「コーラスライン」といえばオーディションそのものをモチーフにして、舞台に立っているダンサーたちに実際にオーディションを勝ち抜いてきたであろう過去を重ねて見る作りなのだけれど、このドキュメンタリーはそのオーディションそのものを追う。
素のダンサーの姿は舞台で見るように綺麗でも均整がとれているわけでもないのが生々しく、田舎から十八歳で長距離バスでニューヨークに上ってきた、というのが多くて、アメリカの底とトップとを一望にするよう。
それにまたこのオリジナルのプロダクションの作・演出・振り付けを担当したマイケル・ベネット自身の人生がだぶってくる。選考する側にかつてのダンサーがいたりするのも歴史を感じさせる。
それにしても、最終選考に残った候補者のうち、この人が選ばれるのではないかと思った人がその通り選ばれるのは、不思議なくらい。オリンピックみたいに物差しがはっきりしているわけでもないのに。
八ヶ月にもわたるオーディションも大変だが、画面には出てこないが、その間プロダクションを維持していくこと自体大変だと思う。
いったんスターになって仕事がなくなってまた新規まき直しするキャシー役が、最初オーディションに落ちる台本だったのを、当時ニール・サイモン夫人だってマーシャ・メイスンが合格しないと納得できないと意見して、最後のピースがぴしっと合てはまるように完成した、というエピソードも面白い。
(☆☆☆★★★)