みどりの一期一会

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自民党新総裁に安倍晋三氏/新聞各紙の社説

2012-09-27 21:24:50 | ほん/新聞/ニュース
昨日、自民党総裁選挙があり、ついテレビを見てしまった。

自民党新総裁は、つかい回しの安倍晋三氏。
バックラッシュ派の安倍氏が参院議員選挙直後に
政権を投げ出してしまった記憶も薄れていないのに、
いそいそと立候補したのにも驚いた。
さらに、安陪氏が自民党の国会議員決選投票で一番たくさん得票したのにも驚いた。
民意とかけ離れている、と感じたのはわたしだけ?

民主党の野田氏も右寄りたけど、自民党が安倍総裁だったら、
どちらに転んでも、右傾化は避けられない。
とはいえ、第三極といわれる「維新の党」はもっとあぶない気がする。
三党三極というよりは、右にかたよって一極集中している。

何とかしなければ・・・。

購読している新聞社説は五紙とも、この「安倍新総裁」に関する記事です。

  【社説】表紙を変えただけでは 自民新総裁に安倍氏  
2012年9月27日 中日新聞

 自民党総裁に安倍晋三元首相が返り咲いた。野田民主党政権と対峙(たいじ)し、政権奪還を目指すが、「表紙」を変えただけでは、国民の信頼は取り戻せない。
 自民党国会議員にとっては無難な選択なのかもしれない。次期衆院選や来夏の参院選の「顔」として、新鮮さはあるけれども、総裁としての力量は未知数の石破茂氏(55)より総裁経験者の安倍氏(58)の方が適任とみたのだろう。
 ただ、かつて福田赳夫元首相が「天の声」と呼んだ党員・党友票の選択と異なる結果は、自民党議員と国民感覚とのズレを象徴しているように思える。

現実的政策見えず
 安倍氏は当選後のあいさつで政権奪還に向けた強い決意を示し、「政権奪還は私たちのためでも自民党のためでもない。日本を取り戻し、強く豊かな日本、子どもたちが生まれたことを誇りに思える日本をつくるためだ」と述べた。
 その通りだ。政治は国民の暮らしを豊かにする政策実現のためにある。一政党の私物ではない。党利党略が優先されるようなことは断じてあってはならない。
 ただ残念でならないのは、今回の総裁選を通じて、行き詰まりを見せる日本の政治、外交、経済、社会をどう立て直すのか、国民の暮らしを豊かにするための現実的なシナリオが見えてこなかったことだ。
 国内総生産(GDP)第三位に転落した経済の長期低迷、国と地方合わせて一千兆円に上る巨額の財政赤字、原発事故を招いた厳格さを欠く原子力行政、天下りに代表される政官業癒着と強固な官僚主導政治、沖縄県民に過重な負担を押し付けることで成り立つ日米安全保障体制、などなど。
 これらは三年前、民主党政権になって突然始まったのではなく、前政権からの延長線上にある、自民党政治の「負の遺産」だ。

声高に叫んでも…
 確かに、自民党の失政が招いた閉塞(へいそく)状況からの脱却を期待し、民主党に政権を託した国民にとっては、裏切られた三年間だった。
 政治主導の政策実現は期待外れだったばかりか、国民との契約であるマニフェストに反する消費税増税を強行した。政権担当能力不足は否めず、国民の暮らしがよくなったと思える状況でない。
 政権を選ぶ眼力が国民に不足していたと言われればそれまでだ。
 しかし、ただ民主党政権を批判するだけでいいのだろうか。
 自民党にとって今、必要なことは、政権転落の反省に立って、かつて進めた政策を総点検し、今に至る状況を打開するための現実的な解決策を国民に示して、判断を仰ぐことではないのか。
 その処方箋もなく、ましてや党再生にも死力を尽くさず、ただ民主党の「敵失」で政権に返り咲いたとしても、何も解決しない。
 かつて、竹下登総裁(首相)から後継就任を打診された伊東正義総務会長(いずれも当時)は「本の表紙だけ変えて、中身は変わっていないということでは駄目だ」と固辞した。総裁が代わっても、党の体質を変えなければ、政権に返り咲く資格などない。
 石破氏は各地の街頭演説会で、かつての自民党政治を謙虚に反省し、民主党批判ではなく、自民党として何ができるかを示さなければならないと訴えていた。
 その主張に同調し、自民党の再生が必要だと考える党員・党友が多かったことが、石破氏が地方票の過半数を制した大きな理由だろう。決選投票で敗れたとはいえ、石破氏善戦の意味を、安倍氏は謙虚に受け止めねばならない。
 安倍氏は、集団的自衛権の行使容認による日米同盟強化や靖国神社への首相参拝など、「タカ派的」主張を繰り返した。
 自民党本来の支持層を固める狙いがあることは想像できるが、声高に主張するだけで中韓両国など近隣諸国との関係が好転するほど国際情勢は単純ではない。
 安倍氏は首相当時、靖国参拝に行くとも、行かないとも言わない「あいまい戦術」で中韓との関係改善に努めた。自民党に期待されるのは、そうした経験に裏打ちされた、老練で、したたかな外交であることを想起すべきだ。
 原子力政策も同様だ。原発を推進し、甘い規制行政を許した歴代の自民党政権は、原発事故の責任から免れられない。この際、原発稼働ゼロに舵(かじ)を切ってはどうか。反対する経済界や米政府を説得できれば、面目躍如だろう。

健康不安の払拭を
 安倍氏には五年前、持病である潰瘍性大腸炎の悪化を理由に政権を一年で投げ出した過去がある。
 病歴は個人のプライバシーだが首相を目指す公人は別だ。米大統領が毎年するように、健康診断結果を公表してはどうか。それが本人の言う「ほぼ完治」を裏付け、健康不安の払拭(ふっしょく)につながる。


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 安倍新総裁の自民党―不安ぬぐう外交論を
2012年9月27日(木)付 朝日新聞

 自民党総裁選は、40年ぶりの決選投票をへて、安倍晋三元首相が当選を決めた。
 5年前の参院選で惨敗後、首相だった安倍氏は突然、政権を投げ出した。
 その引き金となった腸の難病は新薬で克服したというが、政権放り出しに対する批判は安倍氏の重い足かせだった。それが一転、結党以来の総裁再登板を果たしたのはなぜなのか。

■「強い日本」を前面に
 もともと安倍氏は本命視されていなかった。
 ところが、谷垣禎一前総裁を立候補断念に追いやる形になった石原伸晃幹事長がまず失速。決選投票では派閥会長や古参議員に嫌われている石破茂前政調会長に競り勝った。いわば消去法的な選択といっていい。
 さらに領土問題で中韓との関係がきしんでいなければ、再登板はなかったかもしれない。
 「強い日本」を唱える安倍氏の姿勢が、中韓の行き過ぎたふるまいにいらだつ空気と響きあったのは確かだ。
 「尖閣諸島は国家意思として断固守る」として、避難港を造るなど管理の強化を訴える。
 慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた河野官房長官談話や、「植民地支配と侵略への反省とおわび」を表明した村山首相談話を見直すと主張している。
 首相になった場合の靖国神社参拝にも意欲を示す。
 ナショナリズムにアクセルを踏み込むような主張は、一部の保守層に根強い考え方だ。
 だが、総選挙後にもし安倍政権ができて、これらを実行に移すとなればどうなるか。
 大きな不安を禁じえない。
 隣国との緊張がより高まるのはもちろんだが、それだけではない。
 前回の首相在任中を思い出してほしい。5年前、慰安婦に対する強制性を否定した安倍氏の発言は、米下院や欧州議会による日本政府への謝罪要求決議につながった。
 靖国参拝をふくめ、「歴史」に真正面から向き合わず、戦前の反省がない。政治指導者の言動が国際社会からそう見られれば、日本の信用を傷つける。
 だからこそ安倍首相は河野談話の踏襲を表明し、靖国参拝を控えたのではなかったか。
 首相就任直後に中韓両国を訪問し、小泉政権で冷え切った中韓との関係を改善したのは安倍政権の功績だった。その経験を生かすべきだ。
 それにしても、あまりにも内向きな総裁選だった。

■人材も活力も乏しく
 安倍氏をはじめ5候補は、民主党政権の3年間を「国難」と断じ、自民党が政権に復帰しさえすれば震災復興も、領土外交も、日米同盟も、景気も、雇用もうまくいくと胸を張った。
 そんな甘い夢を信じる人がどれほどいようか。
 国民の政治不信は民主党だけでなく、自民党にも向けられている。その自覚と反省がまったく感じられない。
 それどころか、3年前、国民に拒絶されるように下野した自民党のやせ細った姿をくっきりと映し出した。
 その象徴は、5候補の政策がほとんど同じだったことだ。
 党是の憲法改正を実現し、集団的自衛権の行使をめざす。
 原発・エネルギー政策では全員が「原発ゼロ」に反対。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加には慎重。代わりに熱を入れるのは「国土強靱(きょうじん)化」という名の公共事業拡充だ。
 財界や電力業界、農協、土木・建設業界など支持団体の歓心を買いたい。そんな思惑がみえみえではないか。
 かつての自民党にはタカからハト、改憲から護憲、保守からリベラルまで抱える懐の深さがあった。
 それが、今回は5候補がそろってタカ派色と支持団体への配慮を競い合った。しかも5人とも世襲議員である。

■3党で国会ルールを
 二大政党時代の野党の最大の仕事は、人材を鍛え、次に政権に就いたときに実行すべき政策を練ることだ。その作業を、自民党は怠っていたと言われても仕方がない。
 遠からず行われる解散・総選挙に向けて、安倍氏に三つのことを求めたい。
 第一に、社会保障と税の一体改革の実行を野田首相と再確認する。早期解散を求めて対決するだけではなく、社会保障をめぐる国民会議の設置など、譲るべきは譲ることも必要だ。
 第二に、外交・安全保障をはじめ、公約を現実味のあるものに練り直すことだ。
 総選挙で投票権をもつのは自民党員だけではない。前回の首相在任中に靖国参拝を控えたように、君子豹変(ひょうへん)の勇気をもつことが肝要である。
 第三に、民主、公明との3党で、衆参の多数派がねじれても国会を動かせるルールづくりで合意することだ。政権奪還をめざす自民党にとっても、そのメリットは大きいはずだ。  


 社説:新総裁に安倍氏 「古い自民」に引き返すな 
2012年9月27日 毎日新聞

 自民党新総裁に安倍晋三元首相が選出された。同党総裁の返り咲きは初めてで、決選投票を2位候補が逆転で制したのは56年ぶりだ。次期衆院選が1年以内に迫る中、政権奪還を掲げる党のかじ取りを担う。
 石破茂前政調会長が過半数を占め圧勝した地方票の結果を覆した選出劇は派閥を否定できない党の体質の反映でもある。体調不良で5年前に首相を辞めただけに、首相候補として国民の信頼を取り戻す道は平たんでない。野党第1党の党首として、外交、内政を停滞させずに動かす責任を与党と共有すべきである。

 ◇外交路線に残る懸念
 混戦を制した安倍氏は記者会見で「強い日本をつくる」と抱負を述べ日米同盟の再構築、成長戦略などを重要課題に挙げた。中国、韓国など近隣諸国とのかつてないほどの緊張が、強硬路線派の安倍氏に追い風となった。改憲や集団的自衛権行使容認などに重点を置く安倍、石破氏が上位を占めた地方票の動向は保守回帰を印象づけたと言えよう。
 だが、地方票と国会議員票の「ねじれ」を露呈しての選出という十字架を新総裁は背負うことになる。派閥に所属せずその存在に最も否定的な石破氏が党員による地方票で圧勝したのは人気度に加え、徹底した党改革への期待感の反映であろう。
 にもかかわらず、国会議員票による逆転勝利を安倍氏にもたらしたのは同氏への積極評価以上に反石破票の結集という要素があったはずだ。当初の予想ほど決選で議員票に差がつかなかったのは、地方票の重みを多くの議員が意識したためではないか。谷垣禎一総裁を不可解な出馬断念に追い込んだように派閥や長老が力を残す「古い自民」の土俵に立つ限り、党運営は容易であるまい。
 アピール材料とする外交、安全保障政策が逆に懸念要因である点も指摘せねばならない。
 安倍氏は尖閣諸島問題で船舶の避難施設建設などを主張しており、政権復帰が実現した場合に対中関係で緊張が強まることを危ぶむ見方もある。ただ、26日の会見では首相時代に戦略的互恵関係の構築を図った経緯を踏まえ日中関係を「切っても切れない関係」と強調、関係重視の基本認識も示した。
 歴史認識も問われる。日韓関係を悪化させる従軍慰安婦問題で「河野談話」の修正を提起している。同談話で問題を政治決着させようとした過去の真剣な努力をないがしろにすべきではあるまい。
 税と社会保障の一体改革に関する民自公3党合意を堅持する姿勢をより明確にすべきだ。安倍氏は合意維持を表明する一方で、消費増税はデフレ解消が前提と主張する。「景気条項」にこだわりすぎては先送り論を加速させかねない。
 3党合意へのスタンスは次期衆院選後の政権の枠組みの展望にもつながる。安倍氏は民主との大連立を否定し、橋下徹大阪市長による「日本維新の会」にむしろ好意的とみられている。社会保障の全体像や低所得者対策などの具体化はどうするのか。次期衆院選でたとえ自民が政権に返り咲いても参院の「ねじれ」が続く公算は大きいはずだ。
 総裁選で事実上放置された重要課題も多い。福島原発事故に伴うエネルギー政策の将来像についてはほとんど議論が深まらなかった。「原発ゼロ」への反対は安倍氏を含む候補全員が表明したが「10年以内に新たなエネルギーの安定供給構造を構築」とする党公約案は何も言っていないに等しい。
 野田内閣がまとめた新エネルギー政策は確かに深刻な矛盾を抱えるが未曽有の事態を受け格闘する意思は感じられる。長年にわたり原発の安全対策の手抜かりを見逃してきた自民がエネルギー政策を傍観するのは無反省に過ぎる。態度があいまいな環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への対応とともに、次期衆院選に向け具体的指針を逃げずに示してこそ、責任政党であろう。

 ◇3党合意を堅持せよ
 今後10年で200兆円を公共事業に投じるという国土強靱(きょうじん)化計画も単なるばらまき路線の復活を懸念せざるを得ない。政権から転落した教訓をどこまでくみ取ったか、民主党政権の混乱にかまけて「野党自民」がこの3年、自己改革に取り組む姿を示してきたとは言いがたい。
 安倍氏は野田内閣を早期解散に追い込む決意を改めて強調した。民主党代表に再選した野田佳彦首相と新総裁による党首会談が今後の政治の動きを占う最初の節目となる。
 首相が違憲状態の衆院「1票の格差」是正などで踏み込んだ姿勢を示すべきなのは当然だ。一方で安倍氏もさきの国会で可決された参院問責決議をタテに最初から全面対決姿勢でのぞむべきではない。とりわけ今年度予算の執行に必要な特例公債法案を衆院解散の人質とし続けることは愚策である。
 与野党攻防がどう推移しても1年以内に衆院選は確実に行われる。安定した政権担当能力を国民に伝えるには、政治を動かす責任感を示すことだ。野党3年、自民党は何を改め、どう変わったかを身をもって示すべきだ。それが新総裁の重い責務と心得てほしい。


 自民総裁に安倍氏
重い課題抱えた船出に

2012年9月27日 岐阜新聞

 自民党の新総裁に、国会議員による決選投票で安倍晋三元首相が選ばれた。2007年9月に辞任して以来の再登板だ。
 次期衆院選で自民党が比較第1党となれば、安倍氏は首相に返り咲く可能性が大きい。だが前回の首相時代、わずか1年で突然政権を投げ出した記憶は国民から消えていないだろう。安倍氏は総裁選で前回の辞任を謝罪し、その理由だった健康問題は完治したと強調。「首相としての経験と責任を胸に、政権奪還に向け力を尽くしたい」と決意を強調した。
 なぜ自民党が政権を失ったのかの反省を踏まえ、生まれ変わった党の新しい姿を示して国民の信頼と支持を回復できるのか。重い課題を抱えた船出となる。
 総裁選では、党員・党友の投票による地方票で石破茂前政調会長が過半数を制したが、国会議員票を加えると過半数に届かず、2位の安倍氏が決選投票で逆転した。
 だが国民の声を反映すする党員投票を国会議員がひっくり返した結果は、自民党の議員と国民の意識の乖離(かいり)の表れといえよう。安倍氏は次期衆院選の「顔」として選挙戦の先頭に立つが、幅広い国民の支持を得られるのかが問われる。
 新総裁の最初の課題は、野田政権への対応だ。安倍氏は社会保障と税の一体改革に関する民主、自民、公明の3党合意は継承する考えを示しているものの、消費税増税の前にデフレ脱却が必要だと主張する。
 民主党との協調路線にも否定的で、憲法改正や教育改革の推進で新党「日本維新の会」を率いる橋下徹大阪市長との連携に含みを持たせている。早期の衆院解散を求め、野田政権には対決姿勢を強めることになろう。
 ただし、当面の課題である赤字国債発行のための特例法案や衆院の「1票の格差」是正、社会保障制度改革を議論する「国民会議」の立ち上げにどう対応するのか。これらの懸案は早期に決着をつけなければならない。自民党が譲歩を求められる場面もあるだろう。野田佳彦首相が呼び掛ける民自公の3党首会談への対応がまず問われる。
 安倍氏は前回の政権担当時に「戦後レジームからの脱却」「美しい国づくり」を掲げ、憲法改正のための国民投票法や教育改革に取り組んだ。その路線は変わっていない。今回の総裁選でも、改憲や集団的自衛権行使の容認、教育改革推進など保守路線を前面に打ちだした。改憲が今、国民の間に合意があり、急ぐべき課題だろうか。
 尖閣諸島など領土問題でも「日本の海や領土を断固として守らなければならない」と強硬な対応を強調する。事態の沈静化に向けた外交努力が求められるときに、強硬路線でいいのか。首相の座をうかがう有力野党の党首だけに、現実的な対応を期待したい。
 自民党が3年前に下野したのは、小泉構造改革による格差拡大などの問題に有効な対応策を提示できなかったのに加え、派閥の抗争、世襲議員が占める新陳代謝の進まない古い体質などが指摘されたためだった。その責任は安倍氏にもある。
 民主党政権はこの3年間で国民の失望を招いた。だが自民党は「敵失」ではなく自ら支持を獲得することで政権奪還を目指すべきだ。新味のある政策、野党経験を踏まえた課題を解決できる国会対応を示す必要がある。 


 安倍自民新総裁 政権奪還への政策力を高めよ(9月27日付・読売社説) 

◆保守志向が再登板の追い風に◆
 政権奪還という重い課題を担っての「再チャレンジ」である。
 自民党総裁選は、安倍晋三元首相が、石破茂前政調会長ら4氏を破り、新総裁に選出された。
 第1回投票では、石破氏が地方票の過半数を獲得して1位となったが、国会議員による決選投票で安倍氏が逆転した。
 安倍氏は、次期衆院選の結果次第では首相に就任する可能性が大きい。当選後のあいさつでは「政権奪還に向けて全力を尽くす。強い日本をつくる」と、決意を表明した。今から日本再生への戦略と政策を練る必要がある。

 ◆「尖閣」で地方票に変化◆
 派閥の代表ではない安倍、石破両氏が決選投票を争ったことは、派閥の合従連衡による総裁選からの変化をうかがわせる。
 当初は石原伸晃幹事長が有力視されたが、安倍、石破両氏が地方の党員に支持を広げた。これは総裁選のさなか、中国が尖閣諸島を巡って日本に高圧的な外交を展開したことと無縁ではない。
 両氏とも総裁選では、日本の領土・領海を「断固として守る」と訴え、外交・安全保障政策の重要性を強調した。
 しかし、中国に強硬一辺倒の姿勢では関係改善は望めない。
 安倍氏は首相時代に、小泉内閣で悪化した対中関係を立て直し、中国と「戦略的互恵関係」を目指すことで合意した。尖閣諸島国有化で中国の反日機運が高まる中、日中関係を再構築する具体策が改めて求められている。
 安倍氏は、集団的自衛権の行使を可能にすることによる日米同盟の強化や、憲法改正に取り組む考えを示している。いわゆる従軍慰安婦問題に関する「河野談話」の見直しにも前向きだ。
 いずれも妥当な考え方である。実現に向けて、具体的な道筋を示してもらいたい。
 総裁選で残念だったのは、日本の直面する課題について、踏み込んだ議論が乏しかったことだ。

 ◆TPP・原発政策示せ◆
 環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題で、安倍氏は「交渉力を強めた上で、国益を守れるかどうか考えないといけない」と慎重な発言に終始した。
 党内に根強いTPP参加反対論に配慮したのだろうが、政権奪還を目指すなら、農業の競争力強化策をまとめ、交渉参加への環境を整えなければならない。
 エネルギー問題でも、政府・民主党の「原発ゼロ」方針に否定的な見解を示したのは適切だったにせよ、それだけでは不十分だ。
 安全な原発は活用し、電力を安定供給できるエネルギー政策について党内で議論を深め、責任ある対案を打ち出すべきである。
 安倍氏は6年前、戦後生まれで初の首相となった。「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、教育基本法を改正し、防衛庁を省に格上げした。憲法改正手続きを定めた国民投票法も成立させるなど実績を上げている。
 しかし、2007年7月の参院選に惨敗し、衆参ねじれ国会を生んだ。その後の突然の辞任は、潰瘍性大腸炎という持病が一因とされるが、政権を無責任に投げ出した印象が強く残っている。
 安倍氏には、「健康不安」やひ弱なイメージを払拭できるかどうかが、問われよう。
 新総裁として最初に取り組むのは党役員人事である。
 安倍氏は、総裁就任後の記者会見で、石破氏が党員票の過半数を獲得したことについて「重く受け止めなければならない」と述べた。石破氏には地方に圧倒的な支持のあることが裏付けられた。要職に起用するのは理解できる。
 安倍氏は首相時代に内閣の要職を盟友や側近で固め、批判を浴びた。今回、党役員にどういう人材を登用するかも注目したい。

 ◆解散で「紳士協定」を◆
 重要なのは、次期臨時国会での対応である。
 先の通常国会は、参院で野田首相の問責決議を可決したまま閉会した。これまで自民党は問責の効力が次の国会にも及ぶとしてきたが、安倍氏は記者会見で、一切審議を拒否するわけではないと柔軟な姿勢を示した。
 赤字国債発行のための特例公債法案の成立などに協力する代わりに、野田首相が約束した「近いうち」の衆院解散を「紳士協定」として確認したい考えのようだ。建設的な提案だと評価できる。
 安倍氏自身、首相時代にねじれ国会に悩まされた。参院の問責決議を理由にした審議拒否など不毛な与野党対立や政治の停滞には、もう終止符を打つ時である。
(2012年9月27日01時30分 読売新聞)



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