ふつうだったらその才能を磨いて自分と社会に生かそうとする展開を予想するのだがそうはならず、はなはだ平然とプレミアムつきのウイスキーを盗むわ、安いウイスキーで割るわで、悪びれもせずしれっと悪事を働き、作者の方も特にそれを批判するわけでも擁護するわけでもないのが、コミカルであるとともにアナーキーなところ。
ケン・ローチのこれまでの厳しい作風からするとかなりソフトタッチになっているが、上昇志向をはなから放棄したような態度になってきている気がする。裏には上昇のしようもない現実もあるのだろうし、上昇そのものを良しとする価値観を批判というほど激しくはないが相対化してはいるのだろう。
タイトルになっている天使の分け前とはウイスキー樽で熟成しているうちに気化してどこかに行ってしまう分、という意味なのだが、ぎすぎすと高いウイスキーを独占しようとする精神とはまた違う、ノンシャランな気分を出している。
これがワインだったらもっと気取った調子になっただろう。男たちがスカートを着るスコットランド衣装がなんともユーモラス。
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天使の分け前@ぴあ映画生活
映画『天使の分け前』 - シネマトゥデイ