豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

“Delikatessen”の謎

2006年08月17日 | 軽井沢・千ヶ滝
 
 今までは店頭などに置いてある軽井沢案内のパンフレット類にはあまり興味がなかったのだが、このコラムを書くための材料になるかもしれないと思い、今回はあれこれと集めて帰った。そして、また謎が1つ生まれた。
 それは「デリカテッセン」にまつわるものである。

 かつて、軽井沢の旧道に、今も残る鳥勝や物産館ばかりでなく、明治牛乳、明治屋、小松ストアー、三笠書房などが軒を連ね、白い包帯を巻いたヘルメット姿の外人さんたちが歩きまわっていた頃の話。その中の1軒に、ソーセージ屋の“DELIKATESSEN”もあった。
 店頭にはドイツ語で店名の書かれた白い横長の看板が掲げられていたが、これを見て、祖父が中学生くらいだった私に、「どういう意味か分かるか?」と聞いた。
 「英語じゃないんじゃない?」と私は抗弁したのだが、「これくらいは分かるだろう」と言うので、しかたなく、「“delikat”は“delicate”だろうから、“微妙な”“essen”て、なんだろう・・」と答えると、祖父は、「“delicate”ではなくて、“delicious”で、“essen”は“eat”だよ」と教えてくれた。
 今思い起こして独英辞典を引いてみると、“delikat”にあたる英語は“delightful”となっているし、“delikat”には“delicate”の意味もあるばかりでなく(ただしdelicateは「微妙」だけでなく、「美味しい」という意味もあった)、“Delikatesse”には“珍味”という訳語ものっている。
 “微妙な食べ物”でもあながち誤りではなかったのかもしれないと今にして思うが、その祖父も他界しすでに20年以上経つ。
 祖父は1930年代にベルリンに留学しているが、不勉強な孫を少し鍛えようと思ったのだろう。

 基本的には勉強熱心で真面目な学者だったが、ひょうきんな所もあって、同じく中学生だった私をつかまえて、「Xで始まる単語を10個言えたら、何でもお前の欲しいものを買ってやる」と言ってきたことがある。
 欲しいものは山ほどあったのだが、残念ながら、Xで始まる単語はX’masくらいしか思い出せなかった。
 傍で聞いていた叔母が、「そんな役に立たないこと言っていないで、もっと役に立つことを教えてあげなさいよ。だいたいお父さんはXで始まる言葉を10個も言えるの?」と叱ったところ、祖父は、「“X ray”だの“Xenophon”だの、いくらでもあるよ」と答えていたが、このほかに2、3のギリシャ人の名前を言っただけで、10個は挙げられなかった。
 確かに何の役にも立たない質問ですが、40年以上経った今でも忘れられない懐かしい問題である。
 
 ところで、“Delikatessen”の“謎”はこれだけではない。
 実は今回、旧道のどこかの店先に置いてあった「旧軽井沢マップ」(旧軽井沢ひびき会発行)というのをもち帰ったのだが、これを見ると、旧道の表通りから少し入ったところに、“軽井沢デリカテッセン”という店がある。
 しかも地図の下欄に載っている同店の広告には、“ KARUIZAWA DELICA TESSEN since 1980”と書いてある(*写真を参照)。
 問題の文字は“Delika”ではなく“Delica”、しかも“since 1980”というのも理解に苦しむところだ。かつて、1964、5年頃その店先で祖父と会話を交わしたあの「DELIKATESSEN」と、現在の、このマップに広告の出ている「KARUIZAWA DELICATESSEN」は、どのような関係なのだろうか。

 PS これまた平安堂で買った「軽井沢ものがたり」(新潮社、1998年刊行)の中に、大正末期の軽井沢駅から旧軽井沢に向かう道の写真が載っているのを見つけた(57頁)。こんな風景を大正10年頃に祖父が見たのかと思うと感慨深いものがある。

  2006/8/17

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