prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「王の男」

2008年10月27日 | 映画

二人組の芸人の片割れが平たく言えばオカマ、という設定が、日本だと身障者の真似をしてみせたりする可咲(おかし)の芸や、出雲の阿国がオカマの真似をして踊ったのが歌舞伎の始まりだというのに通じる。画面には出てこないが盲人の真似を見せるという芸もしていたという設定だし、もともと芸能にある差別の構造をまともに扱っている勇気に感心する。

芸人と王との身分差だけのドラマと思ったら、王自身にも周囲の官僚構造にがんじがらめになっていて自由はなくて、妙に自分が風刺されているのに笑ってしまってから一種のツボを突かれたように一気に放蕩に走るあたり、ドラマの彫りが深い。
ファザコンにしてマザコン、男女両方相手に放蕩にふけり、残虐で、ときどき自分を笑うこともできる王の性格が面白く、芸人二人がともに芸人根性を見せるラストも感動的。

王の宮殿の内装など、「刺青一代」ばりの次々と縦の構図で開いていく何重にも重なっている襖の柄など、王がどれほど外部から隔てられているかを端的に見せるとともに、歌舞伎的奇想というか東洋的卑近美を感じさせる。
口上の韓国語の調子のよさ、リズムがいい。
(☆☆☆★★)