■□そのほかあれこれ
税金の分納や減免、国保料が払えないという方は大勢こられました。国保料は法的には二年以上さかのぼって徴収できないのですが、市の窓口に納税相談に行くと「古い分から先に払ってください」と言われるので印鑑を押して了承する人が多いのです。そのときに「二年前の分から払います」と言えばそれ以前の分はチャラになり、そうして助けた方も少なくありません。市の国保会計上は「未集金で損金」として処理されるので法律違反ではないのです。分納で払える分だけ払う手続きを取るしか仕方がありません。
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二〇〇六年六月~七月にかけて 伏見区竹田の拘置所からはがきが何度か来ました。保護司をしているわけでもないのに…。差出人は一人暮らしの老人で、酒を飲んで近所の方を困らせる人で、かかわらないほうが身のためだと近所の人もほとんど声もかけません。さびしいのか、何かあると夜中であろうが、早朝だろうがお構いなしに私を訪ねてやってくる人でした。彼の社会に対する抵抗なのかもしれないと、話し相手になっていました。飲みすぎたのかストレスがたまり過ぎたのか、とうとう傷害事件の一歩手前までいってしまい警察に捕まったのです。はがきの内容は、「冬着のまま来たので夏服がなく困っている。持ってきてほしい」というものでした。私は、拘置所に実際に行ったのは初めてです。手続きも結構面倒で、門を入るときから監視されているような感じで何度も行きたくない場所でした。
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自転車、バイク、自動車…交通事故処理の相談はずいぶんたくさん受けました。相手からのひどい要求には、簡易裁判所の「調停」を活用します。無茶な要求をしてくる人は、裁判所とか警察が苦手で嫌いな人が多く、そこをうまく使うとたいがいおとなしくなるものです。
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「おばあちゃんにと思って一五万円する羽毛布団を買ってしまったんですけれど、やっぱり高いので返せないのでしょうか?」
「いつの話です?」
「昨日です」
「布団屋の住所わかりますか?」
「はい」
「断りの手紙と、私の名刺をいれて、郵送料は相手の着払いにして送ってあげる。布団屋に対しては、 文句があっても苦情は、大橋に連絡せよと書いておくのでもう心配せんでもええで! その分おばあちゃんに服でも買うたげたらええわ!」
クーリングオフをするのにも不安でいっぱいという相談者にはこんな対応もしました。
■□気をつけよう、議員をねらう落とし穴
生活相談は、うまく解決しないこともあります。紹介した弁護士が、依頼者の思うように動いてくれず長期間かかって、 しかも満足な結果が得られないこともありました。相談者から 「君の責任ではない」と言っていただいても、紹介した者としても肩身の狭い思いをすることがあります。
まれなことですが、家を買ってくれる業者を紹介してほしいという相談もありました。
気をつけなければならないのは売買が成立したときに、 業者がお礼を出そうとすることです。もらえば法律違反。私は、その分を売主に渡してくださいと言って断っていました。
議員を抱き込むために、また、共産党を傷つけるために、わざと引っ掛けてくる人もいることに注意しなければなりません。共産党のカンパにいただきますと業者に領収書でも持っていこうものなら、法律違反の証拠を残したことになります。業者が「先生、今度一回飲みませんか」と誘われても断るべきです。どこに落とし穴があるかしれないのです。
■□社会に目を向けてもらい自立を援助する
弱者に冷たい今の世の中では、まじめに一生懸命生きてきた人でも、ひとつ歯車が狂えば死の一歩手前まで直通なのです。事故や病気、職場の解雇、家族の問題などに直面して、ちょっと生活基盤が揺らいでくると、連鎖的にいろいろな困難が押し寄せてくるものです。以前、年金受給者の年齢調査で、「白骨化」して生きていたら一五〇歳になるのに、ほっておかれたというニュースがありましたが、生きている人はもちろんのこと死んでからも、みんなが普通にお墓に入れるような社会にしなければならないと思いました。
私は、相談に来られた方の問題が解決するまでの間、みんなが良くならなければあなたも良くならないので、自分のこととともに、少しは他人のことも考えられるようになろうと話をします。相談に来られた方が、問題の原因に目を向けて、立ち向かう意欲をもてるよう援助することが大事だと思います。そして、世の中に目を向け、社会の不条理を解決するために、ともに歩む人になっていただきたいと思っています。
生活相談を受けた立場の者としては、相談内容の早期解決と、相談者自らが、毎日の生活のことをよく考え、強く生きる人になっていただくよう援助するのが「名人の技」であると思います。