みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

がんを見つめる~戸塚洋二 最期の挑戦/『死の海を泳いで スーザン・ソンタグ最期の日々』

2009-07-05 17:19:53 | ほん/新聞/ニュース
昨日の続きで、伊吹山のお花を紹介しようと思ったんだけど、
パソコンの調子が悪くて、ネットワークがつながらないので、
画像の倉庫に入れない。

ともちゃんが見てくれたんだけど原因がわからなくて、
詳しい友人がやってきて、直してくれているところ。
で、この記事はレッツノートで書いている。
こうなると、PCのことがからしきダメなわたしはお手上げ。

前に送ってあったほんの紹介をすることにしましょう。

さいしょに、
今夜、BS1のハイビジョン特集で、
先日本を紹介した戸塚洋二さんのことが放映されるとのこと。
名古屋放送局制作の番組。
見逃した人には、来週の日曜日にも再放送される。

 ハイビジョン特集 「物理学者 がんを見つめる ~戸塚洋二 最期の挑戦~」

7/5(日) 後10:00~11:29 (全国放送)
7/12(日) 後4:30~5:59(再) (全国放送)

去年がんで亡くなった物理学者・戸塚洋二さん(享年66)。小柴昌俊博士のもとで、太陽や超新星から飛来する謎の粒子・ニュートリノを研究、めざましい実験結果で宇宙物理の常識を次々と覆してきた世界的な実験物理学者で、小柴博士に次ぐノーベル賞候補と目されていた。実験を通して生涯、宇宙の生と死に向き合った戸塚さんは、晩年、自分のがんを科学論文さながらに分析したブログ(インターネット上の日記)をつづっていた。ブログからは、戸塚さんが闘病に際しても常に新しい治療法や独自の解析に挑み続けた様子、そして客観的な科学の目を持って必死に「死の恐怖」と向き合ってきた様子が伝わってくる。「生きること、科学者であること」を最後の最後まであきらめなかった戸塚洋二さんの力強いメッセージを伝える。
【語り】広瀬 修子
【朗読】石橋 蓮司



2009-06-24 『がんと闘った科学者の記録』戸塚洋二・著、立花隆・編


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村上春樹が受賞したエルサレム賞を2001年にスーザン・ソンタグが受賞した。
このスピーチが収録されている「この時代に想う テロへの眼差し』で、
わたしはスーザン・ソンタグのことを知ったのだけど、
かのじょは2004年に、がんで亡くなってしまった。

今年になって、病気と闘って逝った、スーザン・ソンタグのことを、
息子のデイヴィッド・リーフが書いた本『死の海を泳いで』が出版された。

毎日新聞と中日新聞につづけて書評が出たので、
読んでみたいと思い、高島屋の自由書房で買ってきた。

 

人生で3度目の癌との闘いにより2004年暮れに亡くなるまで,ソンタグは死の荒海を泳ぎ続けた.その一人息子が,病いの告知から死に至る母親の壮絶な9カ月間を書きとめたのが本書である.余命いくばくもない病魔に犯された肉親にどう向き合うか,家族は何ができるかを問う渾身のノンフィクション.(解説=富山太佳夫)


読みはじめたら止まらなくなって一気に読んだのだけど、
迫りくる死を目前にしての、壮絶な生きざまが、胸に迫る。

もしわたしだったら…という問いを、幾度となく繰り返した。
読み終わってぼうぜん。重い荷物をどんと渡されたような感じ。
ちょっと言葉が出てこない。


■書 評 「死の海を泳いで スーザン・ソンタグ最期の日々」 [評者]大石 芳野(写真家)
[著者]デイヴィッド・リーフ著 上岡伸雄訳
岩波書店/ 1890円
中日新聞 2009.5.17

■生に執着する姿を赤裸々に
 批評家で作家のスーザン・ソンタグは、世界に影響を与えてきた一人である。とりわけ、母国アメリカのアフガニスタンへの攻撃やイラクでの戦闘に関しては大きな論議を巻き起こした注目すべき存在であった。この書は彼女が癌(がん)に冒されて亡くなるまでの九カ月間を、一人息子の著者が寄り添い見守り続けたルポルタージュである。

 ソンタグの著作の迫力を思い出せば決して意外ではないのだが、それでも生に対する執念に圧倒される。同時に死にざまの凄(すご)さでもある。著者は言う。「母が生きたように死んだということだ。つまり、死を受け入れようとしなかったということ。あれほどの痛みに苦しむようになってからも」
 患者や家族は不安のどん底にあって藁(わら)をも掴(つか)みたい心境のなかにある。医師のちょっとした言葉にも深く傷つく。この親子もそれを存分に味わう羽目になった。主治医はいきなり「骨髄異形成症候群」という病名を告げ、「この病気は、特に致命的な血液の癌」だと言った。呆然(ぼうぜん)としている二人に対して医師は彼らがまるで「村の名だたる愚か者の一族であるかのよう」な態度で臨んだという。
 そして彼女は生への欲求を強めると同時に、死への恐怖を激しく示した。「今にきっと不老不死の薬が」「長生きしたいのは世界がどれだけバカらしくなるか見たいから」などと言う母の目標は「生き続けること」だった。地獄のような苦痛のなかでひたすら生き抜きたいと願ったのだった。
 愛(いと)おしい肉親の死を目前にして、大きな悲しみと戸惑い、さらにのしかかるディレンマは誰にとっても決して他人ごとではない。
 人間とは何か、生きるとは、死ぬとは……この傑出した思想家にして、死の淵(ふち)にあって喘(あえ)ぎ苦しんだ姿が赤裸々に、しかし品格を持って綴(つづ)られている。人の生への執着とはこれほどまでのものかと深く考えさせられる。
--------------------------------------------------------------------------David Rieff  1952年生まれ。編集者を経てノンフィクション作家・政治アナリスト。
中日新聞 2009.5.17



 今週の本棚:堀江敏幸・評 『死の海を泳いで…』=デイヴィッド・リーフ
毎日新聞 2009年5月10日

 ◇母の強さと弱さ、その苦痛へのまなざし
 スーザン・ソンタグが骨髄異形成症候群(MDS)と診断されたのは、二〇〇四年三月のことだった。一九七五年に乳癌(にゅうがん)を、一九九八年には子宮肉腫(にくしゅ)を宣告されながら生還した経験のあるソンタグは、ほとんど治癒不可能と知らされたにもかかわらず、今回も生き延びることを信じて最期まで戦いつづけた。亡くなったのはその年の十二月末、享年七十一。本書は、九ケ月間におよぶ戦いを間近で見つめ、励まし、生きようとする彼女を支えてきた者の、鎮魂に満ちた回想録である、とひとまずは言えるだろう。
 著者のデイヴィッド・リーフは、犀利(さいり)な批評的散文と、無骨だが魅力的な小説の書き手として知られるソンタグの実子である。母親はわずか十七歳で結婚し、二十四歳で離婚した。彼女は一九三三年、息子は一九五二年に生まれているから、ふたりは二十歳も離れていないことになる。息子はのちに編集者となって母親の本を手がけ、やがて自身も書くことを選んで、政治アナリストとしても知られるようになった。ぎくしゃくした時期もあったとみずからも記しているが、それを乗り越えて、彼は渾身(こんしん)の力で最晩年の母親を支えた。
 なにしろただの母親ではない。十六歳のときの日記に、「私には自分がもはや生きていない日が来るなど想像もつかない」と、生きることへの強い執着を書きつけていたひとである。何があっても死を拒み、生き残ること。そのために彼女は、ありとあらゆる情報を集め、最新の治療法に身を委ねようとした。息子もまたそれにあわせ、「母を死の可能性と向き合わせまいとした」。しかし、予想された結末が訪れ、すべてが終わったあとになって、彼は、自分の選択が正しかったかどうか問いつづけることになった。
 ソンタグの実父は、彼女が四歳の時に中国で亡くなっている。再婚を選んだ母親の冷淡さとも、継父の明るさとも、彼女はうまく波長を合わせることができなかったという。アリゾナの町で、喘息(ぜんそく)に苦しみながら暮らしていた少女は、こうした負の環境を抜け出し、思わしくない確率をすべて打ち破って、「自分だけは例外になる」と念じ、またその可能性を信じるようになる。ニューヨークに出て、作家になること。そして、小説を書くことを彼女は夢見、実現していく。
 息子は、そんな途方もない意志の人が三度の病といかに戦ったかを、医師たちの言動をまじえて精緻(せいち)に記す。そのつど「根治的」な方法を選択していった母親の、どんなに叩(たた)いても割れない鉱物のような硬さに感嘆し、同時に、特定の方向から力を加えればたちまち壊れる弱さをも理解していく。
 その過程は、いわば母の再発見でもあった。見ないふりをしてきた、弱い部分をも認めること。自分の、ではなく、定冠詞のつく使命としての「仕事」をこなすために、愛や快楽を犠牲にしてきた母親との共闘を終えての息子の心は、どうにも収まらない。「母には、自分自身の死に方で死ぬ権利があった」。しかし自分は「いつでも嘘(うそ)をついていたように感じていた」と。
 ここに読まれるのは、母恋いに満ちた息子や妻思いの夫による、涙を誘う看病日誌の類(たぐい)ではない。ほとんど独白といってもいい自省の試みのなかには、母に対する激しい愛と、それに匹敵する絶望が、いらだちがまぶされている。ソンタグの著書のタイトルを借りれば、それはまさに「他者の苦痛へのまなざし」そのものであり、著者自身の苦痛へのまなざしでもあるのだ。(上岡伸雄・訳)
毎日新聞 2009年5月10日 東京朝刊



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コメント (2)
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