春めいた陽気で、ベランダに置いていた鉢植えの梅が、一輪、二輪と咲き始めた。折から上野動物園のパンダが発情期を迎え、交尾している映像がテレビで流された。パンだの発情と気温は関係があるのだろうか。去年、初めて出産したシンシンだが、赤ちゃんパンダは1週間足らずで死んだため、今年の出産への期待は、いやがうえに高まっている。
パンダが世界的に知られるようになったのは、フランス人神父ダヴィドの発見による。ダヴィドは、1862年から10年にわたり、布教のため中国に滞在した。1969年の春、ダヴィドは四川省に旅行した。3月11日のことだが、フォン・チャン・チン渓谷を歩き、そこの地主の家に立ち寄りお茶をご馳走になった。そこで、神父は白と黒の彩りの珍しい動物の毛皮を見た。
見たことのない毛皮に興味を持った神父は、その渓谷での滞在を4月まで延ばし、近隣住民の協力を得て、一頭のパンダを捕獲した。この動物は、神父にとっても初めての新種であった。ダヴィドはパリにこの毛皮を送り動物学者の鑑定を仰いだ。これが、動物学上の新種であるかとが知られると、ヨーロッパからハンターがこの地に入り、射殺されるようになった。
解放後の中国では、パンダを保護動物の指定し、四川省のワンラン地区で手厚く保護されるようになった。ここで人工的に繁殖され、世界各地の動物園に貸し出され、中国の外交のツールとして利用されている。日本で出産しても、パンダは中国の所有するもので、やがては返さなければならないらしい。
我猫をよその垣根に見る日かな 高浜 虚子