最近のお風呂本は 短編小説集
ひとりの作家の作品を集めたもの あるテーマに沿った作品を集めたもの(猫とか旅とか) 時代小説や推理小説といったジャンルを決めたもの 女性作家に限った作品で構成されたものから これらを組み合わせたもの そしてなんでもありのフルコース的なものと 種類はいろいろとある
たまたま手にした『短編復活』(集英社文庫)が面白かったので 次に『短編工場』を買った
この「短編~~シリーズ」は人気があるようだが 『短編工場』(2012年)も2019年でなんと47刷
名前だけは知っているが読んだことのない著名な作家たちの 全くスタイルの違う作品に触れることができるのも 私にとっては新鮮な喜びだ
大きな感動を与えるというのとは少し違うが どれもきゅんとしたり 考えさせられたり
乙一の『陽だまりの詩』はSF風で 昔読んだ星新一を思い出す
人類が滅亡していく中 はっきりと死期のわかっている主人公は 自分を墓に葬るためのアンドロイドを作り アンドロイドにもその役目を認識させる
アンドロイドは彼と生活するうちに次第に人間臭くなり 毎日畑を荒らすウサギを追いかけていたが やがてそのウサギの死を経験することとなって初めて涙を流し 死とは喪失感と知る
出口のない深い悲しみを知って 自分を作った彼を恨んだアンドロイドではあったが やがて彼の死の時がやってきたときには・・・
脈々と続く人の生と死
人間とはそれを認識できる唯一の生き物
そして ちょっとしたどんでん返しのような結末が 短編小説の醍醐味として残されている
味が凝縮された 一粒の美味しいチョコレートといったところか