かといって戦争と無関係かというとそうでもないので、世間が大義の類を押しつけてきたり焼け出された親戚が転がり込んでくるといった鬱陶しい状況が続き、その中でかえって官能の世界に閉じこもっていくといった風情。
昔のロマンポルノ「四畳半襖の裏張り」とか「実録阿部定」でキナ臭い世相に背を向けてひたすらセックスにのめりこんでいた男女を描いていたのに近いか。
ただし、ロマンポルノに比べると割と役者の柄もあって良くも悪くも淡泊な感じになるのは否めない。雑誌「映画芸術」で長谷川博巳の役が誠実に見えすぎていてもっと中年の狡さや嫌らしさが出てもいいとあって、森雅之が今いればというないものねだりをしているが、戦争と恋愛の関わりの極北が「浮雲」ということになるのだろう。
トマトのシーンも、トマトが今のきれいすぎるトマトなのは気になった。
二階堂ふみはセリフに古風な感じを出しているが、ヌードになるとやはり今風にスタイルいいのだね。昔の日本人のプロポーションではない。
セリフのやりとりが最近の日本映画らしからぬ自然さ。
(☆☆☆★)
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