prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「FUNAN フナン」

2022年05月11日 | 映画
片渕須直監督が日本では本当の子供向けのアニメは新作としてはまったく作られなくなっていると 指摘し、後期思春期もののばかりになっている、子供向けのがないということは大人向けのアニメもないという意味の発言をしていて、海外での大人向けのアニメの一例として挙げていたのが、これ。

カンボジアのクメール·ルージュ独裁下の一家族を描く。
以前、アメリカ映画「キリング・フィールド」でも描いていたモチーフだが、アニメだとキャラクターデザインがその国の人の顔らしい。
すべては“オンカー”が決め、家族をばらばらにして支配しやすくする非人間性は改めておぞましい。
自然描写が美しい分、おぞましさとのコントラストが目立つ。

とはいっても、フランス・ベルギー・ルクセンブルク・カンボジアの合作で欧米の価値観で作られたものにはちがいないとは言える。

それにしても反知性主義というのは恐ろしい。
「活発な知性はいつでも非従順だ」とは立花隆の言葉だが、独裁は必ず反知性主義と結びつくものらしい。
明治時代の日本について来日した外国人が「驚くほど反知性主義が薄い」と評したものだが、この点に関しては完全に退化している。