小雨、26度、83%
(In an Antique Land)アミタブゴーシュの新しい本ではありません。1990年に初刊。この6月、Joanne Harris の新刊を求めたおり、偶然、旅か歴史かの棚に並んでいたゴーシュのこの本を見つけました。見つけた時に買っておかないと、その後いつ入荷されるか解らないという、香港らしい事情からです。
わたしが、ゴーシュを読み始めたのは2001年刊の[The Glass Palace] からです。日本語にも翻訳されている彼の代表作のひとつです。以来、4冊の彼の新作は、ゴーシュの生まれ育った、インド コルカタから東の世界のことでした。昨年の新作、[River of Smoke]は、今私が住む香港の隣、広州が舞台でした。
ところが[In an Antique Land]は、舞台がインドから西、エジプトに向いています。2つの時代の違う話が、平行して進められます。12世紀のころの奴隷の話、それと、1980年後半から1990年代にかけての、ゴーシュ自身のエジプトへの旅の話です。
オックスフォードでのゴーシュの研究が、エジプト、ナイルデルタとインドとを結ぶものだったのかもしれません。アレキサンドリア大学に在学したこともあるようです。
ゴーシュの産まれた、インドを東西に舞台を変えたとしても、彼の作品の根底には、植民地としてのそれぞれの国の持つ様々な様子が描かれています。彼の評価は、インド本国よりアメリカでの方が大きいようです。 2003年にインドに行ったおり、ニューデーリーのコンノート廣場の本屋に行きました。ゴーシュの本を探すためでした。ところが見つけたのは、この一冊。
2007年の訪印の時は、コルカタに行く機会に恵まれました。ゴーシュの生まれ育ったベンガル地方の町です。何でここまで、ゴーシュのことが気にかかるのでしょうか。ゴーシュは、ほぼ私と同世代です。同じ50数年を異国の作家はどう生きて来たのか、何を見て来たのか、本の後ろにあるそんなところに惹かれています。
6月にこの本を求めたのは、香港のオーストラリア系のチェーンの本屋でした。チェーン店らしく、いつもはユニフォームを着た若いお兄さんお姉さんが立ち働いている店です。その時レジの中にいたのは30代後半の男性でした。支払いを済ませ、2冊の本を手渡してくれた彼は、ゴーシュの本を指差し、いい本ですよ。と言ってくれました。思わず私、ゴーシュが好きなんです。と応えました。本屋で働く人に、こんな言葉をかけられるとは、うれしい限りです。