丸の内ピカデリーのスクリーンは、いつもでれっと横長のスコープサイズ(1:2.5)のままにしていて、やや横の長さがつまったビスタサイズ(1:1.85)の映画であっても前はカーテンを動かしてフレームをきちっと作っていたのが、デジタル上映になってから横に黒味を空けたままの状態で上映している。理屈としてはデジタルなら縦のフレームがすぱっと直線的にできるからいいのだという理屈だろうが、画面の両脇が薄明るいのは、なんだかだらしなくていけない。
とはいえ、スペクタキュラーな内容であることは見る前からわかっていたので予告編でビスタでも本編ではスコープになるものだと思っていたら変わらないのであれれと思ったが、しばらく見ているうちにスコープサイズを映画の作者が採用しなかった理由がわかってきた。
つまり、全編にわたって登場人物が操るビデオカメラの映像を大幅に取り入れているPOV式の作りをとっているので、家庭用ビデオカメラではスコープサイズはおかしいからだ。
最近ではYouTubeやそこから編集したテレビの衝撃映像番組などで竜巻の実写映像をよく見かける。
ここではそういう衝撃映像を撮りたがる連中の生態をドラマに組み込んでいるのが工夫で、竜巻が迫っている危険な状況でなおも接近して撮ろうとする姿を見せられるとハラハラする一方で、とっとと逃げろこのバカどもがとも思う。これもしばしば素人がバカを晒している自分撮り映像(何か名称ないのか)を見ている時の感じとも重なる。
さらに実写に似せて実写だったら踏み込めないところを描くのが、ひとつのカタルシスになっている。
一番竜巻に接近した人間はイカロスのように吸い上げられて地面に叩きつけられるわけで、その彼岸というか、天に限りなく接近した光景というのを見せて劇映画としての特性を発揮した。
竜巻が炎とともに人間を吸い上げる光景はまるっきり生き物の竜のよう。
ハイスクールの校長がアフリカ系で嵐に対して終始腰のひけた対応をしているあたり、オバマになぞらえているのではないかと思わせる。
エンドタイトルに出たスタントの人数を数えたら、27人だった。割と少ない印象でで、あれだけ派手にびゅうびゅう人が吹き飛ばされていたが、おおかたはCGということか。
(☆☆☆★)
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映画『イントゥ・ザ・ストーム』 - シネマトゥデイ