明治44年の文部省唱歌に「紅葉」がある。今の小学校では、おそらくこんな昔の唱歌を教えていないであろうが、我々の世代では、こんな明治の曲を歌っていた。この時代、漢語を教えるのが主流であったが、この唱歌には和の響きがあってうれしい気持ちになる。
秋の夕日に照る山紅葉、
濃いも薄いも数あるなかに、
松をいろどる楓や蔦は、
山のふもとの裾模様。
岩波文庫の『日本唱歌集』をひもとくだけで、このメロディーが口の端に出てくる。朝の散歩で紅葉した木々を見るにつけ、夕方になって夕日が山の中に沈んでいく光景を見るにつけ、このなつかしい唱歌が思い出される。