そのディーン・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』(朝日文庫)が、会話を勉強するには最高の作品だとほめていたのが、グレゴリー・マクドナルド『死体のいる迷路』(角川書店、1979年)だった。
先日、神保町を散歩していて、矢口書店の店頭に100円で出ているのを見つけて、さっそく買ってきた。
しかし、出だしからまどろっこしい。
確かに会話が続いているが、この会話のどこが勉強になるのか分からない。内容もつまらないので数ページでやめた。時間の無駄である。
巻末の角川の広告を見ると、マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー『唾棄すべき男』だとか、フレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』、ジョン・クリアリー『法王の身代金』などなど、懐かしい本が並んでいる。
あの時代の本だったのだ。
このグレゴリー・マクドナルドという作家の会話は定評があるらしく、L.トリート編『ミステリーの書き方』(講談社文庫)でも、彼が「会話」という章を書いている。
しかもすべて会話体で会話の書き方を指南している。これは多少の参考になったのだが、『死体のいる迷路』はだめだった。
会話の名手かもしれないが、書き出しの名手ではないようだ。
* 写真は、L.トリート編『ミステリーの書き方』(講談社文庫、1998年)の表紙カバー。