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みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

歴史と向き合う~部落・在日『差別と日本人』『和解のために』『対話の回路』『<民主>と<愛国>』

2009-07-08 06:00:00 | ほん/新聞/ニュース
辛淑玉さんと野中広務さんの対談、『差別と日本人』が刊行された。
新書版で薄い本だけど、内容は重くて、濃くて、深い。




辛さんが野中さんにインタビューする、という形ではじまり、
対談の合間に、辛さんの適切な解説が入り、差別の実態について、
「・在日」と呼ばれる人たちに対して
日本人がどのようなことをしてきたのか知ることができる。

それぞれが自分のことを語り始める、後半は圧巻である。

辛さんと野中さんの、声高に差別を告発するのではない語り口に、
差別を受けてきたひとの哀しみの深さを、いたみとともに感じる。

差別と日本人 [著者]野中 広務・辛 淑玉 著
■・在日むきだしの問い

角川oneテーマ21/ 760円
[評者]佐川 光晴(作家)

 ダイアローグの名に相応(ふさわ)しい、まさに圧巻の対話である。
 野中は元自由民主党幹事長、辛は著名な人材育成コンサルタントであり、「まえがき」で各々(おのおの)が述べているように、野中は「出身者」、辛は「在日」である。
 ともに社会的に不利な出自を公言しながらも、会話はすぐには噛(か)み合わない。「民」とはいえ日本人男性であり、長く政権与党の中枢にいた野中に対し、辛は在日の女性として歯に衣(きぬ)着せぬ批判を加えていく。さらに対話の区切りごとに辛が書く解説も辛辣(しんらつ)としか言いようがない。
 《野中氏の語る「」には主体的な政策理念や解放理念ではなく、なぜかいつも利権がらみの話がでてくる。に住むわたしの友人の一人はそのことについて、「彼は自民党だったから、良質の運動家は彼には近づかなかったのではないか。だから、具体的な差別の現場で闘っている人との接点が少なかったのではないだろうか」と語った》
 驚くべきは辛の舌鋒(ぜっぽう)の鋭さよりも、野中の懐の深さだろう。これほど根源的な批判を差し挟まれながらの対話を公表するだけの度量のある作家・評論家はまずいない。
 辛も指摘する通り、野中の行動は、沖縄の基地問題をはじめ、「もめごとの処理」の域を出ない場合が多かった。しかしまた、野中ほど人権問題に果敢に取り組んだ権力者もいない。麻生・安倍・小泉等の歴代総理大臣や石原慎太郎と比べたとき、その差は歴然としている。
 なにより出身者だと公言したために野中と家族が被った被害は甚大だった。それは二十歳のとき本名を名乗ることにした辛も同様であって、妻と娘という同伴者は失わなかった野中にむかい、自らの家族や夫との関係を語る辛の言葉はあまりに痛切である。
 差別の歴史も詳述されており、広く永く人々に読み継がれるべき一冊である。
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のなか・ひろむ 1925年生まれ。83年衆院初当選。官房長官、自民党幹事長などを歴任し2003年に議員引退。現在は社会福祉法人理事長。 しん・すご 1959年生まれ。人材育成コンサルタント。著書に『悪あがきのすすめ』など。
(中日新聞 2009.6.28)



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と在日…噛み合いそうで噛み合わない対話~『差別と日本人』
野中 広務・辛 淑玉著(評者:朝山 実)

(日経BP 2009.6.18 )

「三国人発言」をはじめ、石原慎太郎都知事はどうしてこんなにも差別発言を繰り返すのか……。あきれて憤る辛淑玉氏は、対談の相手である野中広務氏もまた疑いなく、自分に同調するものだと思い込んでいた。しかし、
「昨夜石原と飯を食ったんですよ」
 と、返され、
「え? なんで石原さんと御飯食べられるんですか。なんで!?」
 辛氏が思わず問い質す場面は、ある意味この本のクライマックス部分にあたる。
 野中氏に対して、辛氏は差別の痛みを分かち合うことのできる人間との認識があるからこその、「え?」だ。
 あの石原都知事となごやかに食卓を囲む場面が想像つかず、「どうして?」を連発、激しく詰め寄る辛氏に、野中氏は、
「あんなのボンボンですよ」「あれはまたいい男だから」「彼にも、僕のように忠告をできる人間がおらんといかんでしょ」
 メシを食ったぐらいのことでなんで大騒ぎするのか。不思議だというふうに、野中氏が首を傾げる様子が目に浮かぶ。同時に、周到な根回し、仇敵であろうとも必要とあれば手を結び、川底をさらうかのような情報収集で弱みをつかんでは、政敵を震え上がらせた辣腕政治家の一端が覗き見える場面でもある。
 本書では、総理に推す声が高まりながら、これを辞退し、2003年に政界から引退したものの、いまも存在感を示す野中広務をゲストに、「在日朝鮮人」の辛口コメンテーター・人権問題活動家として知られる辛淑玉がホストとなって問いかける。対談のテーマはずばり、差別。

被差別の話をさせたいのに…
 自民党の総裁選に出馬すれば、過去を洗いざらいネタにされる。野中氏がいちばん気にかけたのは、自分が被差別の出身であること。これまで公式の場で二度、明らかにしてきたものの、一般にはそれほど知られていたわけではなかった。
 しかし、一国の首相を争うともなれば、メディアが放っておくはずがない。自分はよしとしても、家族に被害が及ぶのは避けたかった。明言はされていないが、それが理由だとささやかれてきた。
 だから、この問題に正面から切り込んでいった対談集は、貴重である。ただ、内面を赤裸々に吐露したものを期待すると、前半は失望させられる。
 辛氏は歴史をひもとき、被差別の出身者としての痛みを語らせようとするが、野中氏は自分を政治の世界へ向かわせた一件(大阪鉄道局に勤務していた若かりし頃、弟のように面倒をみた同郷の後輩が、陰で「野中はだ」と吹聴し、野中氏の昇進をねたむ職員たちが騒ぎだした。この直後に大鉄局を退社している)以外、差別を受けたことの怒りは、辛氏のようにストレートに表明しない。
 対談は雑談トークで和やかに盛り上がるものの、テーマとかかわる話になると野中氏の口は重たく、失速しかかる。
 噛み合わなさをフォローするかのように、辛氏はインタビュー本文と別ワクで、読者に差別に関する理解を求めるべく、資料を提示している。
 たとえば、1923年に発生した、死傷者20万2436名、行方不明者4万人を超えるといわれる、関東大震災(※数字は本書より)。「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった流言蜚語を発端に、自警団などによる朝鮮人の虐殺が行われたが、犠牲となったのは朝鮮人だけではなかったことをあげている。
 当時、千葉の福田村(現在の柏市)では、香川県から薬の行商にやってきていた女性や幼児を含む日本人10人が、竹棒やとび口を手にした自警団の人々によって惨殺された。彼らのうち8人が3年から10年の懲役刑に処せられたものの、昭和天皇即位による恩赦で釈放。しかも取調べにあたった検事は、「彼らに悪意はない」と情状酌量を求め、殺害の中心人物の一人は後に村長となった。


以下は、ここ1年のうちに刊行され、紹介したいと思っていて、
下書きに入れてあった本。
一冊ずつが、読み応えがある本で、ひとまとめにする本ではないけれど、
歴史と向き合い、差別を考えるには、よい本だと思う。
関心をもたれたら、読んでほしい。




 
 
  
 

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