すでに終了してしまったけれど、山種美術館の表記の展覧会に行ってきた。原宿の太田記念美術館とセットにして行った日だ。原宿の方は、いつもいっぱいの外国人がひとりもいないで、閑散としていたが、ここは、”ボストン展”が閉幕間際だったこともあるが、日本人で溢れかえっていた。
ボストン美術館には5万4千点の、浮世絵を中心とした日本版画コレクションがあるそうだ。そのうち、今回は”錦絵の黄金時代/清長、歌麿、写楽”のテーマで厳選された140点が広尾にお里帰りしている。
展示室に入ると、いきなり鳥居清長の大判錦絵”仲之町の牡丹”に度肝を抜かれる。今、摺ったばかりと見紛うほどの鮮やかな色彩である。それ以降もそうだが、よくここまで、わが娘たちをうつくしく、大事に育ててくれたと、ボストン里親に御礼をいいたい(笑)。清長の作品には歌舞伎役者をモデルにしたものが多い。二代目市川高麗蔵、二代目市川門之介、三代目瀬川菊之丞、五代目団十郎とか。市川亀次郎さんが好きなわけだ(テレビの展覧会紹介に出演していた、浮世絵コレクターでもある)。加えて、遊女や芸者風俗を描いたもの、子供の五節句の遊びを描いた”子宝五節遊”などもある。ぼくの好みとしては八頭身美女がたくさん遊んでいる絵かな。
そして、歌麿。モデルがバラエティーに富んでいて面白い。”忠臣蔵七段目”など歌舞伎ものもあるが、それらはone of them で、”浪速屋おきた”、高しまおひさ”など評判町娘、”青楼遊君鏡”、”青楼十二時シリーズ””松葉楼・・”など遊女、”四季遊花之色香””春の行楽”、”大川端夕涼み”などの風俗、”台所” ”煤掃き” ”覗き”などの日常の風景など、まるでルポライターのように(汗)、市中を歩きまわり観察している。妖艶からほのぼのまで、様々な表情をした女、男、子供を描いている。ぼくのような素人にも楽しめる作品が多いので、三絵師の中では一番好き。
写楽は、東博でも始まっていたはずだが、大震災の影響で、5月に順延されている。ここでは、”市川男女蔵の奴一平”など大首絵が6点、残りが全身の役者絵である。似顔絵が好きな方なので、楽しめた。顔の表情が面白い、口をひんまげたところをちょっと真似していたら、隣のおばさんが変な顔をしていた(汗)。コロッケさんならうまく真似るだろう。
第4章は三大絵師をとりまく大家たち。勝川春章、北川重政、鳥文斉栄之、歌川豊国らの作品がずらり。栄之の八頭身美人が画面いっぱいに並んでる大判錦絵がいくつもあり、とても華やかだった。豊国の”調布の玉川”(6人の美女が川で布を洗う風景)なんかも、良かった。子供の頃、水浴びにいった辺りだ。
めったに買わない(重いので)、図録を買ったので、ときどき見ては楽しんでいる。