prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「港に灯がともる」

2025年01月23日 | 映画
富田望生のヒロインは阪神淡路大震災の被災者で、在日コリアンの帰化問題を抱え、コロナ禍にみまわれ、家庭内の不和にも悩ませられているという具合にドラマチックな要素には事欠かないが、それらをやたらと並べ立てないで順々に後からわからせていく。

まず単なる?不眠症なのか鬱病なのか、とにかく眠れない症状の描写から入り、そこから恢復していって職につき人心地つきある程度余裕が出てから徐々に各モチーフに移る。
いきなりテーマを正面から押し立てないで、いわば小文字で綴っていく。

富田望生が父親の甲本雅裕との口論のあと、風呂場に閉じこもってすりガラスに影も映らない状態が続いてからドアを開けて出てくるまでの、誰も映っていない長い長い間には息がつまった。ずいぶん大胆な演出で、終盤の父親相手の「家族らしい」つまりこまごまとした語り合いが欠けていたと電話で話すやはり長回しの緊迫感と対をなす。

長田区の鉄人28号の巨大なモニュメントが頻繁に写されると思ったら、原作者横山光輝の出身地なのね。