安全保障関連法案が、17日午後の参院平和安全法制特別委員会で、
与党などの賛成多数により強行採決されたという速報が流れました。
予想していたこととはいえ、いっしゅん落胆。
でも、これで終わり、ではない。
あきらめるわけにはいきません。
庭には、きれいな花が咲いています。
社説:「違憲立法」は廃案に 根拠欠く安保法案 中日新聞 2015年9月17日 集団的自衛権の行使がなぜ必要か。審議が進むにつれ、根拠を欠くことが明らかになった。違憲立法と指摘される安全保障関連法案は廃案にすべきだ。 法律をつくるには、その必要性や正当性を裏付ける客観的な事実、根拠が必要とされる。「立法事実」と呼ばれるものである。 新たな法律が必要な状況でないにもかかわらず、政府の権限を強める法律ができれば権力による悪用、暴走を招きかねないからだ。 特に、実力組織である自衛隊の活動にかかわる法律では、立法事実が厳しく問われるべきである。今回の安保法案はどうだろう。 非現実的で極端な例 安倍晋三首相は、安保法案の柱である集団的自衛権の行使を必要とする理由として、二つの事例を挙げて繰り返し説明してきた。 一つは、紛争国から避難する日本人のお年寄りや、母親と乳児を輸送する米艦船を防護する例と、中東・ホルムズ海峡に敷設された機雷を除去する例である。 私たちはこれまで、二つの事例について、現実から離れた極端な例だとして集団的自衛権の行使に道を開く安保法案の立法事実にはなり得ないと指摘してきた。 しかし、首相は米艦船防護の必要性について「この船に乗っている子どもたちを、お母さんや多くの日本人を守ることができない。この現状から目を背けていいのか」と繰り返し強調した。感情に訴えるこの説明は与党の衆院議員が法案に賛成する判断材料になったことだろう。 しかし、この説明にも偽りありだった。中谷元・防衛相は米艦船防護が「邦人が乗っているかどうかは絶対的なものではない」と述べ、首相も同調したのだ。 これでは日本人の命を守ることではなく、米艦船を守ることが集団的自衛権の行使の主目的になってしまわないか。 参院段階で説明一変 中東・ホルムズ海峡での機雷除去も同様に、政府の説明が大きく揺れ動いた。 首相は衆院審議の段階で、海峡が機雷で封鎖され、石油や天然ガスが途絶えれば「人が亡くなる、大変寒い時期には家や人を暖める器具が停止する危険性もある」と述べ、自衛隊による機雷除去の必要性を強調していた。 ところが、参院審議の大詰めになって「現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない」と認めたのだ。 政府が安保法案を必要とする根拠としてきた立法事実が、そもそも非現実的だったのである。 こじつけのような理由で集団的自衛権の行使に道を開き、米国との軍事同盟を強化することが、果たして日本とアジア・太平洋地域の平和と安定に資するのか、逆に軍事的緊張を高めることにならないか、慎重な検討が必要だ。 憲法九条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」ことを定めた。日本国民だけで三百十万人の犠牲を出した先の大戦の反省からである。 その後、必要最小限の実力組織として自衛隊を持つに至ったが、他国同士の戦争に参戦する集団的自衛権は、国際法上、有してはいるが、行使は必要最小限の範囲を超えるため憲法上、認められないとしてきた。 自民党を含めて歴代内閣が継承してきた憲法解釈であり、個別的自衛権しか行使しない「専守防衛」政策は、平和国家としての「国のかたち」でもあった。この解釈を一内閣の判断で変えてしまったのが安倍内閣である。 国民の命や暮らしを守るのは、政府の崇高な役目だが、多くの憲法学者や「憲法の番人」とされる最高裁の元長官や元判事、政府の憲法解釈を担ってきた内閣法制局の元長官らが憲法違反と指摘し、必要性に乏しい法案の成立を認めるわけにはいかない。 自民、公明両党は次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の三党が求めていた、集団的自衛権行使の際には例外なく国会の事前承認を得ることなど、国会の関与を強めることを受け入れた。 平和国家傷つけるな しかし、法案の根幹部分は何ら変わらず、違憲立法の疑いが晴れたわけではない。野党の一部を取り込んで、「強行採決」の印象を薄めたいのだろうが、民主党、維新の党、共産党など主要野党の反対を押し切っての採決を「強行」と呼ばずして何と言う。 与党の方針通り、法案をこのまま参院本会議で可決、成立させれば、戦後日本の平和国家としての歩みを傷つけ、将来に禍根を残すことになる。 安倍政権は法案の瑕疵(かし)や説明の誤りを率直に認め、速やかに廃案を決断すべきである。 |
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安保採決で攻防激化 民主が委員長不信任動議 与党は衆院再可決も 中日新聞 2015年9月17日 夕刊 他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案に関する参院特別委員会は十七日午前、採決強行を図る与党と抵抗する野党の対立が続いた。鴻池祥肇(こうのいけよしただ)委員長(自民)は採決に向けた締めくくり質疑を行う委員会の開会を職権で宣言したが、民主党は委員長不信任動議を提出。午後に討論が行われた。与党は同日中に委員会で採決し、参院本会議で法案の成立を図る構え。参院の紛糾が長期化すれば、憲法の「六十日ルール」を適用して衆院で再可決する検討を始めた。 特別委では、鴻池氏が開会の宣言をしたが、委員長席を取り囲んだ野党議員が「駄目だ」「ルール違反だ」などと抗議。民主党の福山哲郎理事が鴻池氏に不信任動議を手渡した。鴻池氏は、佐藤正久理事(自民)に「委員長職を委託する」と述べ、退席した。 佐藤氏は議事を続行しようとしたが、野党側の抗議を受け、委員会を休憩。委員会は午後に再開し、委員長不信任動議に関する福山氏の趣旨説明を行った。続いて各党の賛否討論を行った後、与党の反対多数で動議は否決される見通しだ。与党は否決後に締めくくり質疑を行う構え。 与野党はこれに先立つ十七日未明、午前九時前に特別委の理事会を開くことで合意していたが、与党側が理事会を委員会室で始めたため、野党理事が反発。民主の福山氏らは「だまし討ちは駄目だ」と大声を上げながら抗議。鴻池氏は一度は委員会の開会を宣言したが、質疑は行われなかった。 一方、菅義偉(すがよしひで)官房長官は十七日午前の記者会見で「与野党の調整の中で、決める時には決めていただきたい」と早期採決を求めた。自民党の佐藤勉国対委員長は同日朝の党会合で、参院での与野党攻防を踏まえ「衆院で再可決する六十日ルールの行使も視野に入れなければならない」と述べた。衆院議院運営委員会は同日の衆院本会議を開催できるよう委員長職権で決めている。 これに対し、民主党など野党は「法案に国民の理解が得られていない」として「あらゆる手段」で採決に抵抗する方針。野党は、委員会採決が強行されれば、衆院に安倍内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出する。特別委や本会議では長時間の演説を繰り返して採決を阻む方針だ。 与党は特別委で十六日午後六時半から首相らが出席する締めくくり質疑を行う方針だったが、野党の抵抗で委員会を開けなかった。 ◆支持ない法案の効果疑問 <解説> 集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法案に反対の世論が強まる中、安倍政権は野党の抵抗を押し切って成立させようとしている。巨大与党の「数」におごり、対米協力の強化に突き進んだとの非難は免れない。参院でも過半数の議席があるのに、憲法の六十日ルールで衆院再可決するなら「数の横暴」が極まる。 近年、日本政府の外交安保政策の懸案は、米国の日本防衛義務を定めた日米安保条約の実効性をどう確保するかだった。沖縄県・尖閣諸島が中国に占領される事態が現実味を帯びつつあるのに、「戦争疲れ」の米国には「『岩』のために米兵の血は流せない」との空気が強まっていたからだ。 日本近海で米艦が攻撃された際に、近くにいる自衛隊が反撃できないままで、日米同盟の抑止力を機能させられるのか-。安倍政権は離島防衛とは直接関係のない名目を掲げ、米国の期待通り集団的自衛権の行使を解禁した。長年の憲法解釈を変更した昨年七月の閣議決定までの手続きは、首相が選んだ有識者懇談会の報告と与党内の協議だけだった。 安倍晋三首相は今年四月末の訪米時に「今夏までに成立」をあらかじめ約束した上で、平時から有事まで安保政策全体を変える十一本の法案をまとめて国会に提出した。国会で審議を尽くす気も、野党との協議で法案を修正する気もないと最初から宣言したに等しい。 国会審議では、集団的自衛権による武力行使の判断を政府の裁量に委ねる法案の問題点が明らかになった。日米同盟の重要性を認める民主党も廃案を要求。対案を提出して与党との協議に臨んだ維新は、条文の手直しに一貫して否定的だった与党の姿勢に反発し、廃案にかじを切った。 このまま法案が成立すれば、野党は見直しを掲げて今後の国政選挙に臨むだろう。幅広い国民の支持がない法案を成立させても、将来の政権が民意を背に集団的自衛権行使を白紙に戻す法改正を探る可能性がある。数の力に任せた安保政策の変更は、同盟強化や日本の安全確保にはつながらない。 (政治部・竹内洋一) <衆院再可決> 憲法59条は、衆院で可決した法案を参院が受け取った後、60日以内に議決されない場合、衆院は「参院が法案を否決した」とみなすことができると規定。この場合、衆院は出席議員の3分の2以上の賛成で再可決、成立させることができる。 安全保障関連法案をめぐり、政府・与党は、今月27日の会期末までに確実に成立させるため、審議が難航した場合の保険として、この「60日ルール」の適用を想定。7月16日に衆院で採決を強行し、9月14日以降はいつでも衆院で再可決できるようにしていた。 参院で与党が過半数を割る「ねじれ国会」ではしばしば適用されたが、衆参両院とも与党が多数を占める状況での適用は異例。 |
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