けさの朝刊各紙のトップは、いずれも名古屋市議会のリコールが不成立になった記事。
リコール署名側は46万人超の署名を提出したけれど、
名古屋市選管は、「35万3791人」の有効署名と発表、
法定数から約1万2000人不足して、現時点でリコールは不成立。
市長主導でのリコールという手法に疑問はあったけれど、
署名した人たちは、議会リコールの趣旨に賛同した一般市民だ。
リコールもふくむ直接請求制度は、厳密な手続法で、
有権者による「記名投票」という性格をもつ。
明確な意思をもって署名した人も、頼まれて署名した人も含めて、
法定の署名数をもって成立する、という手続法である。
今回の名古屋市のリコールは、選管が厳密な、というより、
もっと恣意的な厳しい判定をしていると思えてならない。
リコールは1割前後の「無効」が出るというのは「通常」だけど、
名古屋の約24%、四分の一近くもの「無効」というのは、
集め方がかなりずさんだとしても、考えられない。
選挙(投票)というのは、一票差で当落が逆転することがある。
「無効票を間違って有効にする」ことはあっても、
「有効な署名を間違って無効にする」ことはあってはならない、
というのが、直接請求という制度の趣旨だろう。
かりに、本人の意思が明確に確認できなくとも、市民の意思(民意)を尊重して、
「有効署名を無効と間違って判定する」ことがあってはいけないから、
今までの直接請求では、「疑問のものは有効とする」という運用がされてきたのだ。
今日から、署名簿の縦覧が始まっている。
選挙管理委員長は、記者会見で「間違いはなかった」と豪語し、逆に請求者側を
「市民の直接請求(の権利)を汚したという責任を理解してほしい」と批判しているけれど、
明確な意思を持って署名した人が、ひとりでも選管の間違いで「無効」と判定されていたら、
どのように申し開きし、どのように責任をとるのだろう。
判定の権限を持つ選挙管理委員会と、リコール署名者側とは対等ではない。
選管は、ルールを決めてジャッジするものであり、非対称な権力関係だ。
だからこそ、選管側にはぜったいに恣意的な判断は許されない。
このリコールの決着は、成立の是非をめぐって司法の場で争うことになるだろうし、
市民の署名による直接請求とはなにかを明確にするためにも、そうしてほしいと願っている。
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リコール署名側は46万人超の署名を提出したけれど、
名古屋市選管は、「35万3791人」の有効署名と発表、
法定数から約1万2000人不足して、現時点でリコールは不成立。
市長主導でのリコールという手法に疑問はあったけれど、
署名した人たちは、議会リコールの趣旨に賛同した一般市民だ。
リコールもふくむ直接請求制度は、厳密な手続法で、
有権者による「記名投票」という性格をもつ。
明確な意思をもって署名した人も、頼まれて署名した人も含めて、
法定の署名数をもって成立する、という手続法である。
今回の名古屋市のリコールは、選管が厳密な、というより、
もっと恣意的な厳しい判定をしていると思えてならない。
リコールは1割前後の「無効」が出るというのは「通常」だけど、
名古屋の約24%、四分の一近くもの「無効」というのは、
集め方がかなりずさんだとしても、考えられない。
選挙(投票)というのは、一票差で当落が逆転することがある。
「無効票を間違って有効にする」ことはあっても、
「有効な署名を間違って無効にする」ことはあってはならない、
というのが、直接請求という制度の趣旨だろう。
かりに、本人の意思が明確に確認できなくとも、市民の意思(民意)を尊重して、
「有効署名を無効と間違って判定する」ことがあってはいけないから、
今までの直接請求では、「疑問のものは有効とする」という運用がされてきたのだ。
今日から、署名簿の縦覧が始まっている。
選挙管理委員長は、記者会見で「間違いはなかった」と豪語し、逆に請求者側を
「市民の直接請求(の権利)を汚したという責任を理解してほしい」と批判しているけれど、
明確な意思を持って署名した人が、ひとりでも選管の間違いで「無効」と判定されていたら、
どのように申し開きし、どのように責任をとるのだろう。
判定の権限を持つ選挙管理委員会と、リコール署名者側とは対等ではない。
選管は、ルールを決めてジャッジするものであり、非対称な権力関係だ。
だからこそ、選管側にはぜったいに恣意的な判断は許されない。
このリコールの決着は、成立の是非をめぐって司法の場で争うことになるだろうし、
市民の署名による直接請求とはなにかを明確にするためにも、そうしてほしいと願っている。
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名古屋市議会:リコール法定数届かず 河村市長、怒りあらわ 名古屋市議会解散請求(リコール)で、有効署名が法定数を約1万2000人下回ったことを受け、河村たかし市長は24日夕、報道陣の取材に「泣けてきます」と述べ、市や区の選管への怒りをあらわにした。署名集めの中心となった市長の支援団体「ネットワーク河村市長」も同日、記者会見を開き「46万人の民意が踏みにじられていいのか」(鈴木望代表)と選管を痛烈に批判。署名した市民に縦覧期間中に異議申し立てをするよう呼びかけ、法定数の確保を目指すことを強調した。 過去のリコール署名では氏名や住所などの一部に誤字・脱字があっても本人が書いたと推測できれば有効としてきた。しかし名古屋市選管は署名活動終了後に「本人が署名していれば書き間違いはあり得ない」として誤字・脱字がある署名は無効にする方針を明らかにした。市長は「後から基準を変えてもいいのか。後だしじゃんけんだ」と主張。4人の市選管委員のうち3人が元市議であることに触れ「議会のことだからといって自分たちで(基準を)決めるとは恐ろしい。独立行政委員会は市民の政治的自由を守るため中立にやるものだ」と語った。【高橋恵子、加藤潔】 毎日新聞 2010年11月25日 ---------------------------------------------------------------------------- 混迷あいち・なごや:リコール署名届かず(その2止) 無効24%、異例の高率 ◇受任者欄空白、追加審査対象 押し上げる 名古屋市議会リコール署名の無効率は、法定数達成ラインが21・4%だったのに対し、24・0%と極めて高い率になった。総務省によると、03~06年に実施された全国の解散請求署名45件の無効率は平均9・6%。政令指定都市での署名活動が区ごとに分けられている制約を考慮しても、4分の1近い無効は異例の多さだ。 市選管は、署名を集める受任者の欄が空白だった約11万4800人分の署名を追加審査した。追加審査の対象にならなかった署名の無効率が20%だったのに対し、対象分は36%に上り、これが全体の無効率を押し上げた。 請求代表者が集めた署名簿は受任者欄が空白。追加審査で、署名を求められた相手を「受任者」と回答して無効となった署名は2万1942人に達した。請求代表者と受任者の違いがわからずに「受任者」と答えた人は相当いる可能性がある。「請求代表者か受任者かわからない」とすれば有効になるとの報道で、約1700人が回答を「わからない」に訂正したという。 無効理由では、区外の居住者や未成年、外国人の名前を書いた「選挙人名簿に登録されていない」が約4万4000人と最多だった。約1万7000人分あった「自署でないもの」は、一つの署名簿に筆跡が酷似した署名が続くなどの例が該当した。家族の名前を一人が代筆した、などが考えられる。地方自治法は他人の名前を署名することを禁じており、伊藤年一・市選管委員長は「法的措置を検討している」と話した。【丸山進】 ============== ■解説 ◇議会不信、35万人分の重み 名古屋市議会リコール運動は、署名が法定数を下回る結果になった。しかし、議会への不信感を表明した人が35万人超に上った事実は重く、議会側の改革姿勢が問われている。名古屋市議会は長年、共産党以外の各会派のオール与党体制で、市長と議会のなれ合いが続いていた。09年4月に就任した河村たかし市長は、議会改革を旗印に議員報酬半減や政務調査費の全面公開などを訴えた。これに対し議会側は議員報酬の減額措置を2011年4月まで1年間延長するなど一定の改革に取り組んだ。 しかし市民の議会不信は根深く、署名集め期間中の9月に毎日新聞が行った市民アンケートでは「議員報酬半減賛成」が7割近くに達した。 各会派は報酬半減の条件付き受け入れや、報酬額を検討する第三者機関設置の姿勢を打ち出したが、信頼回復には、より踏み込んだ改革が求められる。 一方、今回の署名では無効の多さが際立った。署名集めをした団体が受任者名を記入せずに署名簿を提出したのが一因。団体関係者は「受任者名のない署名簿も有効になると思った」と認めている。市選管の「受任者欄が未記入の署名簿は、請求代表者が集めたとして扱う」という事前の説明が誤解を招いた点はあるが、受任者が他区の住民の署名を集めるなどのルール違反があったことは支援団体の責任。選管を批判するだけでなく反省も求められる。【丸山進】 ◇審査過程に疑問--住民投票に詳しいジャーナリスト、今井一さんの話 名古屋市選挙管理委員会の審査過程には疑問が残る。悪質な代筆署名は許してはいけないが、署名を求めた人が請求代表者か受任者かというのは本質的な問題ではない。受任者が担当区外の署名を集めていたからという理由だけで無効にするルールは合理性に欠け、改めるべきだ。 昨年リコール署名を集めた奈良県生駒市のように、選管が最初から請求代表者用と受任者用の署名簿を分けるよう勧めていればこんな問題は起こらなかった。選管は、より中立的な立場から市民への啓発活動を強めるべきだった。署名の審査期間を1カ月延ばした以上、今後の縦覧期間も法令で定められた1週間にとらわれず、延長して、請求代表者らが無効となった署名をしっかりチェックできる期間を確保すべきだ。 毎日新聞 2010年11月25日 中部朝刊 |
リコール 思い交錯 2010年11月25日 朝日新聞 【有効署名数「35万3791人」】 河村たかし名古屋市長が主導した市議会解散のリコール署名をめぐり、市選管が発表した審査結果。当事者たちは24日、「35万3791人」の有効署名数についてそれぞれ語った。 ●「民主主義の危機」河村市長 河村市長は名古屋市内で取材に応じ、「恐るべき民主主義の危機だ」と憤った。 結果を聞かれると、「悔しいですよね。泣けてきますけど、泣きません」と振り返った後、選挙管理委員会へ怒りをぶちまけた。「選管の審査方法が極めて不透明。審査基準が変わるなら、署名活動を始める前に明らかにするのが当然だ。このような民主活動のルールを破る『後出しじゃんけん』をされると、市民生活が成り立たない」とまくし立てた。 今後どう対応するかについては「選管の行為が本当に適法なのか、考えたい。選管の使命は一票を無駄にしないこと。今回、相当数の署名をつぶしている。どんな理由で無効としたのか、理由を求めたい」と語った。 ●「まだあきらめぬ」支援団体 署名を実施した団体「ネットワーク河村市長」は結果を受けて会見を開いた。 代表の鈴木望・前静岡県磐田市長は「市民の民意が踏みにじられていいのか」と市選挙管理委員会の審査方法に憤った。署名集めの10人の代表者の一人の三宅功さんも「これがまかり通るなら、名古屋市で署名活動はなくなる。我々の手で政治が動く唯一のチャンスだったのに、選管委員の暴走で踏みにじられようとしている。異議申し立てをして、有効な署名を掘り起こす」とまくしたてた。 一方、公明党市議団が条件付きで議員報酬の半減を容認するなどリコール署名の影響も出始めていることから、三宅さんは「署名が大きなうねりになりつつある。まだあきらめていないが、署名の効果はあった」と振り返った。 ●「改革進め信頼を」議長 名古屋市議会の横井利明議長は報道陣に「必要数に達しなかったとは言え、35万人を超える方々が、議会のリコールに対する意思表示したということを極めて重く受け止めている」と述べた。 河村市長が先導する形で行われた異例の署名活動について「市長の責任を問うかについては、現時点では考えていない。今やることは、改革を進め信頼される議会をつくること」。市長に対する不信任案の提出については「議会としては議論すら行われていない」とした。 法定の審査期間が延長されたことについては「第三者機関である市や区の選挙管理委員会に対して意見は厳に慎むべきだと考えているが、いろいろな方の意見を聞くと、延長はやむを得なかったのではないか」と理解を示した。 ●「間違いはなかった」選管委員長 名古屋市選挙管理委員会の伊藤年一委員長は「法の上で真剣に取り組んできたので、間違いはなかったと思っている」。その上で「請求代表者と受任者が集めた用紙を色分けなどで区別しておけば、もっと短い時間で審査できた」として、総務省に対して進言を行うとした。 収集方法に問題があるとされた署名が2万2990人分あったことは「集める側がきちんと説明していればよかった」。また、「署名していない」という回答992人分についても「市民の直接請求(の権利)を汚したという責任を理解してほしい」と請求代表者らを批判した。 審査基準については「(途中で)変わっていない」と従来の説明を繰り返し、「異議のある方は縦覧で申し出て頂きたい」とした。 |
【社説】名古屋リコール 民意を漂流させるな 2010年11月25日 中日新聞 河村たかし市長が主導した名古屋市議会の解散請求で、市選管は有効署名が必要数に達しなかったと発表した。議会がほっとするなら大間違いだ。多数の署名が示した民意を深く受け止めるべきだ。 いまや全国注視の「名古屋の乱」。発端は河村市長が掲げた市民税の10%減税や議員報酬の半減をめぐる議会との対立だ。 河村市長と市民団体が「民意を反映していない議会は不要」と始めたのが、この議会の解散請求(リコール)だった。 百八十万人近い有権者のうち、四十六万五千人分の署名が集まった。しかし市選挙管理委員会は、署名を集めた受任者欄が空白の署名簿などが多数あるとして審査期間を一カ月延長した。 結局、全体の四分の一近い十一万人分以上が無効となり、議会解散の賛否を問う住民投票へ進むために必要な三十六万五千人に一万二千人ほど足りなかった。市民団体はきょう二十五日からの署名簿の縦覧で異議を申し立て、あくまで成立を目指す。 混迷は収まりそうにもないが、有効署名が必要数に達しなくても、議会が信任されたわけでは到底ない。無効数を除いても一都市として最多の署名数だった事実は、これまでの議会へのノーを示している。それをまた忘れれば、民意を漂流させることになる。 本紙社説が繰り返し求めたように、双方に歩み寄る動きが目立つようになったのは、背景に大きな民意があるからだろう。 年八百万円への報酬半減は、河村市長が議員活動の経費を別に措置する妥協案を示し、公明、共産両党の市議団が賛成に転じた。議会が本年度限りしか認めなかった市民税減税の継続も、自民党市議団は賛成に回ることにした。 どちらも十一月議会で可決されるかは不透明だ。しかし、ここにきて議会側が雪崩を打って賛成に転じ始めたのは、リコールがなくても、来年四月の統一地方選で任期満了の市議選が迫り、河村人気を恐れたためとの冷ややかな見方もある。 河村市長は「こうまでしないと動かないのが、いまの議会だ」と言い切る。議員たちの変化が選挙目当てだけかどうか。有権者は注意深く観察している。 名古屋の乱が、四月の全国の統一地方選に影響を与えるのは間違いない。「議会は王様になっとる。変えなあかん」。河村市長の問題提起に共鳴するのは、名古屋市民だけではないはずだ。 |
名古屋リコール―不成立でも教訓は重い 2010年11月25日(木)付 朝日新聞 名古屋市議会の解散を求める住民の直接請求(リコール)は、混乱の結果となった。 河村たかし市長の呼びかけで、手弁当の市民が、46万人もの解散請求の署名を集めた。ところが、選挙管理委員会の発表では無効が11万人を超え、有効な署名が住民投票の実施に必要な36万人に届かなかった。 無効のなかには、代表者にかわって署名集めをした「受任者」が、署名用紙の所定の欄に自分の名を記入していなかったため、不備とされたものが万単位であった。きちんと書かれていれば成立した可能性があるし、市長側は、代表者が集めており空欄で問題ない、とも反論している。こんな手続き問題で、数十万の有権者の意思を無にしていいのか、論争が続くだろう。 市選管は、この受任者欄の精査のため、などとして審査期間を1カ月延長した。来年2月の愛知県知事選にあわせて出直し市議選をし、市長も自ら辞職して市長選も連動させるという河村氏のトリプル選挙構想も、請求の成否以前に日程的に出来なくなっていた。 選管委員4人のうち3人が市議OBだ。後輩市議をかばってのことではないかと市長側が抗議している。 結果は別にして、リコール騒動を通して、名古屋市議が多くの市民の共感を得られていないことは、はっきりした。遅くとも来年4月には任期満了に伴う選挙がある。最近になって、発端となった議員報酬半減や、市民税恒久減税の市長提案を受け入れる会派が出た。自民は自主解散を唱えている。 いずれも大量署名の効果だろう。 投じられた有権者の声は重い。それを最大限に尊重しなくてはならない。聞いたふりでやり過ごそうとすれば、政治不信はさらに激しくなる。 今後考えるべきは、名古屋市の混乱は議会が市長提案をそっくりのめば解決、ということでもないことだ。半減しても市議報酬は800万円だ。それでも高い、という市民もいるだろう。ではいくらが適正なのか。恒久減税は結構だが、市がするべき住民サービスは維持できるのか。 自治の根本にかかわる問題だ。市長と議員を戦わせるだけでなく、市民が考えるべき論点だとわかってきた。 今回、市民の目が地域の行政に向いたのは大きな収穫だ。28年も共産党を除くオール与党が続き、政策絡みの議員提案条例は最近まで30年以上ゼロ。こんな状態を市民も黙認してきた。 片山善博総務相は、住民投票を提起しやすくする地方自治法の改正を検討している。市長と議会が対立したとき、今より簡単な手続きで市民の意見を聴けるようにする狙いだろう。 貴重な体験をした名古屋市は、国に先立って、使いやすい住民投票の制度を実験してみてはどうだろうか。 |
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