最近この映画の製作過程とそれに伴ってモデルになった抗争事件の関係者が殺された事件を描いた伊藤彰彦・著「映画の奈落」の登場によって映画そのものの受け取られ方が大きく変わった一編。
著者が注視するのは「仁義なき戦い」ではあまり描きこんでいないヤクザと連れ合いになる女たちの存在に目をつけてそこにロマネスクを展開する端緒にした高田宏治の笠原和夫を越えようとする体質が、のちの「極道の妻たち」シリーズに連なっていくという映画史的な展開と、東映の路線ものがついにネタ切れになって日本映画が大作一本立てになっていく過程、さらには日本がバブル経済に突入していく社会の変遷とを重ねて描いている。
正直言って、裏の事情を知らないで映画だけ見ていると、なんとなくぼうっとした、どの程度実録に則っているのかとは別に画面のタッチや演技の質としてリアリズムを貫徹したものとはいいにくい、といった印象だった。
松方弘樹がやった狂犬ヤクザのモデルに反映してしまい、結果として暗殺騒ぎを起こしたかのように受け取られても仕方ない羽目に至ったわけだが、映画より裏話の方がおもしろいという印象は免れない。
オープニングとエンディングの地面に首まで埋められたヤクザのまわりをジープでぐるぐる駆け回るという脅しは、エイゼンシュタインの「メキシコ万歳」や篠田正浩の「沈黙」でも見られたけれど、冬景色でやっている分、また別の凄惨さが出ている。というか、やはり冬景色