prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

5月9日のつぶやき

2020年05月09日 | Weblog

「ザ・バニシング 消失」

2020年05月09日 | 映画
リメイクの「失踪 妄想は究極の凶器」の方を先に見ているので、話の核心の部分は知って見ることになってしまう。

リメイクだと犯人側の描写が割と早いうちから入ってきて、クライマックスのちょっと前ぐらいに真相が分かって、そこから改めて盛り上げるように作ってあったのだが、その分型通りのサスペンスになってしまったとも言える。
もっともそれはオリジナルを見たからそうとも思えるので、見た当時はかなり嫌な感じだが面白いサスペンスだなとは思った。

リメイクだとキーファー・サザーランド、サンドラ・ブロック、ジェフ・ブリッジスといった知名度の高いスター俳優が出演しているが、オリジナルはそれほど美男美女というわけでもなく、かなり地味。その分リアル感は強い。
オリジナルははっきり嫌ミスという言葉が現れるずっと前に実に嫌な味そのものを追及した感がある。

その嫌さというのは犯人のキャラクター、というか行動原理にあるわけで、動いてるかは中盤を過ぎてからフラッシュバックを交えて描かれることになる。
それは相当に理解を絶したものだが、失踪した女性を追い求める男の方がその原理とシンクロしてしまうようなことになるのが恐ろしい。

音楽の使い方は極めて抑制されていてクライマックスになるまで全くと言っていいぐらい音楽を使っていない。
リメイクのジェリー・ゴールドスミスの音楽はそれ自体は優れたものだったが。

犯人の家族が遊びで悲鳴を上げるシーン、遊びだというのにどこか不気味。
犯行のリハーサルと共に自分の脈拍を測るのは「イコライザー」みたい。

冒頭のナナフシから蜘蛛、それからラストのカマキリに至るまで随所に虫が出てくるのは、犯人が自分を含めて人間を虫のように見ている暗示のようでもある。

妻が失踪した男にできた新しい恋人?のなんとも微妙な態度。
リメイクだとこの新しい恋人が活躍することになるのがいかにもハリウッド製なのだが、失踪した女性の立つ瀬がなくなったみたいでかえって微妙に後味が悪くなった感もある。

リメイクといっても監督は同じで英語だとジョージ・スルイザー、フランス語読みだと
ジョルジュ・シュルイツァー。
「呪怨」もそうだが、ハリウッドリメイクとなると監督が同じでも大きく変わらざるを得ないみたい。