イチョウが黄葉しているのは美しいが、寒さは一段と厳しくなる。遠い青春の日。学び舎の庭にはイチョウの並木があったが、時雨の寒さのなかでイチョウを見ると、とうとう冬が来るかと思ったものだ。今日は午前中には日がさしてぽかぽかとした陽気だったが、午後雲が出て小雨が降りだすと急に寒くなった。気温がこれほど上下すると、風邪が流行ってくるのも無理はない。
銀杏もみぢして公園や夕明り 石塚 友二
イチョウの黄葉のわきでは、山茶花が可憐な花を咲かせている。この花も木枯らしに縁があるらしく、芭蕉の発句に
狂句こがらしの身は竹斎に似たるかな 芭蕉
たそやとばしる笠の山茶花 野水
と野水が付けている。これは藪医者竹斎を「無用にも思ひしものを藪医者花咲く木々を枯らす竹斎」とあざけり詠んだ狂歌から句の発想を得ている。