みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

命を守る給食 アレルギー事故から:自治体で対応に格差/除去食対応の難しさ/打てなかった「エピペン」

2013-03-22 22:19:07 | ほん/新聞/ニュース
中日新聞の生活面に3回シリーズで
「命を守る給食 アレルギー事故から」の連載がされていました。
担当は、稲熊美樹さんと砂本紅年さん。

うえの二人が弁当持参していたり、したの子はアナフラシキーを起こしたこともあり、
ということもあって、
若いころ、「こどものアトピーを考える会」と「学校給食を考える会」の活動をしていたので、
この連載はとても他人事とは思えません。

わたしが子育てしていたころと違って、除去食対応する学校もあるなど、
食物アレルギーに対する無理解はなくなりましたが、
現場の対応の難しさは変わっていませんね。

  命を守る給食 アレルギー事故から<上> 自治体で対応に格差  
2013年3月20日 中日新聞

 東京都調布市の小学校で、食物アレルギーの五年生女児が給食を食べて、臓器に重篤な症状が出るアナフィラキシーショックを起こし、死亡した事故。検証委員会による報告書は、救命できた可能性を指摘している。アレルギーの子どもたちが、集団生活の場でも安心して給食を食べ、命を守れるようにするにはどうすればいいのか。三回にわたって考える。
 「『もう除去食(アレルギー原因の食材を取り除いた給食)の対応はしません』と、弁当持参を頼まれた」「『死ぬかもしれない子は預かれない』と、退園を迫られた」
 調布の事故後、アレルギーの子や家族を支援するNPO法人・アトピッ子地球の子ネットワーク(東京)の赤城智美事務局長のもとには、小学校や幼稚園に子どもを通わせる親たちからこんな声が届いている。「恐れていたことが起きている」と、赤城さん。現場でのアレルギー対応の後退を懸念する。
      ◇
 学校でのアレルギー対応について、日本学校保健会は二〇〇八年にガイドラインを整備。厚生労働省も一一年に保育所での指針を定め、各自治体に対応を求めた。
 横浜市は〇七年に給食のアレルギーに関するマニュアルを作成。学校では、毎年三月に栄養教諭や保護者らが面談し、除去食などの対応を協議。四月に担任にも内容を伝えている。
 全校児童五百六十六人の上寺尾小学校には、対応が必要な食物アレルギーの児童が七人いる。この日のメニューは豆腐の中華煮。うずら卵とエビが入っており、これらのアレルギーがある四人の児童の除去食は直接、担任教諭に手渡された。
 栄養教諭の松本清江さん(55)は「誤配食や誤食が一番怖い。担任にも確認してもらう」。保護者に配られる献立表にはメニューごとの材料がすべて記載されている。調理の際は専用の鍋や通常食とは別のこんろを使い、校長も検食する。おかわりは、アレルギーの児童と担任が直接給食室に取りに行くルールだ。
      ◇
 国のガイドラインは整備されたが、自治体による対応の差は大きい。名古屋市はマニュアルがまだない。除去食は、調理の最終工程で取り除くことができる場合などに限定。中華丼に入るエビやうずら卵は、完成品から児童が自ら取り除くよう定めている。重症児に対応できないため、弁当持参のケースもある。
 愛知県豊明市では、保護者が毎月、学校給食センターへ出向き、職員が読み上げる材料を書き留め、子どもが食べられるメニューかどうか判断しなければならない。加工品の原材料表示を見たいと頼んでも、口頭で伝えられるだけだった。四月から一年生になる長男が食物アレルギーの女性は、「一生懸命聞くけど、一瞬も気を抜けない。いつか間違えるのでは…」と不安を感じている。
 NPO法人・アレルギー支援ネットワーク(名古屋市)の中西里映子事務局長は「お金も人もかけず、工夫次第でできることがある。事故があったからと対応を後退させるのではなく、事故を教訓に、前向きに検討してほしい」と話す。事故が起きた際は「隠すのではなく、事故例を集めて知らせ、防止につなげる仕組みづくりが必要」と提案している。


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 命を守る給食 アレルギー事故から<中> 除去食対応の難しさ

 皆が同じ物を食べれば事故は起きない-。こんな考え方で愛知県一宮市では、アレルギー症状の原因となる七大アレルゲン(卵、乳、小麦、エビ、カニ、そば、落花生)を除いた給食を、週に一度出している。普段、除去食対応はしていないため、食べられないメニューのとき、食物アレルギーの子は弁当を持参する。だが、除去食のときだけは、全員が同じメニューを一緒に食べられる。
 ある日の献立は、ご飯、水煮大豆をすりつぶし、みそ汁に混ぜた「呉汁」、ニシンの煮付け、味付けのり。一日ごとには一食あたりのエネルギーやカルシウム、ビタミンなどの量を細かく定めた「学校給食摂取基準」を満たせないので、一カ月で基準を満たせる献立を考えている。
 給食の担当者は「基準を満たすには週一度が限界」。調理器具や調理法も限られ、工夫の余地は多くない。揚げ油は以前使ったときの卵や小麦が混ざるため、揚げ物はできない。それでも児童が飽きないよう、組み合わせを変えるなどして二年以上続けている。
     ◇
 名古屋市昭和区の池内わらべ保育園は、三十年以上前から食物アレルギーの子にも給食を作ってきた。除去食から一歩進め、栄養を補うために代わりの食材を足す「代替食」や、皆が同じものを食べられるメニューを心掛ける。
 チャーハンや天ぷらなどは卵を入れず、除去食の種類を減らしてミスを防ぐ。小麦粉の代わりに米粉を使うことも。特に節分などの行事や、子どもたちが食事を作るときは、皆が食べられるメニューを考える。間違えやすいおかわりは、アレルギーの子と同じクラスの子たちは全員、除去食を食べるのがルールだ。
 鈴木奈津江園長は「リスクはあります。でも普段から思い切り食べられないアレルギーの子たちに、いっぱいおかわりをさせてあげたい」と話す。
 ある日の献立は和風チャーハンに春雨のスープ、白菜サラダ。スープに入れる卵の代わりに、卵アレルギーの子には豆腐を、卵と大豆アレルギーの子には白菜を入れた。大豆アレルギーの子には、しょうゆ風味の発酵調味料を使う。この調味料なら皆が同じものを食べられるが、「お金がかかりすぎる」と鈴木園長。市の補助は年十二万円。新年度から倍増するものの、人件費も含めると「足りないですね」。
 チャーハンは、しょうゆだけを変えた二種類、サラダは全員が食べられるもの。ハムなどの加工品には卵や小麦などが入っていることがあり、同園ではできるだけ使わないようにしている。調理室の加藤朱美さんは「添加物も抑えられるし、アレルギー食は健康食なんです」。旬の野菜や魚、小魚などがたっぷりの給食は、子どもたちに大人気だ。

◆「除去する食品 見える形で」
 「このチヂミに粉チーズは必要だったのかしら」
 東京都調布市の小学校で乳アレルギーの女児が死亡した事故。愛知文教女子短大の安藤京子教授は、原因となったチヂミの材料を疑問視する。
 材料はニラやジャガイモなどの野菜にベーコン。調味料はごま油としょうゆ、酢、砂糖。「ニラが入るから、少しくせはあるかもしれないが、粉チーズがなくても、ベーコンで子どもの好きな味になるのに」
 乳製品はカルシウムの摂取を補強する意味が強い。粉チーズは「学校給食摂取基準を守るために入れたのでは」と推測。しかしそれなら、ジャコなどの小魚で補えるし、他のおかずで補う方法もある。「小松菜などカルシウムを多く含む野菜を増やせばいい」と安藤教授。同じ日の給食のもう一つのおかずは、キャベツと小松菜のナムル。この小松菜を増やす方法もあった。
 「除去する食品は見える形で出さないと。粉チーズは混ぜずに振り掛けるとか、プロセスチーズを別に添えるとか」。卵や乳製品などは安く手に入り、家庭での調理も簡単だけに「あえて給食で出す必要はないのでは」と提案する。


 命を守る給食 アレルギー事故から<下> 打てなかった「エピペン」
2013年3月22日 中日新聞 

 名古屋市の中学二年、浜口智行さん(14)は重症の食物アレルギー。患者が持ち歩ける症状緩和のための注射器「エピペン」に、何度も救われてきた。当時通っていた津市の三重大付属小五年のとき、昼食後に具合が悪くなり、担任と一緒に打った。母の洋子さんは「『命を守るのは自分しかいない』と教え続けてきたが、まだ一人で打つのは難しい。大人の力添えが必要」と話す。
     ◇
 事故防止の手順を定めても、事故の可能性は残る。事故発生時の対応策を整えておくことも、命を守るためには重要だ。
 「ぐっと押して。結構、力がいるでしょう」。母親が子どもを抱きかかえ、太ももに練習用の注射器を押し当てる。愛知県大府市のあいち小児保健医療総合センターでは毎月、エピペンの使い方講習会を開く。患者や家族、その子の学校の教員や保育士に、伊藤浩明内科部長らが指導する。
 乳アレルギーで全身が真っ赤になり、病院へ駆け込んだ経験のある男児(5つ)の母は、小学校入学を前にエピペン所持を決めた。入学予定の学校の養護教諭と受講。母は「保育所とは環境が変わるので不安だったが、講習も受けてもらい、しっかり対応してもらえそうで安心できた」と話す。
 エピペンはペン型の自己注射器。先端を押し当てると針が出て、服の上からでも打てる。注射は医療行為だが、学校や保育園では教員や保育士が打ったり、子どもを手伝ったりできる。
 呼吸がゼーゼーするなどの症状に気付いたらできるだけ早く打つ。「ショックでないのに打っても問題ないが、打たずに手遅れになると、命に関わる」と伊藤医師。東京都調布市で起きた死亡事故の報告書では、エピペンが遅れたことも、死亡の直接的原因の一つと指摘された。亡くなった女児はエピペンを持っていたが、担任も養護教諭も打たなかった。女児が「打たないで」と言ったことが影響したとみられる。
 伊藤医師は「エピペンを打つのは勇気がいる。打つタイミングを理解するためにも、養護教諭らが専門医から学び、各校内で研修を繰り返すなどの対策が必要だ」と話している。
  (この連載は稲熊美樹、砂本紅年が担当しました)

◆「ガイドライン」活用を
 学校などで求められる対策について、国立病院機構相模原病院・臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長の海老沢元宏医師に聞いた。
 大事なのは、2008年に日本学校保健会が出した「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」の徹底。これは児童の症状などを正しく把握するために「学校生活管理指導表」を活用し、保護者や主治医と連携、情報は学校全体で共有するよう求めています。
 目標はアレルギーのある子が、問題なく学校で健康な生活を送れるようにすること。ガイドラインの運用で先生たちもアレルギーを学べるようにできています。ただ、従うことは義務ではなく、どの程度浸透しているかも分かりません。
 調理員だけでなく、先生やアレルギーの児童自身も確認するシステム作りが必要です。チェックポイントが複数あれば、どこかで漏れても、止められる可能性があります。
 食物アレルギーの体験談や、記事への感想、ご意見をメールかファクス、郵便で送ってください。メール=seikatu@chunichi.co.jp、ファクス=052(222)5284、もしくは〒460 8511 (住所不要)中日新聞生活部へ。



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3月21日(木)のつぶやき

2013-03-22 01:26:16 | 花/美しいもの

シングルマザー1年(旅は道草・38) やぎ みね | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=9437


中日新聞:命を守る給食 アレルギー事故から<中> 除去食対応の難しさ:暮らし(CHUNICHI Web) chunichi.co.jp/article/living…


本日発売★千田有紀・中西祐子・青山薫『ジェンダー論をつかむ』bit.ly/TFTlpi  家族,市場,教育,国家,これらのシステムでどのようにジェンダーが作られているのか。日常のなかでは?セックスやセクシャリティの最新理論,グローバル化も扱う。

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朝日新聞デジタル:心に傷 気づかず連鎖 - 神奈川 - 地域 asahi.com/area/kanagawa/…

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