原題はMary Shelley メアリー・シェリー。「フランケンシュタイン」の作者。
なんでもないようだけれど、シェリーというのは夫パーシー・シェリーの姓で、メアリーはパーシーと1813年頃に出会ったのだが、彼はすでに妻子持ちで、翌年激怒した父ウィリアム・ゴドウィンから一緒に駆け落ちしたのであり、正式にシェリー姓を名乗ったのは1816年の末にパーシーの妻ハリエットが自殺してからということになる(おいおいだが、ご丁寧にもハリエットとパーシーがまた駆け落ちしていたのだった)。
当時ゴドウィン姓とシェリー姓のどちらを名乗っていたのかは曖昧で、姓と共にアイデンティティも引き裂かれていたと思しい。
作家として「フランケンシュタイン」を執筆するが、夫が書いたものだろうと出版社の編集者は信じない。ここがあからさまな差別の告発として見応えがある。
詩人バイロンがたいそうな女たらしぶりで、女性監督らしいというとなんだが、これまでのホラー寄りに処理していたバイロンとシェリーの「フランケンシュタイン」を生んだ一夜を扱った作品の中では毛色が違う。