曇、17度、東京
女優高峰秀子と言ってもご存知の方は少なくなっています。演技の上手い女優さん、美人とは違うけど目の奥に魂が宿る顔。女優が生業でしたが、女優を辞めたあとはいく冊もの本を出しています。手元に残したのは数冊ですが、丁寧に選ばれた言葉を誦じているほど好きな文筆家です。
言葉の潔さはこの人の為人を表しています。小学もろくに通えず、子役を仕事として家族の生計を支えた人の描く文章とは思えぬ、洞察力も優れた本の数々。
様々なシーンで高峰秀子が身につけていた真珠、「真珠のような人」と題して「ミキモト」が遺品を含めた展示会を催しました。昨日が最終日、観光客で賑わう銀座に向かいました。
本の写真でも見知っている、生活に散りばめられた品々が並んでいます。アンティークのものはこの女優との生活で更に輝きを増したかに見えます。生来のものを選ぶ目が優れていたのでしょう。服装だって女優さんにしては至って普通、でも仕立てられた服たちは彼女に品を添えていました。
暗いホールの中、人も少なくスッポリと女優高峰秀子に浸った時間でした。「この家には亀の子束子に至るまで私の気に入らない物は一つもありません。」私の好きな言葉です。