小雨、22度、80%
ご近所にお住まいの香港人女性、スタイルもよろしく、いつもその年の流行のものを着ています。突っ張った方の流行ではなく、正統派の流行を追っていらっしゃいます。流行って、形だけでなく、色もあります。例えば、今年ならネービーだとか。件の彼女、ネービーのビジョーの付いたワンピースに、高いネービーのハイヒールを履いて昨日はお出かけでした。ネービーは、学校の制服にも使われる色ですが、意外に似合う似合わないがある色のように思います。制服のときは、白襟に紺、お化粧もしていない顔ですから、誰にでも似合うように思いがちです。紺の色合いは様々ですが、彼女が着ていた紺はちっとも彼女に似合っていません。
二十代の後半から三十代の半ばごろまで、この私、頭の先から足の先まで黒一色でした。日本のファッションがカラス色に染まっていた頃の話です。川久保玲に山本耀司、彼らが出始めて来た頃の事です。なんで黒尽くめでいたのでしょう。流行だったからかしら、いえ、やっぱり着ていて黒ばっかりは楽でした。靴だって、バックだってベルトだって黒だけですみますから、我が家がお金のなかった時代です、ちょうど良かったのかもしれません。その後、やっぱり焦げ茶も着てみたいと、四十代の一番物欲の塊の頃思いました。それこそ、靴もバックもベルトも茶系を買い求めました。今考えると恐ろしいくらい、服や靴を持っていました。タンスもワードローブもパンパン。今では、恥ずかしく思います。それが、五十代に入った頃から、すっぱりと茶系にはさようならをしました。決めると潔く、人にも使ってもらいます、疲れた服は捨てました。
いろいろな意味で50のいいスタートを切ったつもりです。じゃあ、何故茶系にさようならをしたかというと、簡単です、誰も褒めてくれません。言葉ではありません、すれ違う人の目線や一緒にいて話している人から返って来る反応です。ふむふむ、私には茶系は顔映りが悪い色のようです。そこで、整理に整理されたタンスを覗くと、残っている色は、紺、黒、白ばかり。しかも、この数年は、紺の出番が黒より多くなって来ました。きっと髪がもっと白くなったら、また着るものの色が変わるかもしれません。
似合う色似合わない色って、自分では知っているつもりでも、その実、人が教えてくれているように思います。赤いものが着たいとセーターを買っても、何かそぐわない、好きな色と似合う色もこれまた違います。気の置けない友人の言葉には素直に従うのがいいのですが、好きな色を着ている人に、似合わないわよとは言い辛いものです。だから、反対に、似合う色のものを着ている時には大いに褒める事にしています。それが重なると、その人その似合う色を頻繁に身に付けるようになりますからね。茶系は、似合わないと知りつつも、ココアブラウンのアラン模様のセーターを見るとぐっと胸が締め付けられます。