みどりの一期一会

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「エネルギー選択」の虚構/「浜岡」住民投票 熟した民意の表れだ/原発依存を「過半の国民が希望」

2012-09-02 21:02:42 | ほん/新聞/ニュース
昨日は「防災の日」でした。

南海トラフで巨大地震が起きると全国で30万人を超えると予想される
衝撃的な被害想定をまとめた報告が公表されたばかりなので、
各地で大震災や大津波の避難訓練をしたというニュースが流れました。

福島原発事故のように、地震や津波が原因で起きる原発事故を想定しての
訓練がされたというニュースはなかったように思います。
1年半前に起きた原発事故がかき消されていくような気がします。

そんな中、中日新聞のきょうの社説は、「エネルギー選択」の虚構。
脱原発依存や、政府や電力会社の言っていることの虚構をあばいています。

  【社説】「エネルギー選択」の虚構 週のはじめに考える  
2012年9月2日 中日新聞

 ことしの夏は「原発ゼロ」でも大丈夫でした。政府は近く、二〇三〇年のエネルギー選択を提示する予定ですが、今夏の実績をどう受け止めるのか。
 まるで拍子抜けするような結果です。政府や電力会社は夏を前に「原発が動かなければ大停電になる」とか「日本経済が大混乱する」と言い続けてきました。
 野田佳彦首相が「仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます」とまで言い切って、関西電力大飯原発の再稼働を決めたのは六月八日です。

夏の電力は余っていた
 ところが本紙報道(八月二十九日付一面)によれば、関電管内では二十六日までの八週間で事前の需要予測を10%も下回り、原発なしでも余力があったことが分かりました。関電の広報担当者は「節電効果があり、現時点では原発がなくても供給力は維持できた」と認めています。
 これは予想とか分析ではなく、「はっきりした事実」です。政府の見通しは外れました。
 さてそうなると、多くの人が次のように考えるのは当然です。「今年の夏が大丈夫だったなら、なにも無理して原発を動かさなくてもいいのでは?」
 それほど原発事故の怖さは身に染みました。なにより故郷を追われた十六万人の「さまよう人々」が、いまも不安ややり場のない怒りと葛藤しているのです。
 素朴な疑問こそ本質を突いている。政府は人々の問いに真正面から答える必要があります。
 政府は六月末、三〇年の原発依存度を「0%にする」「15%にする」「20~25%にする」という三つの選択肢を示しました。これを基に、近くエネルギー戦略をどうするか決める予定です。

倒錯している政策手順
 どんな場合でも、将来の政策を考えるには、まず現状が前提になります。いまの時点で電力は足りているのかいないのか。原発の安全はきちんと担保されているのか。それが議論の出発点です。
 関電の電力需給は「余力があった」と判明しました。それだけではありません。独自に問題を検証している大阪府市・エネルギー戦略会議の調査では、西日本の六電力合計で約一千万キロワット分も余剰電力があったことが分かっています。万が一、関電だけでは足りなくなっても、各社でやりくりすれば十分な数字です。
 そうであるなら、三〇年を待たずに「いますぐゼロ」という選択肢だってあるはずです。少なくとも、議論のテーブルに上がっていなくてはおかしい。
 そもそも安全を担保する体制を整えないまま、三〇年の原発依存度を数字で決めようという姿勢が根本的に間違っています。
 原発を再稼働するなら安全を最優先にしなければなりません。ところが大飯原発を再稼働させた基準は泥縄式で決めた暫定措置でした。野田首相自身が記者会見で「これから三十項目の安全対策をやる」と言っています。
それ自体、とんでもない話なのですが、それに加えて十八年後の原発依存度まで決めてしまおうとしている。先に数字を決めてしまったら、目標達成が最優先になって肝心の安全基準作りや基準順守がなおざりになる懸念がある。それでは元のもくあみです。
 原発を動かすなら、まず安全確保体制を整えて、それから国民の理解を得る。依存度が決まるのは結果にすぎません。つまり手順が完全に逆なのです。
 15%などの数字を決めた政府の審議会も形ばかりでした。それは議論をしている最中に、野田首相が「原発は単に夏の電力確保のためだけでなく、社会全体の安定と発展のために引き続き重要だ」と発言した一件で明白です。「先に結論ありき」なのです。
 こういう政策手順の倒錯は消費税引き上げの経過ともよく似ています。本来、増税しようというなら、まず政府の無駄や非効率を改め使途を明確にして、国民に理解を求めなければなりません。
 ところが実際は公約破りに加えて、肝心の社会保障制度改革を後回しにした。その揚げ句、増税法案が成立したとたんに最初の話になかった公共事業拡大の大合唱です。だから国民は政府を信用しない。それが野田首相には分からないのでしょうか。

過小評価の原発コスト
 「原発を止めたら電力料金の大幅値上げが避けられない」という話も「増税しないと国債が暴落する」話にそっくりです。大本の燃料コスト削減に傾注すべき政策努力を棚上げして、脅し文句を並べるのはやめていただきたい。
 政府のコスト試算には被災者への賠償や除染、廃炉にかかる費用も極端に過小評価されています。議論の出直しが必要です。


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 【社説】「浜岡」住民投票 熟した民意の表れだ
2012年8月31日 中日新聞

 浜岡原発(御前崎市)再稼働の是非を問う住民投票条例の制定に、静岡県知事が賛意を表明した。政府も「過半が脱原発を望む」と国民的議論を総括。福島事故から一年半。民意は熟しつつある。
 十六万五千百二十七人の「民意」は、重い。
 福島第一原発事故のあと、原発再稼働の是非をめぐって住民投票を求める市民の動きが盛んになった。だが、大阪市では五万人、東京都では三十二万人を超える有効署名がありながら、それぞれ議会が条例案を否決した。橋下徹市長、石原慎太郎都知事とも反対意見を付けていた。静岡県の川勝平太知事も従来、再稼働は「マルかバツの単純な問題ではない」などとして、住民投票には、消極的な立場を取ってきた。
 選挙で選ばれた首長や議員は「代表制の否定だ」と、住民投票を嫌う傾向がある。「直接民主主義はまだ地に着いていない」という川勝知事の言葉もあった。
 しかし、福島事故からやがて一年半、国民は原発事故の惨状を目の当たりにし、福島県民の悲しみを感じ取り、電力会社や国の事故対応を見守ってきた。ましてや、静岡県は長年、東海大地震の脅威に向き合ってきた土地柄だ。二十九日には南海トラフの巨大地震で浜岡原発を最大一九メートルの津波が襲うと公表された。署名は、一時の感情によるものではありえない。生活実感からにじみ出た、やむにやまれぬ行動であり、積もり積もった危機感の表れなのだ。
 「今を生きる大人の責任として、原発問題とはしっかり向き合わなければならない」。川勝知事に県民投票への賛同を求める手紙を手渡した母親グループの言葉である。住民はただ反対を唱えるだけでなく、自らが使うエネルギーの選択も含め、原発問題の現実に真っすぐ向き合おうとし始めたのだ。それは二〇三〇年の原発比率をめぐる「国民的議論」の結果にも、色濃く表れたばかりである。
 原発関連の住民投票条例は、一九八二年の高知県窪川町(現四万十町)以来、七市町村で制定された。このうち、新設をめぐって、九六年の新潟県巻町(現新潟市)と〇一年の三重県海山町(現紀北町)、〇一年には使用済み燃料を再利用するプルサーマル計画の是非を問う新潟県刈羽村でも実施され、いずれも計画中止の契機になった。
 今度は、静岡県議会が署名簿と真摯(しんし)に向き合って、その重みをよく考える番ではないか。 


 脱原発依存を「過半の国民が希望」と政府総括、エネルギー戦略策定へ
2012年8月28日 ロイター

 [東京 28日 ロイター] 政府は28日、新しいエネルギー戦略の策定に向けてこの夏に行った国民的議論に関する分析と総括案を公表した。焦点の原子力発電については「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」と指摘した。
 総括案は世論調査の専門家などによる会合で提示され、会合での指摘を踏まえて古川元久国家戦略相が内容をとりまとめ、エネルギーと環境に関する政府戦略を策定する「エネルギー・環境会議」に報告する。閣僚らが出席する同会議で9月中に新しいエネルギー戦略が策定される見通しだ。
 古川国家戦略相は会合後、記者団に「少なくとも過半の国民が原発に依存しない社会を望んでいる」との分析が「原発ゼロの社会を望んでいる」との解釈となるのかどうかについて、「原発をなくしていきたいという思いの方が過半を占めている。それが今回の国民的議論の中で様々な意見を検証した結果だと思っいる」と述べ、政府の新しいエネルギー戦略の中で「原発ゼロ」に何らかの形で踏み込む可能性を示唆した。
 一方で、政府の総括案では、原発に依存しない社会について「実現に向けたスピード感に関しては意見が分かれている」とも分析。「原発に依存しない社会」や「原発ゼロ」をいつ実現するかの期限を明示することには慎重な姿勢をにじませている。野田政権はすでに「脱原発依存」の方針は示しているが、より踏み込んだ「原発ゼロ」を新しいエネルギー戦略に盛り込むのかどうか。国家戦略室の日下部聡審議官は報道陣に対し「最終的にどういう方針を打ち出すかは政治判断で、現在はまだ決まっていない」と説明した。
 政府は7月から8月にかけて新しいエネルギー政策の策定で、全国各地での意見聴取会やパブリックコメントの募集、無作為で選んだ国民に泊りがけでエネルギーに関する議論に参加してもらい意識の変化を探る「討論型世論調査」を実施。これらに加え、マスコミの世論調査、インターネットでの調査や経済団体やNGO(非政府組織)からの提言といった手段を通じて国民的議論を実施した。
 焦点は、東京電力<9501.T>福島第1原子力発電所の事故により国民に不安が広がった原発の将来の扱い。複数の政府審議会の議論を踏まえ、2030年時点での原発依存度について、1)ゼロ、2)15%、3)20─25%の各シナリオを提示し、国民各層に意見を求めた。

 <若年層の原発維持に対する支持高く>
 国民的議論では、原発ゼロへの支持率がパブリックコメントで9割、意見聴取会で7割に上った。今回の調査手法の目玉としてとらえられている討論型世論調査ではゼロへの支持が5割近かった。15%シナリオへの支持は各種世論調査では3割から5割に上り、各シナリオ中で最も支持を得るケースやゼロシナリオに次いで支持を得るケースがあった。
 20─25%シナリオは討論型世論調査、各種世論調査ともに1―2割程度の支持があり、経済団体の支持が多かったほか原発立地自治体からも支持する意見があった。性別、年齢別では、女性がゼロシナリオ支持が多く、10─20歳代といった若年層では原発維持に対する支持が他世代に比べて高かったとの結果も出た。
 政府の総括案では、過半の国民が「脱原発依存」を望んでいると指摘。その上で、1)その実現に向けたスピード感に関しては意見が分かれている、2)(約9万件の)パブリックコメントなど原発ゼロの意思を行動で示す国民の数が多いという背景には、原子力政策に関する政策決定のあり方に関する不信、原発への不安が極めて大きい、3)国民は、2030年時点のエネルギーミックスの数字よりも、どういう経済社会を築いていくかに関心が高い、4)政府は、反対する意見、論点に対する回答を用意しながら戦略を提案する必要がある─との分析を示した。
 討論型世論調査では、固定電話を通じて回答者にアプローチしたが、固定電話を持つ若者が少なくなっていることから20歳代の参加が非常に少なかった。このため検証会合では出席委員から、「若年層のアンダーリプレゼント(意見が十分反映されていない)は明確。未来選択をしようとしている議論なのでこの点を真剣に考えるべきだ。2030年以降の社会の主役に対して問題が残る」(小林傳司・大阪大学教授)との指摘が聞かれた。
(ロイターニュース、浜田健太郎;編集 大林優香)


特集ワイド:原発ゼロの世界/上 存続派の「まやかし」(毎日新聞 2012年08月27日)
特集ワイド:原発ゼロの世界/下 メリットは「ある」(毎日新聞 2012年08月28日)


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