父親に戸籍を売り払われてしまった社会の底辺で生きている青年・染谷将太が他人の戸籍が大量に保存されたハードディスクをたまたま手に入れ、それを奪い返そうとするヤクザに追われる出だしは音響も映像もパワフルで好調なのだけれど、捕まって監禁され一緒に監禁されていた女の子・水野絵梨奈と脱出し、そこからヤクザとの戦いになるのかと思うと、だんだん話が妙な方向に展開していく。
染谷がまた捕まって拷問され簀巻きにされて海に放り込まれるのだからどう考えても死んでいるはずなのだが、なぜか生き延びて戻ってくる(ここでそれまでモノクロだったのがカラーになる)のであれあれと思っていると、それまで姿を現さない父親への復讐劇っぽい展開をしていたのが、唐突に千手という宗教団体がかった組織のトップ綾野剛が唐突に敵役として浮上し、本部に殴り込みに行くのにそれまで敵役だと思っていたヤクザが味方になるといった展開になる。
エンドタイトルを見ると、登場人物の名前がみんな神さまのそれになっているのがわかる。染谷将太が大黒砂真男、水野絵梨奈が南無阿弥(をいをい)、渋川清彦が恵比寿大吉、村上淳が猪神楽彦、綾野剛が千手完(おいおい)といった調子。
どうも戸籍をなくしたというのが単に社会的アイデンティティを喪失したというのでなく、存在しているのかどうかわからない、それも生きがい云々というレベルではなく、終盤はほとんど文字通りの生死、一種の定かならぬ幽玄な世界にまで行ってしまって、父親とかヤクザといったこの世の存在が相手ではなくなってきている。
石井岳龍監督が改名前の聰亙時代からスピリチュアルな世界に傾倒しているのは知ってはいたけれど、正直相当に当惑します。
カラーとモノクロの使い方などタルコフスキーの「ストーカー」の逆手をいっているみたい。
スピリチュアルな世界がありがちな静的な美意識ではなくすごく強烈な映像と音響と共に表現されるというのはおもしろく、毎度ながら音の処理は見事なもので劇場で見て(聴いて)良かったとは思うし、イケメンの役者たちがみんなハングリーな顔をしているのには感心したけれど、ちょっとついていきかねる。
(☆☆☆)

本ホームページ
公式ホームページ
ソレダケ/that’s it@ぴあ映画生活
映画『ソレダケ/that's it』 - シネマトゥデイ
染谷がまた捕まって拷問され簀巻きにされて海に放り込まれるのだからどう考えても死んでいるはずなのだが、なぜか生き延びて戻ってくる(ここでそれまでモノクロだったのがカラーになる)のであれあれと思っていると、それまで姿を現さない父親への復讐劇っぽい展開をしていたのが、唐突に千手という宗教団体がかった組織のトップ綾野剛が唐突に敵役として浮上し、本部に殴り込みに行くのにそれまで敵役だと思っていたヤクザが味方になるといった展開になる。
エンドタイトルを見ると、登場人物の名前がみんな神さまのそれになっているのがわかる。染谷将太が大黒砂真男、水野絵梨奈が南無阿弥(をいをい)、渋川清彦が恵比寿大吉、村上淳が猪神楽彦、綾野剛が千手完(おいおい)といった調子。
どうも戸籍をなくしたというのが単に社会的アイデンティティを喪失したというのでなく、存在しているのかどうかわからない、それも生きがい云々というレベルではなく、終盤はほとんど文字通りの生死、一種の定かならぬ幽玄な世界にまで行ってしまって、父親とかヤクザといったこの世の存在が相手ではなくなってきている。
石井岳龍監督が改名前の聰亙時代からスピリチュアルな世界に傾倒しているのは知ってはいたけれど、正直相当に当惑します。
カラーとモノクロの使い方などタルコフスキーの「ストーカー」の逆手をいっているみたい。
スピリチュアルな世界がありがちな静的な美意識ではなくすごく強烈な映像と音響と共に表現されるというのはおもしろく、毎度ながら音の処理は見事なもので劇場で見て(聴いて)良かったとは思うし、イケメンの役者たちがみんなハングリーな顔をしているのには感心したけれど、ちょっとついていきかねる。
(☆☆☆)

本ホームページ
公式ホームページ
ソレダケ/that’s it@ぴあ映画生活
映画『ソレダケ/that's it』 - シネマトゥデイ