みどりの一期一会

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「1票の格差」で戦後初の選挙無効判決 筏津裁判長の染まらぬ正義/カラ渡船裁判◇船着き場も現場検証

2013-04-06 15:46:57 | 市民運動/市民自治/政治
昨日の毎日新聞夕刊の「特集ワイド」は、紙面1ページほどの
「続報真相 「1票の格差」で戦後初の選挙無効判決 筏津裁判長の染まらぬ正義」という記事。

この記事の冒頭に、岐阜でのカラ渡船の住民訴訟のことが写真付きで50行以上載りました。
というのも、この訴訟の判決を書いたのが、筏津(いかだづ)裁判長だったからです。

先週、毎日新聞東京本社の記者さんからつれあいに
 「筏津裁判長を批判する議員や関係者がいる。筏津裁判長はどういう人かをとりあげたい。」という趣旨の電話があり、
翌日、岐阜でお会いすることにして、私もついていきました。
岐阜駅の喫茶で裁判のことやいろいろ話して、現地を見たいという事だだったので、長良川を下って日原渡船を見に行きました。
そのときの写真が紙面にも載っていました。


記者さんから金曜日に載ると聞いていたので、
昨日に夕刊を受け取って、さっそく開いてみたら、とっても大きな記事でした。


2013.4.5 毎日新聞夕刊

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夕刊が届くより先に、全文がwebにアップされていたので紹介します。

  特集ワイド:続報真相 「1票の格差」で戦後初の選挙無効判決 筏津裁判長の染まらぬ正義  
毎日新聞 2013年04月05日 東京夕刊

 ◇船着き場も現場検証
 「保守的な司法界でこれだけ勇気のある判決が聞けるとは」と原告側弁護士は言った。「可能性はあると思っていたが、まさか本当に出してくるとは」。政府関係者はそうため息をついた。選挙を無効とする−−。2012年衆院選の1票の格差をめぐる全国の裁判で、最高裁の警告を無視し続けた国会に司法の一撃が下された。3月25日、戦後初の選挙無効判決を言い渡したのは広島高裁の筏津(いかだづ)順子裁判長(62)だ。黒の法衣に包まれた人物像を探った。

 ◇キーワードは公平・熱意・誠実
 判決は小選挙区の区割りを違憲と判断し、広島1区と2区の選挙を無効とした。ただ、混乱回避のために猶予期間がある「将来効判決」を採用し、新たな区割り作業開始から1年となる今年11月26日を過ぎて、無効の効果が発生するとした。
 「法廷では素人の主張を一つ一つ丁寧に聞いてくれました。よく調べ、勝っても負けても納得のいく公平できめ細かな判決を書いてくれました」
 こう話すのは岐阜県山県(やまがた)市議の寺町知正さん(59)。1990年代から50件近くの行政訴訟を弁護士に頼まずに本人訴訟で争ってきた。筏津さんとは、岐阜地裁の裁判官と原告として04年から3年間にわたって毎月のようにラウンドテーブル(円卓法廷)で向かい合った。
 「裁判官もいろいろです。提出した書類の誤字脱字を叱責口調で指摘する人や、行政を訴える市民に偏見を持つ人もいました。要するに上から目線の人が多い。でも筏津さんは違った」

  ■
 運営実態のない渡し船に県から委託料が支払われている−−。長良川河口堰(ぜき)建設に反対していた寺町さんに匿名の告発があり、情報公開条例を使って調べた。県道の代替として渡し船を運営する同県海津市と渡船組合に委託費が毎年支払われていた。でも船着き場は荒れ放題、渡し船はボロボロ、船頭は何年も客を乗せたことがないという。
 寺町さんら住民10人は、海津市などに約2200万円を県に返還するよう求め、「船着き場を見れば、運営実態は一目瞭然」と現場検証を求めた。だが裁判官はなかなか首を縦に振らない。提訴から5年目、3人目の裁判官として筏津さんが着任した。
 「『それでは現場を見てみましょうか』と当然のように認めてくれました。数多くの訴訟を起こしてきましたが、現場検証が認められたのはこの一度だけです」
 結果は勝訴。その後、高裁、最高裁を経て10年6月に勝訴が確定した。地裁で筏津裁判長が認定した基本的な事実関係が上級審で覆されることはなかった。
 「選挙無効判決のニュースをみてすぐ、ああ、あの人だと思いました」。中華航空機墜落事故(94年)の民事訴訟で、遺族側代理人を務めた海渡雄一弁護士(57)はそう話す。筏津さんは03年、名古屋地裁の裁判長として、中華航空に総額50億円余りの損害賠償を命じる判決を出した。
 「遺族感情に配慮し、非常に熱心に和解を勧めてくれたのが印象に残っています。結局、判決を出すことになったのですが、あの一件は筏津さんの判決と努力で解決したようなものです」。解決を目指す筏津さんの「熱意」が印象に残った。
 筏津さんは3年前に那覇家庭裁判所長に就任した際、仕事観を問われて答えている。「裁判所が扱う事件は、必ず当事者がいて見解の対立がある。裁判所は双方の言い分をよく聞いて公正な立場で判断する立場にいる。まずは聞くところから誠実に対応しなければならない」(10年1月14日付・琉球新報)
 「公平」「熱意」「誠実」。筏津さんの仕事ぶりを表現する言葉だ。

 ◇女性差別がひどかった30期
 筏津さんは名古屋大学法学部を卒業し、大学院修士課程2年目の75年に司法試験に合格した。第1次石油ショック(73年)で高度成長が終わって「狂乱物価」や公害問題に日本社会が直面した時代。司法修習(30期)をスタートした76年4月には、最高裁大法廷で1票の格差をめぐる戦後初の違憲判決が出ている。それから37年。裁判所が選挙無効判決に踏み込むまでにかかった歳月は筏津さんの社会人生活とぴったり重なる。
 75年の司法試験合格者は男性436人に対し女性は36人で、全体の7・6%。2年間の司法修習を終えて78年に裁判官に任官した女性は筏津さんを含めわずか6人だ。当時の最高裁には、はっきり言って問題があった。
 「裁判官になろう、弁護士になろうなどと思わず、世間によく評価される奥さんになることが女性の一番の幸せだ。日本民族の血を受け継ぐということは重要なことだとは思いませんか」。発言の主は30期を担当した最高裁司法研修所の教官だ。見学旅行の車中で、女性3人をひとりずつ呼び、30分前後をかけて説得したという。
 別の教官はソフトボール大会後の懇親会で「女子修習生は研修が終わったら、家庭に入って2年間の研修で得た能力をくさらせるのが女として最も幸福だ。2年間が終わったら、結婚して家庭に入ってしまいなさい」と発言したといわれる。当時、これらの発言について日本女性法律家協会が抗議声明を出している。
 同期で東京経済大学教授の村千鶴子弁護士が証言する。「30期は女性差別が一番ひどかったんです。私は実務修習が名古屋で筏津さんと一緒でしたが、彼女の評価は高かった。あの時代にあって、彼女は男女の性別を超えて評価されるほど優秀だったのです」。やはりただものではなかったようだ。
 修習中は外泊も許可が必要。そんな窮屈な環境でも筏津さんはのびのびしていた。休日には大学院の同窓で将来の夫となる安恕(やすひろ)さんと一緒にスキーに。その後、安恕さんは母校の教授になり、筏津さんは裁判官として全国を転々。05年に安恕さんが55歳で亡くなるまで年1度のヨーロッパ旅行を趣味にする仲の良い夫婦だった。
 研修所で同じクラスだった鴨田哲郎弁護士は「彼女は真面目でおとなしい人でした。話をしたことはなかったと思います。もっとも私は青法協で活動し、周囲にちょっと警戒されていましたが」と苦笑いする。青法協(青年法律家協会)とは、54年に護憲と平和・民主、人権を掲げて設立された若手法律家たちの組織。司法研修所の官僚体質に極めて批判的だった。
 「彼女は裁判官になってから骨のある判決を結構出してね。こんな芯のある人だったんだ、と後から印象を持ちました」と鴨田さんはいう。若いころの彼女を知る男性の多くが同じような感想を語る。長尾龍一東大名誉教授(法哲学)は「新婚のころ、ご主人と一緒に名古屋で食事をしました。おとなしい感じの方だった気がします。あんな豪胆な判決を出す方だとは」と驚く。

  ■
 昨年の衆院選をめぐる選挙無効の全国訴訟は14高裁・高裁支部で計16件の判断が出そろった。「違憲状態」が2件、「違憲・有効」が12件で、広島高裁と同高裁岡山支部の2件が「違憲・無効」だった。一般市民からはむしろ当然にも思える「無効」の判断だが、冒頭に紹介した原告側弁護士の「勇気ある判決」発言に見られるように、横並びの裁判所の体質を知る専門家からは驚きをもって受け止められている。「変わった裁判官だ」「女性のスタンドプレーでは」。そんな批判も報じられた。一方、「将来効判決」を絶妙のバランス感覚と評価する声は多い。
 同期の村弁護士は言う。「慎重な筏津さんですら、選挙無効の判断をせざるをえないほど問題が深刻になっていた、と重く受け止めるべきだと思います。それに判決は3人の裁判官の合議。女性だからとか、スタンドプレーとか、そういうふうに受け止めたら時代を見誤ってしまいます」
 そして、こう続けた。「違憲判決が少ないと言われる日本の裁判所にあって、裁判官として、現状に対して法的な正義を慎重に検討した上の誠実な結論だったのではないでしょうか」
 裁判官が着る黒い法衣は独立して職権を行う裁判官の象徴だ。黒は何色にも染まらないから。染まらずに生きる、裁判官の正義が勇気ある判決につながった。【浦松丈二、小国綾子】

 ◇筏津順子さんの略歴
愛知県豊田市出身。
76年 司法修習生(30期)
78年 京都地裁判事補
88年 津地・家裁判事
92年 名古屋地・簡裁判事
97年 東京高裁判事
99年 名古屋地裁部総括判事
04年 岐阜地・家裁部総括判事
10年 那覇家裁所長
11年 広島高裁部総括判事

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◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を
t.yukan@mainichi.co.jp
ファクス03・3212・0279


  1票の格差:今夏参院選翌日に選挙無効一斉提訴 全47選挙区で
毎日新聞 2013年04月02日

 衆参両院の「1票の格差」を巡って全国で選挙無効訴訟を起こしている弁護士グループの升永英俊弁護士は1日、今夏の参院選の投開票翌日に、全47選挙区の有権者を原告として全国8高裁・6高裁支部に選挙無効の訴訟を一斉に起こす考えを明らかにした。
 参院選では最高裁が昨年10月、10年選挙の最大格差5・00倍を「違憲状態」と判断し、「都道府県を選挙区単位とする方式を改める必要がある」と促した。国会は昨年11月の公職選挙法改正で選挙区定数を「4増4減」したが、それでも最大格差は4・75倍。東京都内で記者会見した升永弁護士は「(混乱を避けるため無効請求を退ける)事情判決を阻止したい。一つの例外もなく無効判決が出ると思う」と語った。
 昨年12月の衆院選を巡っては、別の弁護士グループと合わせて全14高裁・支部で計16件の訴訟が提起され、広島高裁と広島高裁岡山支部が先月、戦後初の無効判決を出した。このほか違憲判決が12件、違憲状態判決が2件と判断が分かれ、最高裁が年内にも統一判断を示すとみられる。
 
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