冬ばら
2015年10月30日 | 花
寒気が入った時雨のなかで、冬ばらが一輪咲いていた。周りが枯れ果てていくのに、けなげに咲こうとする様は頼もしくもあり、寂しくもある。何故ならこの一輪のほかには、枝にはどこにもこれから咲く蕾をつけていないからだ。イチョウの黄葉にくらべても、その色は一見はなやかだが、どことなく寂しい気がする。
冬薔薇は色濃く影の淡きかも 水原秋桜子
先日、学校の同期会が4年ぶりに開かれた。22人もの同期生が集まり、なかには卒業以来初めて再会した人も数名いた。代表幹事のN氏があいさつのなかで、「やや残り少なになった私たちの人生の中に楽しかった思い出の一コマとして記憶に残るような集い」という表現があったが、冬のばらという比喩が似つかわしいように思う。暖かい日のあたる時間が少なくなっていく季節のなかで、けなげに花びらを開こうと努力している。そこには、言葉がなくとも通じあえる共感がある。