今日ネット上のニュースを見ていたら、以下の様な記事があり、非常に気になったものでした。
<以下記事抜粋です>
2011年度までの5年間に全国のJR6社で起きたトラブルの割合を比較したところ、JR北海道は平均の2倍に上ることがわかった。
JR函館線八雲駅では8日、停車中の特急から出火する事故が発生したばかり。
JR北海道は部品交換や点検周期を早めるなどの対策を取っているが、トラブルを食い止められていない。
<記事抜粋は以上>
このニュース記事では、JR旅客各社における走行距離100万km当りのトラブル発生件数グラフも掲載されており、JR旅客各社のトラブル発生件数をワースト順に並べると…
1.JR北海道 約3件
2.JR東日本 約1.5件
3.JR西日本 約1.5件
4.JR九州 約1件弱
5.JR東海 約0.7件
6.JR四国 約0.7件
となっています。
R北海道のトラブル発生割合は旅客他社に比べ際立って多く、次いでJR東日本・JR西日本がその半分程度で2位グループを形成、その他3社における車両トラブル発生割合はJR北海道の3分の1以下となっています。
(写真はJR北海道の札幌圏で活躍する新型電車733系・既公開記事で使用した画像の再掲です)
JR旅客各社の中でも、3島会社は土地柄故に経営状況が芳しくなく、特にJR北海道とJR四国は非電化閑散線区を多く抱え、車両面でもメンテナンスに手間がかかる気動車の割合が高くなっているなど、不利な条件が揃っています。
しかしながらJR四国のトラブル発生割合が最も低い事を踏まえると、JR北海道が酷寒地での運用に向けた特殊装備を施した車両を用いているという事情を差し引いても、必ずしも経営状況や気動車の多さが影響しているとは言い難いものです。
ちなみにこの記事で用いている統計は、2007~11年度までのトラブル発生件数を元にしたものですが、一歩間違えれば多数の人命が失われる大惨事に発展しても不思議ではなかった石勝線トンネル内車両火災事故などは、2011年以降に発生しています。
そのためたまたまこの統計を取った時期に事故が多かっただけではなく、先日の八雲駅車両トラブルなどと共に、その後もトラブルが続いているのが現状です。
先日の八雲駅における車両トラブルは、老朽車両(キハ183形)が怠起したもので、一般的に経年と共に老朽化などに起因したトラブル発生割合が高まる事を踏まえると、国鉄から継承した古参車両が多いJR西日本が、トラブル発生割合において比較的上位にランキングされるのもうなづける気がします。
とはいえ石勝線トンネル内での車両火災事故などは、まださほど古くない車両(キハ283系)が怠起していますので、必ずしも車両の老朽化がトラブル多発の要因になっているとは言い難く、JR北海道では車両トラブル以外にも、追分駅での信号トラブルの様な重大インシデント事案も発生しています。
この様な状況を鑑みると、会社の企業体質や整備体制などに何らかの理由が…と言わざるを得ないと感じますが、JR北海道は今後この様な不名誉な記録で突出した状況にならない様に努めて頂きたいものです。
またトラブル発生割合で2位にランキングしているJR東日本は、「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」をはじめとする粗製乱造車両を、20世紀末~21世紀初頭にかけて大量導入しており、平均車齢こそ割合低いものの、行き過ぎたコストダウンの深度化も災いしていると感じます。
(写真は行き過ぎたコストダウン策も災いし、さほど古くない車両にも関わらず古巣を追われ、大改造を施して他地区へ転用されてしまったJR東日本車両の一例です)
同社は最近の新車で系統2重化など、「故障に強い車両」への設計変更を行っており、こちらも結構トラブルが多い印象がありますが、既存車両の改良とあわせ、この対策がトラブル軽減にどれだけの効果を発揮しているのかも気になる所です。
そして趣味的な面白さと言う点では最下位と言われる事も多く、サービス面での批評も決して少なくないJR東海は、主力となる東海道新幹線が収益面だけでなく、走行距離でも大半を占めていると推測され、こちらは在来線とは比べ物にならない過酷な車両使用環境にあります。
それでも車両トラブル発生は少なく、その他の輸送障害発生頻度も台風や地震などに起因するものを除けば、東海道・山陽新幹線はかなりの長距離を高頻度で運行している路線にしては少ない気がします。
東海道新幹線は趣味的な面白みには欠けるものの、安定輸送と言う観点で見ると、JR東海は高運賃・料金に見合うサービスを提供していると感じ、高精度な設計や保守がこの様な記録を生み出す一因になっていると思いますが、今後も現状に奢らず安定輸送を堅持して頂きたいものです。
(同社は新幹線の存在感が圧倒的に強く、それ以外の路線での問題などもあるのですが…)
ランキングだけが全てではなく、事故を怠起せずに安全かつ安定輸送を実現する事が第一ですし、鉄道車両も人間が設計した機械ですので、入念なメンテナンスを実施しても、時には予期せぬトラブルが発生する事もあるかと思います。
トラブルが報じられる事を恐れて「トラブル隠し」→「重大事故発生」と言った事態になる事は絶対に避けて頂きたいもので、時には安全を
確保するために「列車を止める」事も必要かと思いますが、過去に発生したトラブル事案などを元に、同種事案の再発と言った事態だけは避けて頂きたいものです。
不名誉な記録で突出した状況になってしまったJR北海道は、数々のトラブルを糧に今後様々な対策(既に可能な対策は幾つも実行されているとは思いますが…)を講じ、今度はトラブル発生件数の「ワースト」ではなく、「ベスト」上位ランキングで名前が挙がる事に期待したいものです。
青函トンネルは気動車走行禁止(通過の際は電気機関車牽引)になっていますので、JR北海道は気動車こそ多く保有しているものの、気動車の長大トンネル運行対策が他社より…という事はないと思います。
しかしながら酷寒地で、もし冬季に事故が発生していれば、車両から避難できても車外で凍死者が発生してもおかしくない土地柄ですので、その点では他社以上の対策が必須かと思いますし、少なくとも石勝線トンネル事故の様に、人命に影響が及ぶ可能性が極めて高い重大インシデントなどが再び発生する事がない事を願いたいものです。