prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「告白」

2010年06月24日 | 映画
オープニングのてんで勝手をしながらミルクを飲む学級崩壊した中学生たちの姿が、即大きな「赤ん坊」に見える。そのカオスの中で淡々と松たか子が「告白」を続けて、しかし周囲の荒れ方はまったく収まらない。さすがに舞台経験の多い人のせいか、声も姿も端正な調子が崩れず、混沌とマイペースな独白のコントラストと対照のブレンドが映像と音響の精密な設計とともにペースをほぼ乱さずに続くのがスリリング。
陰惨な内容を映像スタイルの完成度が中和している。

ただラスト近くなると、エイズの扱いなどいくら中学生でもあれほど無知かなとも思うし、クライマックスはイリュージョンだと思って見ていたが、現実だとしたらどうも荒唐無稽。「タクシードライバー」みたいに半ば幻想と受け取りたくなる。

通して見ると世の中なめきった、甘ったれた、少年法を盾に取った悪質なガキを教師がどう本気で「反省」させるのか、というフィクションでないと成り立ちそうにないお話になっている。一種の痛快さはあるけれど、現実離れしているとも思える。

脱線するけれど、明らかに「夜回り先生」をモデルにした教師が重要な役割で出てくるのだが、本物の「夜回り先生」と中学と大学で同級生だったという人から直接聞いたら、昔は「ニッポン無責任時代」の植木等みたいな口八丁の調子のいい男だったというからびっくり。どうやってそんなに変わったのだろう。
(☆☆☆★★)


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