prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「トウキョウソナタ」

2008年10月18日 | 映画
リストラされた父親が家族に言えなくて図書館で時間をつぶしたり、次男が給食費を使い込んで好きなピアノ教師の教室に通う、といった描写は、(これってあるある)とごくリアルなものと思わせて、特別に家族が秘密を持ったり、崩壊しているしるしとは思えなかった。
次男の担任教師が、おまえとは一年限りのつきあいだから互いに余計なことは言いっこなしにしようという距離感のとりかたも、むしろ好ましく思える。通常のホームドラマや学園ドラマの方が異常に関係が濃厚すぎるのだ。

就職活動している父親が担当者に「あなたは何ができますか」と言われて立ち往生してしまい「カラオケならできます」などと口走るあたり、山科けいすけのマンガ「C級さらりーまん講座」みたいだが、「部長ならできます」と言った元部長が実際にいたというのは割と有名な話(都市伝説かもしれないけれど)。
炊き出しの食事に並ぶ男たちが、スーツ姿かホームレスそのまんまの混在というあたり、どちらも制服みたい。

実際、どこでも通用するスキルというのはそんなにあるものではないし、要求される場がなくなったり、もっと安く使える人的資源が出てくれば締め出されるもので、次男に特別な能力がないと成り立たないラストは音楽の力もあってカタルシスは一応あるけれどちょっと首を傾げた。

舞台になる家の両隣がどっちも更地になっていて、しかもさっぱり工事が進んでいないあたりもありそうな光景。森鴎外いわく、「東京はいつも普請中」。

小泉今日子がおそらくスッピンでアップで撮られているのが貫禄。
(☆☆☆★★)


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