リュック・ベッソンとすると「フィフス・エレメント」がもろに中学生くらいの時に書いていたアイデアの実現だったわけで、予告編からも相当に中学生が書いたSFみたいな匂いがぷんぷんしたけれど、実物はそれ以上。
いや、いろいろな意味で進歩してません。内容が人類のさらなるステージへの進歩を扱っている分、イタいったらない。
冒頭、ヨハンソンが韓国人ヤクザたちに拉致されるシーンで、チーターがインパラを捕獲する実写とカットバックされるあたり、マジで「科学的」っぽい裏づけを見せて、かえって疑似科学的なウソ臭さと安っぽさを早くも充満させます。さらにモーガン・フリーマンの科学者の講演(さすがに聴衆が失笑している)がハズした感じに拍車をかける。
タイトルのLUCYというと、すべての人類の祖先ではないかと措定された女性
なわけだが、象徴的な意味だと思っていたら、実物がもろに出てきた。スカーレット・ヨハンソンが脳の活動を100%全開にする=意識の拡大により時空を越えるというコリン・ウィルソンの「賢者の石」式の時間旅行をしてその元祖ルーシーとご対面するのには失笑するしかない。ループ式の構成がルーティンになってしまってます。
脳の活動が解放されると、まあ超能力が使えるようになるわけです。簡単に言うと。だけど、いきなり重力からすら解放されてしまうのはいくらなんでもバカバカしくて見てられない。これが「マトリックス」式の脳内現実だったらまだしも、現実世界でやりますからね。さらに電気機器も電波もみんな操れるようになる。文字通りデンパ入ってます。
あとヒロインが腹に埋め込まれたクスリの袋の取り出しを病院の手術中の医師たちに命じるのに、手術台の上の患者をもう助からないと医者にもわからないがヒロインにはわかるものであっさり撃ち殺してしまうのはムチャクチャ。「神」に近くなるのだから人の生殺与奪権を握るという理屈か知らないが、ここで完全に気持ちがヒロイン、というか映画そのものから離れる。
宣伝ではまるで出てなかったが、韓国ヤクザのボスをやっているのが「シュリ」「オールド・ボーイ」などで知られる韓国の名優チェ・ミンシクChoi Min Sik。初の英語映画への出演だが(いいかげん有難がることでもないだろう)、なんと英語のセリフはひとつもなし。外国語をしゃべるハンデに縛られない分、マイペースでむちゃくちゃコワいのと間が抜けたところと、得意の顔を二つながら見せます。
(☆☆★)
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LUCY/ルーシー@ぴあ映画生活
映画『LUCY/ルーシー』 - シネマトゥデイ