<チャイナインサイト>
限韓令の解除で韓中関係は回復するのか(1)
韓中修交から今までの韓中関係は経済的協力関係を中心に発展してきた。THAADで韓中関係に亀裂が生じるまで経済領域での両国間の協力は順調だった。このため両国間の衝突的要素に対する積極的な管理が十分でなかったのも事実だ。経験的にみると、韓中関係の4大衝突要素は▼北朝鮮核問題▼韓米同盟▼韓中非対称関係▼反中・嫌韓感情--だ。
北朝鮮核問題にどう接近するかをめぐっては韓中間の調整がうまくいくこともあったが、隔たりを見せることも多かった。中国は韓米同盟について絶えず問題を提起した。特に韓米同盟が北朝鮮だけを対象とするのではなく、米国が「中国の浮上」を抑止する戦略の一部なのかどうかが論争の対象だった。中国は韓国で政権交代があるたびに「確認」作業をした。
◆非対称:誰が誰をさらに必要とするのか
非対称関係と反中・嫌韓情緒は時々メディアの注目を受けたが、その深刻性に対する認識は十分でなかった。韓中関係が平等というよりも中国側に傾いた非対称関係に徐々に変わってきたのは、隔世の感を感じるほど中国の地位が高まったことによる両国関係の変化が根底にある。1992年の修交当時には似ていた両国の経済規模は、2018年になると中国が韓国の8倍にのぼるほど格差が広がった。韓国が中国を必要とする程度と中国が韓国を必要とする程度の差がさらに拡大した原因だ。韓国大統領の特使に対する中国指導者の冷遇が論議を呼ぶのもこれと無関係ではない。正さなければ「ニューノーマル」として固まる。これと共に韓米同盟問題など韓国と主要友邦の関係悪化、そして世界舞台で韓国の経済地位の低下は、中国が考える韓国の価値をさらに落とす。
韓国での反中感情と中国での嫌韓情緒は両国政府が公共外交を通じて努力しているが、その深刻性に比べて持続的な努力が十分でない部分だ。特に韓国に留学に来た中国人留学生が韓国社会での体験から反韓になり、中国に留学した韓国人留学生が中国社会での体験から反中になる現象は根が深い。この懸案が深刻である理由は、韓中関係の未来の世代がお互い好感を抱かないという意味であるからだ。
2019年の韓中関係は表面的にはTHAADを抜け出したが、実際にはTHAADの影の中で両国関係が前に進めず停滞した時期だった。けんか後に仲直りしたが依然としてぎこちない感情が残っている友人のように、熱くも冷たくもないぬるい関係だったといえる。米中貿易戦争の中で守勢となった中国が友邦確保レベルで韓国との関係回復に動くだろうが、これは中国が韓国に対する持続的な影響力行使レベルでTHAADカードを一時的に置いておくのであって、完全に手放すというわけではない。
実際、王毅外相の韓国訪問発表直後、中国の軍用機が韓国の防空識別圏(KADIZ)に無断進入した。一見、二律背反的な行動だが、中国の国益の立場で見ると合理的だ。中国はやりたいようにするという意志の表示だ。韓国に対する配慮はますます失われている。中国は韓中両国のうち関係回復を強く望むのは韓国の方だという点を知っている。非対称関係はさらに深まる可能性がある。
<チャイナインサイト>限韓令の解除で韓中関係は回復するのか(2)
2020年春と予想される習近平主席の訪韓の前後に、THAAD経済報復の象徴と見なされる中国人団体観光(クルーズ、チャーター機)と韓流文化制裁が改善される可能性がある。その時、韓国の代表的な韓流アイドルの中国公演再開が発表され、首脳会談のムードが形成される可能性もある。しかし「下方平準化」された韓中関係の「ニューノーマル」は大きな枠で持続すると考えられる。訪韓した王毅外相がTHAADについて以前のように韓国に批判的な態度を取らず「THAADは米国が配備した」と述べ、米国の責任とした点は示唆することが多い。中国にこれといったTHAAD解決の答えを出せない韓国に対し、中国が自ら答えを与えたのだ。THAAD問題は中国が望む時に解くという意味だ。
結局、韓中関係は「THAAD前」と「THAAD後」に分かれる。THAADに関する「3不」が「約束」か「立場表明」かという表現をめぐり韓中が葛藤する状況も、結局は中国が韓国に圧力を加えることができるカードだ。例えば米国が中距離ミサイルを韓国に配備すれば、中国は「3不違反」という可能性がある。韓中関係はまた悪化するはずであり、その波紋は確実にTHAAD当時よりも大きくなるだろう。1962年のキューバミサイル危機が話題に挙がる理由だ。
◆錯視:習主席が訪韓すればTHAAD葛藤は終わる?
2020年は韓中関係「回復」と「非対称化」が同時に進む一年となる可能性がある。従来の同盟の米国など主要国との関係が悪化し、中国側に外交の方向が傾く側面と、米中関係の悪化の中で韓国を中国側に引き込もうとする中国の計算が重なるからだ。米中関係の悪化が深刻になる背景の中で、韓国が同盟の米国との関係、隣国の中国との関係を調整する宿題は2020年にも続くだろう。
THAAD配備をめぐって韓国が見せた優柔不断な態度は、米国国内で生じている韓国の「中国傾斜論」と重なり、韓国は信頼できる同盟なのかという問題を招いた。韓国が結局、米国の望み通りにTHAADを配備したにもかかわらず米国の喝采を受けることができなかった理由だ。米国は韓国がTHAAD配備で中国の報復を受けている渦中にも「戦略的忍耐」をした。これは何もしないことを美しく表す言葉だ。友人が自分のために叩かれていても手を後ろに組んで眺めているのと変わらない。
これは米中の間でのポジショニング戦略について韓国がもう少し深く悩む必要があることを示唆する。単に米中間の機械的な中立や、「米中ともに重要でありどちら側も選択してはいけない」という「賢い弁解」(clever excuse)の後ろに隠れてはいけない。周辺国の線引きは強大国の長い歴史的覇権行動様式だ。
最も懸念されるのは、こうした環境で韓国が選択できる戦略的オプションがないという点だ。これは韓国が米中双方から束縛を受けているというよりも、双方から戦略的疑問を受けている状況と重なり、韓国外交の困難を深めるおそれがある。総合的に見ると、韓中関係が回復して韓中間の最大障害物だったTHAAD葛藤が終わるように見えるのは「錯視」現象だ。米中葛藤が深まる過程で、中国が韓国に対する戦略的調整に出た側面が大きい。これは韓国がTHAADよりも大きく根本的、長期的な挑戦に入っているという含意になるのかもしれない。