日本映画監督協会が続けている監督が監督にインタビューするシリーズで、撮った素材をほとんどそのままつなげているみたいな映像集。まず記録として貴重だが、たとえば○○ちゃんと呼ばれているのは誰のことなのかわからないことも多く、字幕で示してもいいのではないかと思った。
インタビュ―する側の大島渚がほとんど自分の監督としての経験を語らず、聞き手に徹している。
たとえば、日本の監督が海外に出ていく時の体験など、大島自身が「愛のコリーダ」から「戦場のメリークリスマス」「マックス・モン・アムール」に至る歩みを黒澤の海外での評価とハリウッド進出の失敗と比較するよう話に持っていくこともできたと思うが、そういう(多分)デリケートなところには触れていない。
あまり聞かれたくないようなことは聞かないようにしているのが伝わってくる。大島渚は意外と(でもないが)長幼の序に忠実なのではないか。
助監督時代、スケジュールや予算の管理からロケハンから脚本、編集とあらゆるパートを経験させられて、当時の東宝だと助監督は幹部候補という位置づけだったという。終わりごろになると、ほとんど現場にはB班的な仕事がある時には出るが、なければ脚本書くか酒飲んでいたかという調子だったらしい。
これが次第に量産する都合もあってか分業化して他のパートに関わらなくなったのは監督を育てるという点ではよろしくないと黒澤は語る。
大島も時代は下がるが松竹の助監督時代に他の会社だったらスクリプターがやる仕事までさせられていて、そういうトータルな具合に商業主義でやっていく地盤を身につけたのが後で創造社を起こして潰しもしないでなんとかやっていけたのに役立ったという意味のことを別の場所で言っている。
黒澤がずうっとタバコ吸いっぱなし。
大島がドイツ人プロデューサーに黒澤が助監督時代に書いたシナリオ「達磨寺のドイツ人」を映画化できないか打診されたと語る。けっこういけそうな気がするけれど、黒澤は否定的。