッセルなど非英語圏出身だがロシア系でない役者で固めたのもかえって観念的民族性が濃密に出た。
(☆☆☆★★★)


本ホームページ


イースタン・プロミス - goo 映画