みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

DVDブック 上野千鶴子「生き延びるための思想」/政治時評:「強さ」に傾く有権者、それでいいのか

2011-12-18 14:15:03 | ジェンダー/上野千鶴子
東京に行った日はWAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)の会議があって、
上野さんから出たばかりの「上野千鶴子 東京大学退職記念特別講演 生き延びるための思想」
のDVDブック(講談社)をいただきました。

特別公演は東京まで聴きに行ったのですが、胸に響く内容で、
『週刊読書人』に掲載された文字では読んでいたのですが、
生の上野さんの講演が再現されていると思うと、
手に取っただけで、ドキドキわくわくします。

  
パッケージも写真もとても素敵。
オマケに公演当日の上野さんのインタビューの冊子もついています。

   

本屋さんでも売っているそうですが、上野さんが理事長をされている
WAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)サイトからご注文いただけるとうれしいです。
「DVDブック 上野千鶴子 生き延びるための思想」ご注文葉こちらから。

 上野千鶴子最終講義ー生き延びるための思想
あの大事故の責任は誰にあるのか。誰も責任を取ろうとしません。国策として推進された原発に対して、政府も財界も、当時の与党も反省しようとしません。謝罪の声も聞かれません。
それどころか東電の経営者は現状の体制を維持すると決め、株主も原発の継続を承認しました。継続するならば、それに伴う一切のリスクとコストを背負うべきだと私は考えます。
被災者の方、風評被害を含む全ての被害者、原発事故さえなければ生活を変えずにすんだすべての人々に、賠償と保障をする覚悟をしてほしい。
 このリスクとコストを背負わずに済むであろうと、タカをくくっている人たちがいるのでしょう。このように責任者の不在に私は収まらない内怒りを感じます。
 私どもは、これだけ高くつく授業料を払っても、経験から学ぼうとしない。この現実の世界に対する無力さと非力さが、私の胸を噛みます。…
今回の事故は広島・長崎に次ぐ三度目の被爆と受け止める人がいます。
原発の絶対安全神話は、神州不滅神話と似ています。両方とも思考停止と愚かさが破局を迎えます。
原発は「想定外のリスクは考えない」という思考停止でした。あの戦争は「負けることは考えないようにする」という思考停止でした。
私たちは今、自分の思考停止と愚かさのツケをしたたかに払わされています。原発と戦争は同じ国策として進められたものです。しかもその破局に対して、だれも責任を取ろうとしない。高い授業料を支払いながら、その歴史から学ぼうとなしない点でも、とても似ています。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(『週刊読書人』8月5日号「上野千鶴子震災復興支援公開講演 生き延びるための思想」より引用) 


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上野さんは本を刊行されたりインタビューに出たりと
退職されてお暇になるかと思いきや、以前にも増して
いそがしくお仕事されています(というふうに見えます・笑)。

昨日は、朝日新聞の【政治時評2011】にこんな大きな記事が載りました。
そうだそうだと共感して読んでいったら、
「・・・究極の当事者主権は国民主権。つまり自治です。
強いリーダーシップに委ねない。自治の権利を譲り渡すのはやめようということ。」ときて、
最後は「地方議会から変える」「自分と同じ身の丈の(市民派)政治家を送り込む」、
というフィニッシュできめられていました。

ぜひお読みになってください。

   
   

【政治時評2011】「強さ」に傾く有権者、それでいいのか 上野千鶴子さん
2011.12.17 朝日新聞  

 政治はいまだ男性優位の世界だ。でも、超高齢社会になり、老後や介護の不安が広がる日本において、おとこ目線で将来を考えてもうまくいくはずもない。12月の政治時評は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)理事長を務めるジェンダーの論客、上野千鶴子さんと東大教授の宇野重規さんが、強いリーダーシップに有権者が引きつけられる政治のいまを論じ合う。
 (ホスト 宇野重規さん 東京大教授〈政治思想史〉)

 宇野 政治に立ち直ってほしいという期待を抱いて、政治時評で対談を重ねてきました。男性中心の政治を批判的に見てこられた社会学者として、現状をどうみますか。
 上野 11月27日、大阪市の男女共同参画センターでシンポジウムがありました。橋下徹さんが大阪市長に当選した日です。出席者が開口一番、「閉館記念シンポになるかも知れません」と。橋下さんが大阪府知事になったとき、外郭団体整理の一環で決定したのが大阪府男女共同参画センターの売却。大阪府で起きたことは大阪市でもと予想できます。

 宇野 いわゆる「橋下現象」は大阪だけの問題ではありませんね。
 上野 日本ではいま、強いリーダーシップに対する追い風が吹いている。閉塞(へいそく)感を打ち破る改革者として石原慎太郎東京都知事、河村たかし名古屋市長を押し上げた力です。小泉純一郎さんの郵政選挙のときの旋風と同質のものでしょう。

 宇野 閉塞感と不安にかられて、魅力的に見える人に全部放り投げる。その人の破壊的な言動に快感を覚える。それが橋下さんらが支持されるゆえんです。
 上野 そう。でも、追い風は吹き荒れるが、その方向は問いません。その意味で強いリーダーシップへの期待は思考停止や白紙委任につながりかねません。“ハシズム”の風には不吉な予感がします。
 そのツケを有権者は散々払わされてきました。郵政選挙で白紙委任状を与えたせいで、規制緩和につぐ規制緩和がおこなわれ、格差が広がった。若者や女性は、自分にしわ寄せがくる政策の推進者を支持した。最大のツケは原発事故。権力者任せでやってきた結果がこの惨状です。ここまで高い授業料を払って日本人が学ばないとすれば、どうすればよいのでしょう。
     *
 宇野 強いリーダーシップに期待するのは既存の政党がだらしないから。特に罪が深いのは民主党です。政権交代はよかったが、その後、期待を裏切り続けています。もともと女性には不人気な政党で、女性票が流れ込んで政権交代を果たしたが、再び支持が失われています。
 上野 自民党も女性には人気がありませんでした。地域の権力構造に根をおろしていた自民党と同様、民主党も連合という既存の大組織にどっぷり漬かっている。「オヤジ政党」というのは一緒です。あなたが言う女性票の動きは、女と若者の票が浮動票として動いているということを意味するに過ぎません。
 1989年の参院選で土井たか子さんが率いる社会党が躍進した。それまで女性票は家族票の一つとして動いてきたが、戦後初めて個人票として動いた。そんな分析を政治学者がしています。あの時から女性票が組織票から浮動票になったんです。

 宇野 でも、社会党、その後の社民党は、そうした動きをとらえ損ねて弱体化していった。
 上野 その通り。市民派を引きつけられなかったのは社会党の責任です。村山富市政権で自衛隊を容認、日米安保も受容し、政権から降りたあと、党名まで変えた。地方支持を支えていた最良の人たちを失いました。自民党によって骨抜きにされ、自民党と「第二自民党」の民主党の二つの選択肢しか有権者にはなくなりました。この歴史はきちんと反省してもらわないと。

 宇野 民主党は、税と社会保障の一体改革でも立ち位置が問われています。
 上野 現在の改革論議は小手先の微調整ばかりで、抜本的なビジョンがない。経済成長のもと、日本型雇用と近代家族のペアで支えられてきた社会システムはもう終わったんです。年齢、性別にかかわらず、働く意欲と能力のある人は一生働き続ける。ただし将来や人生を一つの場所に預ける働き方はしない。そうなるためには、日本型雇用に崩壊してもらわないといけません。

 宇野 既存のシステムが中途半端に残っているから、すがろうという人が出てくる。
 上野 社会資源として正規雇用が希少財化しているのに、いす取りゲームに参入しようという若者は後を絶たず、参入できた男をゲットしようとする婚活もなくならない。高度成長期型の世帯モデル、「社畜とDV妻」のカップルです。そこに戻りたいのか。本音を聞くと、若者だってイヤだという。だけど、正規雇用を既得権として持っている人びとが手放そうとしないから、旧モデルが延命しています。
 手放さない人たちの代表が連合のオヤジ労働者。政官財による共謀シナリオの労働ビッグバンにも合意しました。そのなかで非正規雇用に追いやられ、最も大変な目にあっているのが若い女性たち。男女雇用機会均等法も男女共同参画社会基本法も不況のさなかでは女たちを守ってくれなかった。家事手伝いという扱いで失業者扱いもされない。非正規雇用の女性たちに、連合は手を差し伸べようとしませんでした。

 宇野 既得権をどうするかという問題のはずなのに、高齢者ばかり手厚く保障され、若者が見捨てられているという世代間対立ばかりがあおられている気がします。
 上野 未婚の非正規雇用者が増えたのは、正規雇用の親たちにパラサイトしているからという共依存の関係があります。でも、親の介護が必要になれば、それも成り立たない。税と社会保障の一体改革は本来、家族に依存せずに生きていけるようにしようというもので、世代を超えて福音なはずなんですよ。
     *
 宇野 民主党政権はどうなりますか。来年は総選挙ぶくみですが。
 上野 どうでしょうね。政権交代は期待外ればかりではない。政官の癒着で隠されていた情報が出てきたことは評価したい。沖縄密約が明らかになったし、格差の存在を証明する貧困率のデータも表に出てきた。自民党政権は「日本に貧困はない。だからデータもない」と言ってきました。「3・11」や原発事故の対応も自民党政権なら隠蔽(いんぺい)体質がでて、さらにひどかったと思う。東京電力をもっと守ったでしょう。社会学者の大先輩の井上俊さんが言う悪夢の選択、レス・ワース(よりひどくない)の選択という見地からすると、民主党政権のほうがまだましだったと思ってよいかもしれない。

 宇野 そこは同意します。政治というものは、つねによりましの選択をするしかない。しかし現状は、民主党も自民党もどちらがましかの選択肢さえ示せていません。
 上野 われわれが論じている政党の差は、せいぜい50歩と51歩なんです。ダメだからといって、すべてをゼロに戻すべきではない。メディアや知識人が失望をあおる言説を語っては困ります。
 政党や政治家への過大な期待を、有権者は捨てたほうがよいと思う。小選挙区制とは政治家をコマとして使うシステム。コマはしょせん消費財です。そこそこの政治家、自分と同じ身の丈の政治家を送り込むのが民主主義の証しです。ベストではないベター、ワーストではないレス・ワースな着地点を探る。小粒な政治家の小粒な議論でいいじゃないかと。ついでに言うと、政治家のコマ化を強めたのは選挙制度改革で、それを推進したのは政治学者ですよ。

 宇野 われわれ政治学者の多くが政権交代の大義を支持し、小選挙区型の英国モデルを支持したのはたしかです。
 上野 政治学者にいま、はっきり言ってほしいのは、政党交付金を廃止せよということ。復興増税をいうならまず、政党交付金を返上せよ。定数削減より先です。
     *
 宇野 身の丈の政治家には賛成です。それで社会保障や雇用問題、原発、民主主義のありようという課題に向き合う。キーワードになるのが「当事者主権」だと思います。
 上野 究極の当事者主権は国民主権。つまり自治です。強いリーダーシップに委ねない。自治の権利を譲り渡すのはやめようということ。「代議制民主主義は政治参加の手法ではなく、政治参加を抑制する手法だ。数年に1回の選挙でしか参加できず、意思決定を代表者に委ねるのはおかしい」という若手の政治学者、山崎望さんの議論に納得しました。民主主義のなかで直接投票や住民投票をどう位置づけます?

 宇野 数年に1回の選挙で民主主義と言えるかというのは、ルソー以来の批判です。代議制民主主義は民主主義の一つでしかない。
 上野 日本の選挙で、住民投票に最も近いのは首長選挙だと言われています。で、その結果が橋下さんの圧勝です。どう見ますか?

 宇野 国の政治がなかなか変わらないのに対し、地方レベルだと劇的に変わる可能性がある。変革への願望が首長選挙で噴出する瞬間があるんです。デマゴーグが登場する恐れもあるが、だから地方に任せるのは危ういという議論にはくみしたくない。地方議会を機能させて首長との間に新しいチェック・アンド・バランスをつくるべきで、いまの動きを止めるべきではないと思います。
 上野 地方議会から変える、か。いいですね。それならなおさら小粒で身の丈の政治家でいいじゃないですか。過度な期待はせず、イヤなら自分がやればいい。定数削減ではなく、議員報酬を削減し、パート議員にすればいい。政治参加のハードルを下げるのが民主主義です。
 (構成・吉田貴文 撮影・遠藤真梨)
   ◇
 うえの・ちづこ(WAN理事長) 48年生まれ。専門は社会学、女性学。ジェンダー問題から社会福祉、高齢社会、市民運動まで幅広いテーマで論考を発表。今年3月に東大を退職。著書に「ケアの社会学」「おひとりさまの老後」など。 


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12月17日(土)のつぶやき

2011-12-18 02:47:04 | 花/美しいもの
08:47 from Tweet Button
水曜日デモ--ソウルでの1,000回 岡野八代 | WAN:Women's Action Network http://t.co/MGpNb43L
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