みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

奪われた私:DV防止法10年/1見えない暴力、傷深く/2別れぬ理由「怖いから」

2011-12-21 17:00:58 | ほん/新聞/ニュース
「DV防止法」が施行されてから今年で10年になります。
「DV(ドメスティック・バイオレンス)」という言葉と暴力が知られるようになりましたが、
だれにも言えずDVに苦しんでいる人はまだ多いのではないかと思います。

昨日から毎日新聞が、「奪われた私:DV防止法10年」という連載をはじめました。
昨日今日と連続で載って「つづく」となっているので、まだ続くと思います。

初回は信田さよ子さん、今日はNPO法人「ウィメンズネット・こうべ」が載っていて、
げんばを丹念に取材したとても良い記事なのですが、
毎日新聞のリンクは数日で消えてしまうので、消えないうちに紹介します。

 奪われた私:DV防止法10年/1 見えない暴力、傷深く  

◇人格否定、罵倒、無視… 相談しても理解されず
 志村まさ代さん(37歳、仮名)は今、大手メーカーに勤める夫(38)と離婚調停を進めている。
 恋人同士だった12年前、「ミニスカートをはいてほしい」と強要され、無理やりスカートの裾をはさみで切らされた。異常な言動に戸惑い、結婚を決める際は迷ったが、「優しい時もあるし、私が努力すれば何とかなるのでは……」と思った。
 だが一緒に暮らし始めた直後、夫は「パーマや友人との会話は禁止」などと命じた。まさ代さんが友人の結婚式に行こうとすると、「俺の飯はどうなる」「つまらないやつと付き合うな」と怒鳴った。自分の思い通りにならないと、まさ代さんの髪をつかんで部屋中を引きずり回し、真冬の深夜、暖房のない納戸に「反省するまで出るな」と押し込めた。
 それでも「100%家事や育児をこなせば夫は怒らないだろう。自分の努力が足りないのだ」と思った。
 しかし、3、4年前、「仕事を辞めろ」と迫られた時、「私の人生、これでいいのか」と疑問がわいた。長男(8)と長女(6)はいつもおどおどし、母親に強く甘えるなど赤ちゃん返りするようになっていた。
 思い切って地元の家庭支援センターを訪ねた。だが「男の人は子どもみたいなもの。3人育てるつもりで頑張りなさい」と言われただけだった。不眠が続き、突然涙が出たり、気力もなくなった。心療内科に通ったが、医師は薬を処方するだけ。離婚調停のために取り寄せたカルテには、医師に訴えた夫の暴力について何の記載もなかった。
 今年2月、必死の思いで子どもを連れ、民間のシェルターに駆け込んだ。助言を得て離婚調停を申し立てたが、裁判官からは「夫婦のいざこざに子どもが巻き込まれてかわいそう」「私は転勤の多い仕事だから、妻は仕事を辞めた。当たり前のこと」と言われた。
     *
 身体的暴力が明らかでも、専門の相談員や司法関係者の中にはDV(ドメスティックバイオレンス)と認めない人がいる。これが言葉や態度による支配など精神的暴力となるといっそう困難だ。
 「体に暴力をふるわれていれば、20年も一緒にいなかった」と、山口みのりさん(47歳、仮名)は話す。
 24歳で大学の同級生だった夫と結婚した。みのりさんは教師だったが、家業を継ぐ夫のため退職した。
 夫は食事が気に入らないと、「なんでこんなものを作るんだ」と何時間も責め立てる。「でも……」などと一言でも口答えすれば、「うるさい!」と怒鳴ってテーブルをたたく。2週間以上、一切口をきかず、みのりさんが読んでいる本や友人らを罵倒し、「おまえはおかしい」「バカだ」と日々繰り返す。
 「何を、どのタイミングで切り出すか、よく考えてから夫に話さないとすぐに攻撃された。とにかく怖かった」という。だが、夫は一人娘を溺愛し、友人や親戚からは「家族思いのいい夫」と評価されていた。
 4年前、みのりさんは持病のぜんそくが悪化し入院。不眠症やうつ傾向も出た。夫の帰宅時間になると体が震え、心臓がバクバク鳴った。そんな時、ふと手にした本に「精神的ハラスメント(暴力)」の記述があった。
 「(相手が)口をきかない」「家の不出来を次々に指摘する」「いったん始まると数週間から数カ月続く」--。自分の家で起きていることと一致した。
 すぐに地元のDV相談センターを訪ねたが、「身体的暴力がないと対応できない」と言われた。その後、離婚裁判を起こした。精神的DVを訴え、友人7人の意見陳述書や医師3人の診断書を提出したが、「すべて却下され、被害妄想とされた」。
 今は実家に戻り、週2回、高校の非常勤講師を務める。しかし娘には理解されず、会えないままだ。朝晩の抗うつ剤と睡眠薬は欠かせない。「実母や妹もいまだに理解してくれず、つらい」と話す。
 内閣府が今年2~3月に実施した「パープルダイヤル-性暴力・DV相談電話」には約2万3000件の相談が寄せられた。89%は女性からで、暴力に関しては精神的暴力(75・9%)が身体的暴力(50・9%)を上回った。
 原宿カウンセリングセンター(東京都渋谷区)の信田さよ子所長は「身体的暴力はわかりやすいが、精神的なものは見えにくく、なかなか理解されない。本人もDVと気づくまで時間がかかるため、精神的ダメージがより大きくなる」と話す。
     *
 DV防止法が施行され今年で10年となる。夫婦や近親者の間の暴力が社会の問題として認識されるようにはなったが、まだ十分に理解されず、恋人間の暴力「デートDV」など、新たな問題も浮上している。DVの被害に苦しむ女性たちの話を聞き、現状を探った。=つづく

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 ◇DV防止法

 01年施行。04、08年の改正で、身体的暴力だけでなく、精神的暴力や性的暴力も防止対象に含まれた。被害者の申し立てにより、裁判所は被害者や子ども、親族らへの接近禁止や退去などを命じる「保護命令」を出す。警察庁によると、10年のDV事案は3万3056件。被害者の97・6%を女性が占める。

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 ■DVの主な相談・支援機関

 ◇配偶者暴力相談支援センター
 DV防止法に基づき、被害者の一時保護などを行うセンターが各都道府県に設置されている。
 ◇DV相談ナビ
 (24時間。最寄りの相談窓口を音声ガイドで案内)電話0570・0・55210
 ◇デートDV110番
 (火曜18~21時、土曜14~18時)電話050・3540・4477
 ◇日本司法支援センター
 (法テラス・平日9~21時、土曜9~17時)電話0570・078374
 ◇警察相談専用電話
 (平日8時半~17時15分)電話#9110
毎日新聞 2011年12月20日


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奪われた私:DV防止法10年/2 別れぬ理由「怖いから」 

◇「交際中の束縛」愛と誤解 法の対象外、対策に地域差
 「そんなことして何になるの?」「バカじゃない」
 森由香さん(20代、仮名)は数年前、ある男性と付き合い始めて数カ月たったころ、何かに興味を持つたび、男性からけなされるようになった。「けんかして前の彼女をボコボコにしてやった」とも聞かされた。ある日、由香さんの携帯電話を勝手に見た男性は、別の男性からのメールを見つけて激高。由香さんの髪をつかんで殴りつけた。顔の骨が折れ、鼓膜も破裂。由香さんは裸足で逃げた。
 「今思うとあのころは毎日うつうつとして、無意識に彼の言動におびえていた」と話す。
 吉田遥さん(30代、仮名)は高校時代、他校の男子生徒と「ラブラブのカップル」だった。学校の休み時間も電話で連絡を取り合い、友達に「愛されてるね」とうらやましがられ優越感があった。彼とずっと一緒にいることが自分の幸せだと信じていた。でも本当はとても嫌なことを我慢していた。
 会うたびにセックスを迫られた。コンドームを使わないことも多く避妊もいいかげんで、毎月、生理が来るまで頭は不安でいっぱい。それでも「彼の要求を断る」という発想はなかった。「付き合えばエッチは当たり前」と思っていたからだ。
 20代でその男性と結婚したが、「お前は最低の人間」など言葉の暴力が激しくなり、ついに離婚。「互いに束縛するのが愛だと信じていた。人生の大事な時期を無駄にした」と遥さんは悔やむ。
   *
 交際中のカップルの間に起きる暴力は「デートDV(ドメスティックバイオレンス)」と呼ばれる。内閣府が10~20代で交際相手がいる(いた)1742人に実施した調査(09年3月公表)では、身体的な暴力や心理的攻撃、性的行為の強要を一つでも受けたことがある、と答えた女性は13・6%で7人に1人だった。男性の場合は4・3%。うち命の危険を感じた経験があるという女性は21・9%(男性は2・9%)に上った。
 デートDVの特徴は、相手を束縛して、支配すること。携帯電話の普及が束縛を容易にし、相手がメールにすぐ返信しないと怒ったり、異性のアドレスを強引に消去させたりする行為も広がっている。ただ本人も周囲も「束縛は愛されている証拠」と肯定しがちなため、支配されていることに気づかないのが実態だ。悩みを独りで抱え込む人も多く、公的機関に持ち込まれるケースはほとんどない。
 「デートDVが生まれる背景の一つに、メディアの中の誤った情報の氾濫がある」と、デートDVの防止に取り組む一般社団法人「notice」の竹内由紀子代表は指摘する。
 漫画の中では、好きな相手に突然キスしたり、強引に連れ去るなど相手の意思を無視した行為はロマンチックに描かれる。「特に恋愛=性関係という思い込みがすごく強い」と竹内さん。男女が付き合えば当然のようにセックスの場面になり、望まない妊娠や性感染症のリスクを知らせることはほとんどない。
 デートDVの被害者は「別れればいいじゃない」と思われがちだが、実際には簡単にいかない。内閣府の調査では、被害を受けた女性の35・9%が「別れたいと思ったが、別れなかった」と回答し、その理由を「相手の反応が怖かった」などとした。たとえ別れても、携帯メールで脅されたり、ツイッターなどで追跡され、数年たっても「追われている」とおびえる被害者も多いという。
   *
 「相手と別れようという時が危ない。そんな時は絶対2人で会わないこと。『別れたら死ぬ』と言うのも言葉の暴力ですよ」
 12月初旬、神戸市の神戸学院大で学生を対象に「デートDV予防啓発講座」が開かれた。NPO法人「ウィメンズネット・こうべ」の講師、柴田多恵さんが、束縛の定義や男女の役割の偏見、カップルが対等な関係を築くヒントを紹介。「みんな良い恋愛をしてね」と語りかけると、学生たちは神妙な表情でうなずいた。
 NPOや一部の自治体がここ数年、デートDVの予防活動に乗り出している。横浜市のNPO法人「エンパワメントかながわ」は07年から啓発講座を始めた。高校生の間で既に多くのデートDVが発生しているとして、1月からは県と連携し、若者向けのデートDV専門相談110番も開設。「彼が避妊してくれないので2度中絶し、3度目の妊娠をしている」「彼に車でひかれかけた」など深刻な被害が寄せられ、加害者側の男子生徒からの相談もあった。
 しかし現行のDV防止法は交際中のカップルを対象としていない。このためデートDVへの取り組みは地域間でバラツキが大きい。エンパワメントかながわの池畑博美・事務局長は「現在はデートDVの被害者に対し、支援団体や公的機関ができる範囲で何とか対応している。法律でカバーし、きちんとした受け皿を整えるべきだ。当事者が中高生や大学生の場合、学校や保護者との連携も欠かせない」と訴える。=つづく

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 ■デートDV危険度チェック

 ◇相手の暴力的態度を見分ける
□相手は「ブス」「バカ」など傷つく呼び方で呼ぶ
□他の用事で会えないと相手は「自分を最優先にしない」とふてくされる
□しょっちゅう携帯に電話してきたり、あなたがどこで誰と会っているか気にする
□あなたの携帯をチェックして異性の友人のアドレスを消すよう要求する
□あなたは相手を怖いと思うことがある
□相手はとても優しかったり、すごく意地悪だったりする(二重人格的)
□ケンカした時、怒らせるのはあなたが悪い、あなたのせいだと責める
□「おれ(私)のことが好きならいいだろう」と気の進まないことをさせる

 ◇自分の暴力的態度に気付く
□相手が自分の意見に従わないと腹が立つ
□相手の行き先、服装、することに、いちいち指示する権利があると思う
□相手がどんな人と話しているかすごく気になりイライラする
□「自分とあいつ(人や物)とどっちが大切なんだ」と言ってしまう
□腹が立つと、相手の目の前で物をたたいたり、大きな声を出す
□相手はいつも自分の言うことを聞くべきだと思う
□相手が自分のことを好きなら、嫌なことでも応じるべきだと思う
※一つでも該当すれば要注意。
 (ウィメンズネット・こうべのデートDV予防啓発講座資料より)
毎日新聞 2011年12月21日 


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