チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

画家「山下清」

2024年06月21日 | 日々のこと

曇、21度、83%

 画家「山下清」生誕100年だそうです。来週には東京で回顧展も開かれます。今の若い方達は「山下清」を知らない方の方が多いかもしれません。その人の生き様が「映画」「テレビ」になったのも昭和のことです。発達障害、吃音、そんな「山下清」が貼り絵による芸術の世界を開きました。

 吃音者独特の話し方、しかも、発達障害で受け答えはチンプンカンプン。預けられた施設が嫌で旅に出る、「放浪癖」までありました。そして見事なまでの「貼り絵」を作ります。格好な題材そのものの「山下清」です。好きな画家である「山下清」のイメージは、私もやはり映像化されたものに大きく左右されています。この100年を記念し「山下清」の甥が書いた「山下清」の本が出版されているのを知りました。実際の人となりを知りたいと一気に読みました。 「和製ゴッホ」と呼ばれていたそうですが、私は納得しません。精神が病んでいたことは共通点かもしれませんが、描き出されるものの質が違うように思います。

 「裸の王様」と呼ばれたその人は、太った体に浴衣、下駄姿で日本各地を放浪しました。今も芦屋雁之助演じる「山下清」の話し方が蘇るほど、テレビドラマは誇張され作られていました。素人の甥が書く本を読むとテレビの「山下清」は実際の人とは違うことを知ります。嘘ではないけれど大袈裟な「山下清」像です。日本放浪中、風景のデッサンをしたように思っていましたが、放浪中の風景を心、頭にとどめて、帰宅後一気に表したのだと知りました。しかも服装に気遣うお洒落な一面もあったのだとか。

 「長岡の花火」「向島の花火」あの絵を見た時の感動を忘れられません。遠近法など知らない「山下清」です。後ろ向きに並び花火を見上げるその人たちを見事に描いています。私もその人たちに混じって空を見上げている気分になります。花火の匂い、頬にあたる風の動きまで感じそうな貼り絵です。

 我が家の座敷の壁に「上野の東照宮」を書いた「山下清」の作品があります。参道を東照宮に向かって進む人の後ろ姿、奥の本殿前には信者たちがこちらを向き集まっています。この絵の前に立つと、本殿に向かう人の一人になった気がします。上野の森の静けさ、昭和の匂いが流れます。

 吃音であれ発達障害であれ、そんなこと関係なく人の心をとらえるものが宿っている「山下清」の作品です。早逝した「山下清」ですが、多作でご家族が作品を大事に保管なさっていると知りました。「山下清」の絵に彼が見つめた景色、生きていた昭和の匂いに包まれた懐かしさがあります。昭和30年代、異常なまでの人気を集めたこの画家、今の人たちの目にはどう映るのでしょうか。私は「上野の東照宮」の前に立ち、今日も「上野の東照宮」に歩む自分を感じます。


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